バスケットボールというスポーツには、社会の組織の中でも役立つヒントがたくさんあることを長谷川健志氏は気付かせてくれた。
スピーディーな展開の中での状況判断に長けているバスケ選手
苦しいことは、スポーツをしていない方であっても大なり小なり経験してきたかもしれません。でも、これだけスピーディーな展開の中で物事を考えて行動に移さなければならず、1試合で攻撃回数が100回ぐらいあり、80点や90点を獲る中でたくさんの状況変化があり、その都度判断しなければならないのがバスケットです。スピーディーかつ判断材料が多く、さらにチームを勝たせなければならないときに、自分は何をすべきかを考えること自体が、学校や勉強では習わないことをバスケットから教わっているわけです。
組織の中で何をすべきか、みんなが困ったときにどういう行動を起こさなければいけないかなど、バスケットで学んだことは社会に出ても、どんな組織に行っても絶対に必要なことです。一番身近な組織は家族ですし、働く場所もそうです。または他のコミュニティーもあるでしょう。そこでリーダーシップを発揮することが、バスケ選手に与えられた使命だと思えるぐらいに今後も磨いていって欲しいです。
最終的にはリーダーシップからリーダーになっていかなければなりません。役割としては別なことですが、つながっている部分もあります。リーダーはもっと自分の行動に対して模範にならないといけないですし、何よりも結果が求められてきます。リーダーは物事を決断しなければならない立場でもあります。そうなると革新的な挑戦心や今まで通りではないことなども実践していかなければならず、もっと立場は大きくなります。だからこそ、みんなにリーダーシップを植え付けて、そこから様々な地位や役職に立って成功していくのだと思います。
困ったとき、トラブルが起きたときこそリーダーシップを発揮
日本代表の活動中、選手たちには事ある毎に組織のことやこれまでの日本のバスケットの歴史などを話していました。バスケットの戦略戦術だけではなく、スポーツをするということは人が行動を起こすことでもあるというような話もしていました。役職上、私が一番上にいましたが、そこにアシスタントコーチを始めとしたスタッフがおり、そして選手たちがいます。それぞれの状況に応じて、各スタッフが率先して行動に移してくれたのは本当にありがたかったです。
リーダーシップというものは、チームが順風満帆にいってるときは必要ありません。困ったときやトラブルが起きたときにどう考え、解決するためにどう行動に移すかというときにこそ発揮されるものです。それがチームに対する自分の責任であったり、信頼につながっていくといつも考えていましたし、選手たちにも伝えてきました。少しずつ話していきながら、具体的によくなる方法を若いうちから植え付けていけば、日本人はもっとリーダーシップを取れるようになるはずです。
リーダーシップの資質がない人はいません。育てれば誰もが持てるものだと私は思っています。リーダーシップとコミュニケーションが大事ですが、コミュニケーションというと話すことの方をイメージされる方が多いですが、人の話を聞くことも同じであり重要です。話を聞いて、自分の意見を言うことがリーダーシップにつながっていきます。
「モラル」が「規律」となれば「規則」はいらない
リーダーシップがないチームは信頼関係が生まれません。本当に困ったときに何が必要か、どうすれば良いかをみんなで考え、意見を出し合って、一つの解決策に向かっていかなければ一向に変わらず、勝敗にも影響してしまいます。”言うは易く行うは難し”というように、言ったことにより自分自身にも責任を感じます。チームのために言ったならば、より良い行動に移してくれるのは間違いありません。
最初に選手たちには、「私自身が規則が好きではないので、それは作らない。だからこそ規律だ」という話をしました。各々が考えたモラルが規律になっていけば、規則なんて必要ありません。どんな状況になっても勝負しなければならないバスケットにおいて、想定範囲はもっと広いわけです。そのような状況では、規律がすごく必要になります。