文・松原 貴実 写真・安井 麻実
6月29日~7月4日まで韓国(ソウル)で開催される「Asia Pacific university Basketball Challenge」に出場するユニバーシアード男子代表チームがナショナルトレーニングセンター(東京都北区)で合宿を行った。5月13日~15日まで韓国で行われた李相佰盃日韓バスケットボール競技大会(以下、李相佰)に出発する直前に足の故障で馬場雄大(筑波大3年)が離脱し、帰国後、満田丈太郎(筑波大4年)も離脱したチームには新メンバーとして橋本晃佑(栃木ブレックス)と今川友哲(明治大2年)が加入、大会に向けて新たなスタートを切った。「経験値が低い若いチームだけに課題は多いが、その分のびしろも大きい」という陸川 章ヘッドコーチにチームの今、そして12人の選手たちについて話を聞いた。
嵐の中でのスタートとなった李相佰
李相佰出発直前にケガの状態がわかった馬場は最後まで帯同を望んだのですが、「今回はあきらめてきちんと治療しろ」と羽田で説得して、逆にみんなで彼を見送ってからの出発となりました。それほど突然のことだったので、エースを失った初戦はまるでワーッと嵐に巻き込まれたごとく何もできないまま終わってしまいました。が、ここでこのまま終わるわけにはいきません。我々は「闘う」ということをテーマにあとの2戦に挑戦しようと話し合いました。それは5年ぶりに代表チームを率いた私自身のテーマでもあります。選手たちは2戦目を“闘って”くれました。けれど、まだ力は発揮しきれていない。3戦目を迎えるまでの限られた時間の中でスカウティングも練習もとことんやりました。結果は8点差敗戦でしたが、それでもエースが抜けた中、ようやく自分たちのバスケットを取り戻してくれた手応えがあり、それは選手たちの自信にもつながったと思います。ただし最終ピリオドの勝負どころでミスが出たり、まだファンダメンタルの部分が足りなかったりと多くの課題が残ったのも事実です。それを踏まえて今回参加するAsia Pacificは我々がもう1つ成長できるチャンスの場、1人ひとりがチャレンジャーの気持ちを持って、来年のユニバーシアード大会に向けたプラス材料をつかんできたいと思います。
◆陸川ヘッドコーチによる選手紹介
#14伊藤 達哉(173cm・東海大学4年)
ディフェンス力は間違いなくチームNo.1。東海大がオールジャパンでNBLの日立(サンロッカーズ東京)と対戦した時、196cmのケビン・マーフィーとマッチアップした彼はテイクチャージ、2本のスティールと、ディフェンスから流れを作ってくれました。Asia Pacificの初戦ではロシアと当たりますが、当然相手のガードはサイズが大きい。それに対してあの日立戦で見せたような足元に付く粘りのディフェンスを期待しています。また、キャプテンとしてはチームがしんどい時こそ、声を出してみんなを鼓舞できる本当のリーダーになってくれることを望んでいます。
#7成田 正弘(174cm・拓殖大学4年)
シュート力のある選手であり、本番でもチャンスには積極的に打ってほしいというのはもちろんですが、マッチアップする相手が大きいことを考えるとノーマークを作るのはなかなか難しい。だから、彼にはドライブで切って行って打つ、あるいはキックアウトするといった動きのあるオフェンス、同時に周りを活かすオフェンスも見せてほしい。また、伊藤と同様に大きな相手の足元に徹底的にプレッシャーをかけることでディフェンスの起点になってほしいと考えています。
#9安藤 周人(187cm・青山学院大学4年)
李相杯の3戦目には31点を稼いだエース。このチームには不可欠なシューターです。ただし本番では相手もスカウティングしてくるだろうし、マークがきつくなることは間違いない。彼に打たせるためのスクリーンプレーもいっぱい作ってはいるのですが、それだけではなく、彼自身がスクリーンをかけてズレを作って、そこからもう1度スクリーンしてもらって打つといったプレーも学んでほしいですね。シューターと呼ばれる選手、たとえば折茂(武彦・NBLレバンガ北海道)はそういったプレーが非常にうまい。自分をフリーにするために自分が動く。シューターとしての才能は誰もが認めるところですから、そこからもう1つ上に行くプレーに期待しています。
#46生原 秀将(183cm・筑波大学4年)
このチームは3人の4年生にリードしていってもらいたいと考えていますが、彼もまた非常にリーダーシップがある選手であり頼りになる存在です。負けず嫌いで気も強い。同時に人の話をよく聞いて、正しく理解できる賢さもあります。筑波大では22年次、3年次でインカレ優勝を経験して、今年はキャプテンとして牽引していく立場。気合いも入っていると思いますし、気持ちの成長も大きいと思っています。伊藤とはまた違うタイプのポイントガードであり、そこも楽しみなところです。
