「日本バスケに制裁、五輪予選出場危機」「日本バスケ、国際試合の出場停止か」……こんな見出しばかりが目立つ日本バスケットボール界。国際バスケット連盟(FIBA)から突き付けられた、諸問題の解決期限は10月末だが未だ迷走中……。
そんな中、第16回Wリーグ(WJBL)の開幕記者会見が行われた。巷では、特に男子リーグの統合問題がクローズアップされて騒々しい。が、女子はしっかり未来を見据え、粛々と荒波の中を突き進んでいく準備を進めていく。
女子日本代表は、昨年43年ぶりにアジア王者に就き、今年の世界選手権の出場権を獲得した(結果は予選リーグ敗退)。アジア大会は若手主体ながら銅メダルを獲得し、アンダーカテゴリーでも好成績を収めている。
「2016年のリオデジャネイロ オリンピックは予選を勝ち抜いて出場します!」女子選手のモチベーションは高い。そんな女子選手たちが、それぞれのチームに戻って覇を競うのがWリーグ。国際試合で活躍し、成長していく選手たちのプレイをライブで観戦できるのだから、皆でしっかり盛り上げて行こう!
7連覇を目指すJX-ENEOSを倒すチームは?
日本リーグ時代を含め、通算優勝回数17でトップに立ったJX-ENEOS。今度は連覇の記録に挑む(現在はシャンソン化粧品の10連覇、通算16回は2位)。現在6連覇中だが、ロスターを見ると、やはり優勝候補の一番手に挙がるのは当然だろう。#10渡嘉敷 来夢、#21間宮 佑圭のツインタワーを止めるのは容易ではない。気になるのはPG#12吉田 亜沙美の不在だが、チームとしてはそれも織り込み済みで、他の選手がチャンスをつかむ良いきっかけになるかも知れない。「ケガ人がおり、5名は開幕に間に合わないので戦力ダウンは否めない」(佐藤 清美HC)としたら、対戦チームにつけ入るスキがあるのかも!?
その開幕戦でJX-ENEOSと対戦するのがトヨタ自動車(昨シーズン3位)。昨シーズンはプレーオフセミファイナルでデンソーに敗れたが「負けた日から“悔しさ”を忘れたことはない。ベテランと若手の融合がチームの勝利につながるはず」(キャプテン#23鈴木 一実)とリベンジに燃えている。
いつもは慎重派の後藤 敏博HCが、「上手いチームから“強い”チームに転換中。代表組もうかうかできないほど若手の成長があり楽しみ」と積極的なコメント。開幕戦は面白くなりそうだ。
JX-ENEOS中心で展開されるレギュラーシーズンは3回戦の総当たり。昨シーズン以上にプレーオフ進出争いは激化しそうだ。トヨタ自動車やデンソー(同2位)、富士通(同4位)、シャンソン化粧品(同5位)、三菱電機(同6位)に力の差はほとんどない。
「ファイナル進出は良い経験だったが、またゼロからスタート。遠い目標より、目の前の試合を全力で戦う」(デンソー:小嶋 裕二三HC)。デンソーはJX-ENEOSの対抗馬一番手。昨シーズンの経験が財産になっているはずだ。
「今はまだたくさんの課題に直面している」(富士通:BT・テーブスHC)。新しいシステムの導入を目指しているが、いかに機能するかがカギとなる。
「中堅・ベテランの牽引力がカギ。優しい良い子が多いが、変化を求めたい」(シャンソン化粧品:木村 功HC)。ガラリと変わった選手たちの表情、プレイが見られれば一気にファイナリストに!?
