橋本 竜馬(シーホース三河)
竜馬も自分の行動でみんなを引っ張っていくタイプですが、竜青よりも話してものを伝えたり、率先して質問したり、みんなが思っていることを先に行動したり、そういう部分が長けています。どちらかと言えば親分肌ですね。人間というのは表裏一体です。親分肌のガキ大将は自分が言いたいことを常に言い、行動に移したりできる。それは、リーダーシップの本質の部分では同じこと。そこをどう表現するか、またはここは我慢しよう、ここはこういう言い方にしよう、などを経験で学んできたからこそキャプテンを任せられるわけです。表から見れば生意気で態度がでかいように見えても、裏から見ればすごくそれがチームをまとめる牽引者となるかもしれません。そういうのを見極めるのも指導者ですし、選手も気付いていく必要があります。
「環境が人を変えるんですよ。私だってそうでした」と長谷川氏と同じ境遇、同じ匂いがする選手をキャプテンとして託していたのかもしれない。長谷川氏はキャプテンだけではなく、選手一人ひとりにリーダーシップを持たせ、自ら考えて行動することでチームワークを高めていた。リーダーシップを持った選手たちは、自然と大人になったようにも感じられた。
バスケ選手としての人生は儚い。だが、社会人として大切な組織の中での役割について、日本代表という最高峰のチームから学ぶことができたはずだ。それは、長く続く今後の人生にとっても大事なことでもある。長谷川氏に説いていただいたリーダーシップ論を3回に渡ってご紹介していこう。
一番下の立場としての理想像を思い描きながらチームビルディング
日本代表のチームビルディングには、自分の理想が多少はありました。もし何かの組織に入るならばこんな組織に行きたいな、という自分の理想像や夢を少しでも現実化したいというのはずっと考えていたことです。ヘッドコーチは一番上の地位におりリーダーは私ですが、逆に自分が一番下の立場として思い描くべき夢を作っていかなければならないという思いがありました。
リーダーシップを掲げましたが、それは日本人の足りないところです。そこがなぜ足りないのかと言えば、勉強していてもそれは身につかないものであり、普通の学校生活の中で習得するのも難しいからです。小学校や中学校から課外活動としてバスケットをしてきた選手たちは、ある意味で人格形成や自分の長所を伸ばすことが備わっているはずです。そう考えれば、引退後に何が自分たちの強みかと言えば、バスケットの経験を生かした社会貢献ができることです。
(つづく)
日本代表元ヘッドコーチ 長谷川健志
リーダーシップを説いて世界へ導いた名将
リーダーシップを発揮することがバスケ選手の使命
うまくいく方が少なく、多くの失敗をして学びながら人が人を育むコーチ業
文・泉 誠一 写真・三上 太