#8佐藤 卓磨(194cm・東海大学3年)
李相佰の時は相手の2mのセンターにも臆することなくゴール下に飛び込むガッツも見せ、オフェンスレバウンドで非常に貢献してくれました。ぺネトレイトの力も強くなってきたし、確実に成長しているなと感じています、ただまだ足りないのは『判断の早さ』であり、そこが目下の課題です。状況判断がもう少しできてくれば3番ポジションになれる可能性も十分あると思っています。
#17杉浦 佑成(194cm・筑波大学3年)
彼は筑波大では4番ポジション、これまでの学生代表チームでも4番としてプレーしてきましたが、ここでは3番として起用します。走力もあり、シュート力もあり、今回は橋本晃佑(204cm)が入ったことも考え、3番を任せようと思いました。彼の長所は非常にまじめで素直であること。周りの意見にも耳を傾け、スキルアップするために一生懸命努力する選手です。彼にはこれからフル代表入りをめざしてほしいし、そのためにも3番として戦うAsia Pacific、さらにはユニバーシアード大会をチャンスにしてもらいたいと考えています。
#24林 翔太朗(193cm・東海大学九州3年)
陸上選手並みの走力を持っていてマルチ(200mのシャトルラン。ガード選手で150回がノルマとされる)でも平気で160くらい走ってしまう。馬場(雄大)よりも速いんです。シュートも打てるから2番ポジションもできるタイプですが、まだ身体ができていないので李相佰でも相手のパワープレイにやられてしまう場面が多々ありました。だから、目下の課題は身体を鍛えて体力をつけること。身体の成長とともに大きく伸びる可能性を秘めた楽しみな選手です。
#10高橋 洋平(197cm・青山学院大2年)
サイズがあって走れるというのが最大の魅力ですね。今年の新人戦でも青学大優勝の原動力になった選手です。これからは自分の身体の大きさをゲームの中でさらに生かせるようになることが課題。スクリーナーになったり、リバウンダーになったり、自分の利点をしっかり発揮できるようになることが大事です。練習は人一倍頑張るタイプで、今回の合宿でも「もっとうまくなりたい」という意気込みが伝わってきます。
#28今川 友哲(195cm・明治大学2年)
今回、満田(丈太郎、筑波大4年)に代わって入った選手ですが、195cmの身長のわりに重心が低く、低い位置でストップがかけられる。ドライブを見ていても低い姿勢でスッとディフェンスを抜くことができるんですね。3ポイントシュートも打てることも魅力です。ただ筋力がまだ不足しているので、それはこれからもっと鍛える必要があります。トレーニングをしながら、経験を積ませてあげればかなり上をめざせる能力を持った選手だと思います。
#32野口 夏来(202cm・専修大学2年)
202cmの選手とは思えない器用さがあって、ステップワークなんて1番うまいんじゃないかと思うほどです。加えてシュート力もあり、いろんな意味で高いスキルを持った選手です。が、いかんせん体重と筋力が足りない。だから、これからはもっと食べさせて(笑)トレーニングを積んで身体を大きくすることが課題です。のびしろの大きさを感じる分、成長の期待も大きいですね。
#25平岩 玄(198cm・東海大学1年)
チームで唯一の1年生ですが、プレーには非凡なものがあります。李相佰杯では3試合ともスタートで出したのは彼と杉浦の2人だけ。韓国のビッグセンターとやり合って通用する部分もあったし、彼にとってはとてもいい経験になったと思います。スキルはまだ不足しているところもありますが、それはこれから身に付けていくことでもあり、将来的には4番、3番ができる選手になることを期待しています。
#21橋本 晃佑(204cm・栃木ブレックス)
唯一人大学生ではない彼を加入させたのは、やはり204cmというサイズとシュート力に期待したからです。今回も彼に3ポイントシュートを打たせるためのセットはいっぱい用意してありますし、本人にも「3ポイントシューターになれ」と伝えています。本来は性格的にリーダーのタイプじゃないんですが、やはり最上級生ですから、プロとして手本を示し、プレーでもチームの起点になってほしいです。その自覚が出てきたのか、最近は顔つきもピシッとプロの顔になってきました(笑)
日本代表男子ユニバーシアード代表オフィシャルサイト ⇒http://www.japanbasketball.jp/japan-team/2016/m_univer