特にフィジカルコンタクトの基準値が高いワールドクラスの戦いでは、それが歴然となる。男子日本代表が直近でワールドクラスの戦いをした2016年の「リオデジャネイロ五輪・世界最終予選(以下、OQT)」を振り返っても、比江島は自分のプレースタイルで「あまり通用した記憶がない」と認める。
競り合いながらも自らのポジションを保ち、ディフェンスを正しいポジションから引きずり出す。ディフェンスがオフェンスの領域を侵してコンタクトをしてくればファウルである。
「きっかけは単純です。オーストラリアとニュージーランドはフィジカルに攻めてファウルをもらうのが主流だったし、帰国して合流した栃木ブレックスでもそういうことをしたほうがいいんじゃないかと言われたからです。自分としてもファウルをもらう技術はいつか身につけたいと思っていたので、このタイミングでやっておくのもいいかなって」
このタイミングとは、残り2試合となったワールドカップ・アジア地区予選を前にした今であり、その先に見えてきたワールドカップを見据えてのことでもある。
「(ワールドカップは)単純に楽しみだし、ワクワクします。今の自分がどの位置にいて、どこまでやれるのかを試してみたいから。オーストラリア代表とのゲームでもやれたし、オーストラリアリーグではあまり試合に出られなかったけど、練習ではある程度やれたので、3年前のOQTよりはやれるという自信はあります」
自信を確信に変えるためにも、8月下旬から中国で開催されるワールドカップに出なければならない。
現在の日本代表にはニック・ファジーカスや渡邊雄太、八村塁らが加わり、得点面での負担は3年前よりもかなり軽減されている。しかしWindow6に関しては八村が参戦せず、渡邊もまたその可能性が低いと見ていい。ファジーカスはロスター入りするだろうが、彼へのマークは当然厳しくなるはずだ。そうしたときに比江島がどんなパフォーマンスを見せるのか。
“エース”とは、ここぞの場面でボールを託され、その期待に結果で応える選手である。慣れ親しんだプレースタイルだけに頼らず、自らに挑み続ける比江島を改めて注目したいと思う。
文・写真 三上太