「代表組が不在の間、残りのメンバーのモチベーションが上がって順調に来ている」(三菱電機:山下 雄樹HC)と手応えアリの様子。デンソー、トヨタ自動車からの勝ち星が重要になりそうだ(昨シーズンは両チームから0勝)。
打倒JX-ENEOSの前に、いかに自分たちのバスケットができるかが重要と、どのチームの指揮官も口にする。それだけチーム状態に自信があるのか、それとも逆に準備不足を感じているのか……記者会見に臨む表情を見る限り、前者が多いと感じた。今シーズンの上位争いは目が離せない。直接対決の勝敗や点差が、最後の最後で明暗を分けるかも知れない。
明確な目標を持って臨むことがリーグ全体の底上げに
トヨタ紡織(同7位)、新潟(同8位)、アイシンAW(同9位)、日立ハイテク(同10位)、羽田(同11位)の5チームが、すぐに優勝争いに絡むのは難しいだろう。ただ、それぞれのチームが明確なテーマを掲げ、強化に取り組むことでリーグ全体の底上げにつながっていく。
「自分が目指すバスケットの理解度が上がってきた。1on1の強化=ゴールアタック、ゴールゲットがテーマ」(トヨタ紡織:中川 文一HC)
「プロのメンタリティーを重視し、“バスケに情熱を傾ける選手・チーム”でありたい」(新潟:衛藤 晃平HC)
「勝つことのモチベーションと、体づくり(フィジカル)、個人技のレベルアップ、簡単に負けないディフェンス」(アイシンAW:李 玉慈HC)
「個のディフェンスをチームディフェンスとして強化し、持ち味のオフェンス力を伸ばす」(日立ハイテク:菊地 哲博HC)
「昨シーズンの33試合、今シーズンの30試合は長期の強化期間。その後、(勝てるチームとなり)トップリーグに恩返ししたい」(星澤 純一HC)
チーム強化にはさまざまなアプローチがある。キャリアのある指揮官が揃う女子チームは、じっくりとそして着実に強化を進めていく。それが、リーグ全体の底上げや、女子バスケが世界で戦うモチベーションアップの礎になるのだ。
功労者表彰
開幕記者会見のあとの懇親会で、毎年恒例の功労者表彰が行われた。受賞者は次の4名。
立川 真紗美さん(JOMO、富士通。アテネオリンピック出場)、池田 麻美(トヨタ自動車)、成井 千夏さん(JX他WJBLチームおよび日本代表マネージャー)、山田 久美子さん(シャンソン化粧品、日立ハイテク、JX-ENEOS。世界選手権(1998、2002)出場)※左から。中央は西井 歳晴WJBL専務理事
各人の挨拶では「バスケで育てられた。これからもバスケに関わる」といった喜びと感謝の言葉が続いた。選手の受賞がほとんどだったが、成井さんかマネージャーとして初受賞。“縁の下の力持ち”にスポットが当たるのはとても良い。多くの人に支えられ、選手たちが活躍の場が生まれるのだ。また、池田さんや立川さんはクリニックなどを通じて、バスケの楽しさを子どもたちに伝えているとのこと。普及には欠かせない大きな戦力だ。
また、立川さんはWリーグからは引退したものの、まだまだ現役続行中。地元・神奈川のクラブチーム、TEAM-Sに所属しストリートボールでも活躍中! 切れ味鋭いプレイを披露しています(笑)
WJBL2013-2014 開幕戦
10月31日(金)
19:00 トヨタ vs JX-ENEOS@代々木第二体育館[LIVE配信予定]
11月1日(土)
13:00 羽田 vs デンソー@秋田県立体育館
14:00 富士通 vs シャンソン@三種町琴丘総合体育館
14:00 日立ハイテク vs トヨタ紡織@横手市増田体育館
15:00 JX-ENEOS vs アイシンAW@成田市中台体育館
15:00 新潟 vs 三菱電機@秋田県立体育館
11月2日(日)
13:00 トヨタ紡織 vs 富士通@秋田県立体育館
14:00 デンソー vs 新潟@潟上市天王総合体育館
14:00 三菱電機 vs 羽田@横手市増田体育館
15:00 シャンソン vs 日立ハイテク@秋田県立体育館
文・羽上田 昌彦(ハジョウダ マサヒコ)
スポーツ好きの編集屋。バスケ専門誌、JOC機関紙などの編 集に携 わった他、さまざまなジャンルの書籍・雑誌の編集を担当。この頃は「バスケを一歩前へ……」と、うわ言のようにつぶやきながら現場で取材を重ねている。 “みんなでバスケを応援しよう!”を合言葉に、バスケの楽しさ、面白さを伝えようと奮闘中。