2戦目は大きな課題も残された。
大差の勝利にうずもれがちだが、恩塚ヘッドコーチはまずそこから口にした。
「トルコのスイッチングディフェンスに対して、日本はカウンターで攻めるところからスタートしました。ただ先手を取れるときと、取れないときがあり、練習してきたことをゲームの中で素早く表現できなかったことに課題感があります。なぜ練習してきたことが発揮できなかったのか。そこをこれから分析して、表現できるようにしたい」
恩塚ヘッドコーチが言う「カウンター」とは、相手のどんな戦術にも即応し、それを上回ること。
スイッチングディフェンスは、日本が東京2020オリンピックで金メダルを獲れなかった要因の1つでもある。
その課題にずっと取り組みながら、いまだそれをクリアできていないと言うわけだ。
もちろんすべての課題を短時間でクリアできるほど世界のバスケットは甘くない。
「ゲームで失敗することによって得られる学びの価値は大きい」
恩塚ヘッドコーチのその言葉がむしろ、快勝のなかでも、このチームのさらなる伸び代を感じさせる。
これまでの学びを自らの力として表現しつつある選手も出てきた。
赤穂ひまわり、オコエ、東藤なな子である。
東京2020オリンピックのときはチームに勢いをもたらす “若武者” 的な存在だったが、1年も経たないうちに、日本に欠かせない中心選手へと様変わりしてきている。
プレーそのものもそうだが、精神的にも責任と自覚がプレーの端々からにじむ。
それはキャプテンの髙田真希も認めるところである。
「オリンピックのときもそうでしたが、そのときよりも3人それぞれの持ち味を、ゲームの中で自分から発揮しようとしています。すごく頑張っているなと」
でも、だからこそ、ここで足踏みをせず、さらなる高みへつなげほしい。
日本の大黒柱はそう言葉をつなぐ。
「もっともっと積極的にやってほしい。いい力を持っているし、いいプレーもたくさんある。チームとして決められているルールのなかでやることは当たり前で、チームが苦しいとき、チームのやろうとしていることが崩れたときに自分たちから攻める。そうした力が備われば、もっともっと世界で通用する選手になると思います」
髙田もまた若い頃から日本代表入りし、世界はおろか、アジアでも頂点に立てない時代に下積みを重ねて、今のポジションを確立させてきた。
だからこそ見える彼女たち3人の成長ぶりと、今後への期待があるのだろう。
チームの勝利と戦いぶりにファンはもちろんワクワクする。
チームと選手個々の成長もある。
女子日本代表の進歩はまだまだ止まるところを知らないと。
一方で恩塚ヘッドコーチや髙田の言葉を聞けば、他ならぬ選手たち自身もワクワクするのではないだろうか。
コーチも然り。
自分たちにはまだまだ伸び代がある。
チームとしても、もっともっと強くなれる。
そうしたポジティブなマインドが、それぞれのパフォーマンスをより加速させる。
ワクワクするのは、何もファンだけではない。
やっている本人たちでさえワクワクする。
そうしたワクワクが相乗効果で高まれば高まるほど、女子日本代表が直近で目指すワールドカップでの金メダルが近づいてくる。
やっぱりワクワクは最強なのだ。
文 三上太
写真提供 日本バスケットボール協会