JX-ENEOSサンフラワーズ vs デンソーアイリスの首位攻防戦が行われた先週末。結果はJX-ENEOSが2連勝(59-48、65-53)。デンソーが3位に順位を落とし、代わりに富士通レッドウェーブが2位へ浮上。4位シャンソン化粧品シャンソンVマジックと5位トヨタ自動車アンテロープスはデンソーと同じく16勝6敗で並ぶ。6位三菱電機コアラーズが14勝4敗で続き、4枠しかないプレイオフ争いは熾烈を極める。
昨シーズン、ファイナルに到達したデンソーだったが、吉田 亜沙美選手不在のJX-ENEOSに1勝も挙げられずに終わった。今年のオールジャパンでも、吉田選手が復帰したばかりの不完全な女王を引きずり下ろすことができずにいる。
「やっぱり勝負強さがJX-ENEOSにはあると思います。前半良くても後半やられてしまうので、勝ち方を知ってるとか、がんばりどころは向こうの方が上です」
デンソーの大黒柱である髙田 真希選手が、敗戦後の反省点を挙げ始めた。
「相手の身長が大きい分、いつもだったら通るパスが通らない。手も長いのでピンポイントでボールが来ないとカットされてしまいます。ワンテンポでも遅れた状態から攻めるとなれば相手は高さがある分、難しい。でも、それをクリアしない限りは、自分たちがJX-ENEOSより上に行くこともできない。何度も対戦している相手なので、個人が反省しどれだけがんばれるかが大事」
183cm/髙田選手と181cm/牛田 悠理選手とインサイドは国内では、けっして低くはない。それでも、184cm/間宮佑圭選手と192cm/渡嘉敷来夢選手のツインタワーが相手となると、一筋縄ではいかないのだ。
金曜日の初戦を勝利した後、「デンソー戦はディフェンスを第一に考えている」とは、間宮選手のヒロインインタビュー。この日は髙田選手を10点に抑えた。さらにオフェンスでも高田選手を背負いながらクルリとスピンムーヴを決めて魅せ、16点を挙げている。
(19勝)3敗を喫しているJX-ENEOSだが、デンソーは一度も勝てず、オールジャパンを入れて4連敗。髙田選手が加入した2008-2009シーズンまで遡ってみても、2勝(20敗)しかできてない。対戦前から気持ちで負けているとは考えられないか、小嶋 裕二三ヘッドコーチに伺ってみた。
「選手には常にどの試合も大事であり、我々はどのチームに対しても全力で臨まなければ勝てないチームだと言ってます。周りは首位決戦となれば期待されるかもしれませんが、いつもと同じように、できることを一生懸命やろうと伝え、今日の試合(2月13日)も入りました。ただし、JX-ENEOSの場合は少し特殊なところがあります。いつもと違う一生懸命さが求められます。それができている時間は良いのですが、いつもと同じに戻ってしまうとこのような結果になってしまいます」
高さに対しては、やはり他のチームとは勝手が異なる。オフェンス面では、“勇気が必要だ”とも小嶋HCは話していた。
「JX-ENEOSの方が、いざという時の勇気であったり、メンタルの強さが絶対にあると思います。その差はしょうがないところでもあり、経験を積みながら1試合1試合戦っていくしかない」
その解決策として、個人の成長を挙げていたのは髙田選手だ。
「個が強くならないとチームとして一つになれない。まずは個でマークマンを突破して、そこから良いパスを出したり、シュートに行くことがチーム力へとつながっていくはずです。そこは気持ちの問題であり、パスばかりを探すのではなく自ら仕掛けることが大事です」
敗れた2月13日の試合であったが、終盤に開き直って牛田選手が渡嘉敷選手を相手にドライブを仕掛けファウルをもらった。小嶋HCも、そして髙田選手もそれを求めていた。
「(JX-ENEOSは)必ずしも勝てない相手では無い。自分たちも少しずつですが経験を積んで来ているので、そこはもう言い訳にはできません。消極的になるよりは積極的に仕掛けてミスする方がまだ良い。そのきっかけをつかむためにも、積極的に仕掛けて行くことが、JX-ENEOSに近づける一歩なのではないかと感じています」(髙田選手)
JX-ENEOSとファイナルの場数を比べれば圧倒的な差で負けている。だが、デンソーも昨シーズン、今年のオールジャパンのファイナルに挑み、経験を積んできた。髙田選手はチームの成長をどう感じているのだろうか?
「デンソーでのキャリアの中で、今が一番チームの総力として底上げができている実感は沸いています。それが勝ちにつながれば良いですが、そこはまだまだです。ベスト4に入れるようになり、セミファイナルを突破してきましたが、それまで何回もチャレンジして、チャレンジして、負けた中から積み上げてここまできています。負けて良いわけではないですが、負けて得ることもあり、這い上がって来たことに自信を持って良いと思います。一人ひとりがその自信を力に変えていけば、優勝という目標は達成できると信じています」
髙田選手は強いチームを打ち負かしたいがゆえに、あえて当時はまだプレイオフに出ていなかったデンソーを選んだ。ルーキーシーズンの5位からスタートし、3年目で3位となりプレイオフ進出を勝ち獲った。ケガにより戦列を離れた2012-2013シーズンこそ7位に終わったが、昨シーズンはファイナルまで進んだ。
「順調ではないですが、着実にチームの順位は上がってきています。もう自分たちも目標を優勝に置いていますし、一人ひとりがしっかり狙っています。あとは自分たちがそれに向けてどれだけがんばれるかだと思います」
JX-ENEOSの7連覇を止めるのはどのチームなのか?はたまた、今年も同じ結果となってしまうのか?
WJBLレギュラーシーズンも残すはあと1ヶ月。
泉 誠一