「女子日本代表=3ポイントシュート」というイメージは強いが、それは「期待値」と呼ばれる確率から弾き出された得点効率によるもの。
世界的にはサイズの小さい日本が効率よく得点を積み上げようと思えば、3ポイントシュートは必須である。
しかし今さら言うまでもないが、期待値が最も高いシュートはゴール近辺のノーマークシュートである。
誰かがディフェンスを引き寄せ、ゴール下にエアポケットが生まれようものなら、得点のチャンスは3ポイントシュートよりも上がる。
朝比奈自身はまだ3ポイントシュートを打つ状況にはないようだが、的確に、しかも勇気を持ってゴール下に飛び込む能力と、攻守において体を張れるメンタルタフネスは日本代表候補に入れてもおかしくないところだろう。
その期待に応えるかのように、184センチの若きセンターは、ベテランセンターたちからもさまざまな学びを得ている。
「信頼感というか、パスを出したら決めてくれる、困ったときにしっかり点数を取ってきてくれる、それがタクさんやリツさんで、やっぱり日本のエースだなって感じました。そういう2人を間近で見られたことで今の自分とは違う部分を強く感じましたし、オリンピックで銀メダル取ったり、世界で活躍している選手から直接いろんなことを教わったことは自分にとってすごく大きな価値があると感じています」
それはまた彼女にとっての道標にもなる。
「シンプルに日本のチームのためになるような選手になりたいですし、1人の選手としても自分ができることを発揮できるようになりたいっていうイメージはあります。そのなかでもやっぱり将来は日本のエースとしてタクさんやリツさんみたいに、この選手にボールを渡せば大丈夫だよと周囲から信頼してもらえるようなセンターになりたいなって思っています」
今大会は何度もリムランをして、何度もゴール正面でポストシールをしたが、パスは飛んでこなかった。
スクリーンに行こうとしたら、すでにボールマンがボールを展開していたなど、チームとのコンビネーションも合わなかった。
ならばとディフェンスでボックスアウトをしようとすれば、ラトビア選手に弾き飛ばされる場面もあった。
総じて見れば悔しさが残る大会となったが、髙田も渡嘉敷も何度となく世界の壁に跳ね返されて日本の大黒柱になり、エースへの階段を上っていった。
そう考えると朝比奈の踏み出した一歩もけっして悪いものではない。
わずか2点だが、得意とするプレーであげたそれは、未来の大黒柱へとつながる貴重な一歩である。
文 三上太
写真 日本バスケットボール協会