4月18日、19日に味の素ナショナルトレーニングセンターにて平成28年度バスケットボール男子日本代表チームの第2次強化合宿が行われた。NBLもTKbjリーグもレギュラーシーズンは佳境を迎えている状況であるが、FIBA男子オリンピック世界最終予選(セルビア・ベオグラード)も7月4日~9日に迫っている。6月のNBLプレーオフ終了後からの招集では到底時間がなく、第1次強化合宿に続きシーズン中に開かれた。
Text by Hiroyuki Ohashi / Photo by Futoshi Mikami
■父を超えるために
現在、代表候補は29名が名を連ねており、最年長35歳の田臥勇太(リンク栃木ブレックス)を筆頭に、平均年齢26.7歳のチームである。今回の強化合宿には26名が参加(都合により荒尾 岳、渡邊雄太、八村 塁が不参加)しているが、先週末に試合があった選手も多く、疲労の跡も見られた。
そんな中、キレのある動きを見せていたのが、国内の大学生で唯一、選出されている20歳の馬場雄大(筑波大)だ。昨年度も代表候補選手に選ばれており、かつて日の丸を背負い、実業団で活躍した大型フォワードの馬場敏春氏(法政大~三井生命~現:富山第一高)を父に持つ。その背中を追いながらバスケットに励み、昨冬はインカレ優勝を勝ち取った20歳の若き男は、父と同じ舞台に立てるチャンスをつかみかけている今をどのように感じているのか。初日の練習後に話を聞いた。
――昨年度、代表候補に選ばれて、今年度も選出されました。どのような気持ちで強化合宿に入ってきたのですか?
「去年は初めてだったこともあり、緊張しました。“どんな世界なのだろう”ということで入ったのですけど、去年、見ることができて、今年はどれだけ自分ができるのか、“挑戦”という気持ちを持って入りました」
――今日の5対5の練習ではスピードに乗ったドライブや、速攻からの良いプレーがありました。まさに“挑戦”という気持ちの表れですね。
「去年やって通用しなかったことを筑波大に持ち帰り、ハンドリングなどを練習してきました。本当に挑戦をしようと思っていて、あのようなプレーができて、今日は上手くいったなと思っています。明日も頑張っていきたいです」
――これから大学で関東のトーナメントも始まりますけど、コンディションは上がっている状況ですか?
「李相伯の合宿もあって、(筑波大の)チーム全員で練習をする機会がなく、チームの状況はわからないのですが、トーナメントは大切だと誰しもが思っています。僕を含めて、個々でコンディションを上げていきたいなと思います」
――馬場選手は、お父さまが全日本で活躍されていました。代表合宿に呼ばれていることについては、何か言葉をもらっていますか?
「小さいころから見てもらっていて、ずっと“自分の得意なプレーはなんだ?”と言われています。走るプレーや身体能力を活かしたプレーだと思っているので、今のハンドリングにつなげつつ、プレーに活かしていければと思っていますし、父も望んでいることかなと思います」
――結果を出して、“父を越えたい”という気持ちはどこかにあるのですか?
「フル代表に入ることが父に並ぶことだと思うので、まずそのために、(最終メンバーの)12人に入ることが目標です」
――今日の練習では田臥選手と同じチームでした。「馬場選手のように身体能力のある若い選手とやるのはモチベーションになるし、学べるチャンスだ」とコメントしています。今日、田臥選手と組んでみてどうでしたか?
「“やりやすい”とはこのことか! と思いました。自分のやりたいようにやらせてくれつつ、チームの5人をしっかりまとめていて、本当に緊張しなかったです。自分のプレーが思いっきりできたので、そういった部分は田臥選手のおかげかなと思います」
――プレー中やサイドラインで声はかけてもらったようですか?
「プレーの中身のことや、“もっと思い切り行け”ということなど、的確なアドバイスをいただき本当に勉強になりました」
――「3次強化合宿に入る段階でメンバーを絞る」と長谷川監督は(会見で)話しています。(その言葉を受けて)明日以降の強化合宿や筑波大学での抱負を教えていただけますか?
「第1の目標は、最後の12人に入って世界最終予選を戦い、リオ(オリンピック)の切符を勝ち取ること。(第2の目標は)もし、メンバーから漏れてしまった場合は、大学に戻って3冠(トーナメント、リーグ戦、インカレ)、3連覇(インカレ)という、先輩たちが達成できなかったことを目標に日々精進していきたいと思います」
■若手の突き上げでチームに刺激を
「挑戦」の気持ちを抱いて、馬場は昨年度から成長した自分を強化合宿で出そうとしている。「最後の12人に入る」と目標を掲げる若手の存在が、チームに大きな刺激を与え、競争に繋がることを期待したい。この日、同じチームで練習した田臥は「馬場選手は能力高いなー! と思いました。若くて楽しみな選手がいるのは嬉しいです。現役をもっと長く続けて、一緒にやりたいなと思わせてくれますよね。本当に楽しみです。良いモチベーションになっています。若い選手の中でやるのは、もっとバスケットを学べるチャンスだと感じています」と、自身の刺激になっていると話した。
男子日本代表は1998年の第13回世界選手権(ギリシャ・アテネ)を最後に、アジア以外の国とアウェイでFIBAの公式戦を戦ったことがない。昨秋のアジア地区予選でベスト4に食い込んだが、今夏の世界最終予選へはそこから大きな上積みが必要不可欠だ。馬場を筆頭に、NCAA ディヴィジョン1の舞台で活躍する渡邊(ジョージ・ワシントン大)や、その舞台を目指す八村の3人がどれだけ先輩たちを突きあげることができるのか。切磋琢磨したベストなAKATSUKI FIVEを、私たちは応援したい。
日本代表「AKATSUKI FIVE」特設サイト ⇒ http://akatsukifive.japanbasketball.jp/