チームスポーツではそのなかに「序列」というものがある。選手としてはもちろん平等だし、ポジションや試合状況によっても多少の変化はあるが、ヘッドコーチのなかではたいていの「選手起用構想」が定まっている。その「序列」である。
女子バスケのアジア選手権に出場している日本代表において、その序列が最後、つまりは「12番目の選手」が藤原有沙である。大会4日目におこなわれた格下のインド戦においても、彼女がコートに立ったのは12番目だった。
藤原は典型的なスモールフォワードで、所属チームのデンソーアイリスはおろか、昨年のロンドン五輪世界最終予選を戦った日本代表でもスタメンに名を連ねている。そんな選手がなぜ12番目に「降格」したのか。
1つには、よりアウトサイドシュート力のある宮元美智子が台頭してきたことが挙げられる。その結果バックアップメンバーに回るのだが、その中でも同じポジションに櫻木千華、元山夏菜といた180センチオーバーの選手がいるため(藤原は175センチ)、おのずと序列は下がっていく。
それでも絶対的なシュート力や突破力、もしくはディフェンス力を持ち合わせていれば起用の順序も変わってくるのだろうが、その点においても他のメンバーと大きな差異は見られない。
だが、それは仕方のないことでもある。12名すべての選手が等しく試合に出られるわけではないし、チーム内の起用順序というのはバスケットに限らず、どんなスポーツでも出てくるものだ。何をどうしたところで、6番手の選手がいれば、必ず12番手の選手もいる。問題はそこでどう思っているかだ。
「悔しい思いはあります。でもこの大会までの合宿や遠征を見て、内海(知秀)ヘッドコーチも使い方を決めているわけだから、最後に名前を呼ばれるからと言って、落ち込むことはありません」
言っているそばから目に涙を溜めている。それはそうだろう。同じヘッドコーチの下で、スタメンから12番目に落とされたのだから、悔しくて涙が出るくらいの気持ちは持っていてもおかしくはない。それでいいと思う。
だが厳しい言い方をすれば、今大会の残り試合で藤原が起用されることはないだろう。予選リーグの最終戦は中国だし、その後はセミファイナル、ファイナルへと続いていく。負けの許されない戦いになるので、ヘッドコーチもシビアにならざるを得ない。そのことは藤原も理解している。そのうえで、涙を湛えたままこう言うのだ。
「チャンスは少ないかもしれないけど、もしかしたらワンポイントで使ってもらえるかもしれない。そのための準備は常にしておこうと思っています」
序列はある。だが選手は平等である。コートに立つ選手たちは、この先のタフな試合になればなるほど、藤原ら試合に出られそうにないバックアップメンバーの思いをしっかりと心に刻んで戦わなければならない。
女子日本代表のアジア選手権・予選ラウンド対戦スケジュール
10月27日(日)日本 94-59 カザフスタン
10月28日(月)日本 69-57 チャイニーズ・タイペイ
10月29日(火)日本 78(OT)71 韓国
10月30日(水)日本 81-40 対インド
10月31日(木)16:00〜 対中国
11月2日(土)準決勝
11月3日(日)決勝
*すべてタイ時間。日本との時差:マイナス2時間。例)日本22時=タイ20時
JBA:第25回FIBA ASIA女子バスケットボール選手権大会特設サイト
FIBA ASIA:第25回FIBA ASIA女子バスケットボール選手権大会サイト(英語)
フジテレビNEXT:TV放送スケジュール
文・三上 太