女子バスケットのワールドカップが始まっている。
場所はオーストラリア・シドニー。
オーストラリアでの開催は1994年以来28年ぶり2度目のことらしい。
女子日本代表を率いる恩塚亨は、彼が大学チームを率いていたころから「ワクワクは最強」と言っている。
カテゴリーが変わっても、その考え方に変わりはない。
その視点に立ってみると、ワールドクラスの戦いはワクワクの連続である。
たとえば大会初日、メインアリーナであるシドニースーパードームでおこなわれたアメリカ対ベルギー戦。
東京2020オリンピックで日本を破って大会7連覇を達成したアメリカだが、チームの司令塔だったスー・バードが現役を退き、エースのダイアナ・タウラジも今大会のメンバーには入っていない。
大黒柱ともいうべきブリトニー・グライナーは、不幸にもロシアで拘束されている。
さらに直前までWNBAのファイナルを戦っていたラスベガス・エーシーズの3選手は、大会が始まった今もまだチームに合流をしていない。
それにも関わらず、87-72でベルギーに勝ってしまうのだ。
一方のベルギーもヘッドコーチが替わり、メンバーも入れ替えている。
それでも新戦力が随所にいいプレーをしているのを見ると、新しくチーム作りをしながら強さを維持、あるいは伸ばしているのは日本だけではないのだと痛感させられる。
それもまたワールドカップならではのワクワクするシーンだ。
さて、日本である。
マリとの初戦を89-56で圧倒するのだが、すべての時間帯でリズムよく戦えたわけではない。
それはそうだろう。
ナイジェリアの棄権により今大会の出場権を得たとはいえ、マリはアフリカ大陸予選(アフロバスケット)2位のチームである。
フィジカルの強さを押し出して、日本を上回ろうとする。
それに対して日本は2ポイントシュートよりも1本多い37本の3ポイントシュートを放ち、うち16本を決めている。
成功率43.2%。
恩塚ヘッドコーチは「チーム力」を勝因に挙げたが、3ポイントシュートの成功率もそのひとつだと言っていい。
そのなかにもまたワクワクするシーンがある。
第2クウォーターの立ち上がりに決めた東藤なな子の3ポイントシュートだ。
けっして良い流れでのシュートではなかった。
むしろオフェンスがバタついたなかで、ボールが “回ってきた” というシーンだった。
チームとしても、東藤としてもリズムではなかったわけだ。
しかし彼女は3ポイントシュートを打ち切って、決めている。
「チームのリズムじゃなくても、自分のリズムがいいときじゃなくても打ち続けるっていうのは合宿でずっと続けてきたことです。あの場面のように自分の目の前が空いていて、それでもリズムじゃないから打たないという考えは除外して、もう打てる幅があれば打つと決めていたので、それが決まる形につながったので良かったかな」
東京2020オリンピック以降、3ポイントシュートに力を注いできた彼女が、リズムではないところで打つ決断をし、決めきったところにワクワクを感じる。