2月25日、ワールドカップアジア地区最終予選でイラン(96-87)、カタール(96-48)を連破し13年ぶり(自力出場は21年ぶり)のワールドカップ出場を決めた男子日本代表が凱旋帰国した。200人を超すファンに熱烈歓迎された後、空港近くのホテルに移動。日本バスケットボール協会の三屋裕子会長、東野智弥技術委員長をはじめ、フリオ・ラマスヘッドコーチ以下スタッフ、選手全員が登壇し、ワールドカップ出場決定報告記者会見が行われた。
悪夢の4連敗から史上最強のチームへ
最初にマイクを握ったのは三屋会長。「ちょうど1年前の今ごろ、日本は4連敗の真っ只中にいました。1次予選敗退となればオリンピック出場もなくなる。それだけはなんとしても避けたかった。そこからの1年、こんなにもたくましく、頼もしく成長してくれた選手たちを誇りに思います」――4連敗からの8連勝。ミラクルとも言えるこの快進撃を改めて振り返ると『戦いながら強くなっていった』日本の姿が浮かぶ。4連敗後、ホームで迎え討つことになったのはアジア地区NO.1の強豪であるオーストラリア。Window1の対戦では58-82で完敗していることもあり、厳しい戦いが強いられることは容易に想像できた。だが、前回と違っていたのは、この試合からメンバー入りしたニック・ファジーカス(川崎ブレイブサンダース)と八村塁(ゴンザガ大学)の存在だ。高さと得点力を誇る2人の新戦力は試合開始からチームをリードし、結果、日本は79-78の1点差で激戦を制した。比江島慎(栃木ブレックス)は「あの勝利が4連敗して自信を失いかけていた自分たちにもう1度自信を与えてくれた」と語り、篠山竜青(川崎ブレイブサンダース)もまた「負けぐせがついていたみんなの気持ちを変えた試合。間違いなくあのオーストラリア戦が僕たちのターニングポイントだった」と明言する。
「僕は合流したニックが最初に言った『オーストラリアは自分がいる日本にまだ勝ったことはない』という言葉が(胸に)響いた」と言うのは富樫勇樹(千葉ジェッツ)。その一言から伝わってきたのは「自分が入ったからにはオーストラリアに勝ってみせる」というファジーカスの覚悟だ。帰化選手として日の丸を身に付けたファジーカスとはるばるアメリカから駆けつけた八村が勝利の立役者であったことは万人が認めるところだが、同時に彼らのもう1つの大きな手柄は先に比江島が語った「チームに自信を与えてくれたこと」にある。精度の高いパフォーマンスで仲間を鼓舞し、チームを揺り動かし、立ち込めていた重い空気を振り払った。“覚醒”した日本はチャイニーズ・タイペイを一蹴(108-68)して2次予選進出を決めると、続くカザフスタン戦から参戦した渡邊雄太(メンフィス・グリズリーズ)、ケガのファジーカスに代わってチーム入りしたアイラ・ブラウン(琉球ゴールデンキングス)の活躍もあり、難敵イランをも撃破(70-56)。八村と渡邊が抜けた後も勢いに翳りはなく、多くのファンはその姿に“本物になりつつある日本の強さ”を感じたのではないか。アウェーで最後の2連戦を勝ち取ったチームに贈られた呼び名は『史上最強の日本』だった。