第15回Wリーグ ファイナルはJX-ENEOSの連勝で第3戦を迎えた。瀬戸際のデンソーに硬さがあるかと思われたが、出だしは逆。ターンオーバー、24秒オーバータイムを続け、リズムを崩したのはJX-ENEOSだった。デンソーは大黒柱#8高田を軸に、#14大庭の3ポイント、#9牛田のインサイドなどで12-6とリードを奪う。JX-ENEOSは頼みのエース#10渡嘉敷が0点、2ファウルと精彩を欠き、14-24と10点のビハインドを背負って第1Qを終えた。
第2Qはディフェンス勝負の展開になり、先行したのはJX-ENEOS。リバウンドで優位に立つと#23大沼が7得点をあげるなどペースをつかむ。デンソーの得点を抑え込み、残り4分を切って25-28と3点差に。ようやくデンソーも挽回して35-33とリードを保って前半を終えた。
第3Qはほぼ互角。「気持ちを切り替えて臨んだ」という#10渡嘉敷がミドルを決めれば、キャプテン#9新原のファーストブレイクなどでJX-ENEOSが先行した。一方のデンソーも高田の連続得点、牛田がシュートを決める。JX-ENEOSは大沼が好調を持続し、52-52として最終第4Qを迎えた。
勝負の10分間、JX-ENEOSが強みとなるインサイドで加点すれば、デンソーは大庭のドライブインに#41伊藤の3Pなどで追いすがり61-61の同点。そして、ここから渡嘉敷がゴール下でシュートを決めるなど、67-61と引き離しにかかった。最後まで粘りを見せたデンソーだったが、大事な場面でシュートブロックされるなどミスもあって逆転には至らなかった。
JX-ENEOSの佐藤ヘッドコーチは、試合後のTVインタビューに続き記者会見でも「疲れました」とコメントした。これは疑いようもない本音だろう。3戦とも僅差の試合が続き、やっとの思いで手に入れた“優勝”。ただ、「自分たちが目指すバスケットできた結果」という言葉に、選手への信頼と自信が感じられた。
敗れたデンソーの小嶋ヘッドコーチは「1つは勝ちたいという『期待』と相手にならないのではないかという『不安』の両方があった」と振り返った。結果はストレート負けだったものの、「トップを競い合えるほど力をつけてきた」という確たる手応えを感じたに違いない。
プレーオフMVPの#21間宮選手を始め、渡嘉敷選手、#52宮澤選手ら、勝者JX-ENEOSの5選手が記者会見に現れた。彼女たちの口からは、「勝ち切れたことが大きい」「僅差の試合が続き、精神面で成長できた」「この自信を今後に生かしたい」といったコメントが続いた。
一方、敗者となった高田選手は涙をこらえつつ、「バスケットは5人でやるスポーツ。個々の力では負けていても、チームで対抗できると感じた」とコメントした。いつもはポーカーフェイスの彼女だが、心に期するものがあったのだろう。
これから日本の女子バスケットは世界を相手に躍動する時が来る。このファイナルを経験した選手の何人かは「JAPAN」を背負って戦うはずだ。たった3戦ですべてを語ることはできない。が、このファイナルを戦った選手たちは、着実に成長した。さらに上を目指すと心に決めている。
日本の女子バスケの飛躍──そのためにも、このファイナルを見届けたたくさんのバスケファンが期待とエールを送り続けなければならない。感動をもらった恩返しはファンの務めであるのだから。
※見逃してしまった方、朗報です! 「WJBLチャンネル」でファイナル第3戦配信中!!
【第15回Wリーグ】
- 第1戦(4/17・木)@秋田県立体育館
JX-ENEOS(1勝)○59-55● デンソー(1敗) - 第2戦(4/19・土)@あづま総合体育館
デンソー(2敗)●71-73○ JX-ENEOS(2勝) - 第3戦(4/20・日)@国立代々木競技場第二体育館
JX-ENEOS(3勝)○71-68● デンソー(3敗)
【第15回Wリーグ表彰者一覧】
《アウォード》
プレーオフMVP 間宮 由佳(JX-ENEOS#21)初
レギュラーシーズンMVP 高田 真希(デンソー#8)初
コーチ・オブ・ザ・イヤー 佐藤 清美(JX-ENEOS)2年連続2回目
ルーキー・オブ・ザ・イヤー 伊集 南(デンソー#13)
ベスト5
G:吉田 亜沙美(JX-ENEOS#12)3年連続3回目
GF:川原 麻耶(トヨタ自動車#2)3年連続3回目
F:栗原 三佳(トヨタ自動車#24)初
CF:渡嘉敷 来夢(JX-ENEOS#10)2年連続3回目
C:高田 真希(デンソー#8)2年ぶり3回目
《リーダーズ》
得点 高田 真希(デンソー#8)Avg.21.67点/2年ぶり3回目
アシスト 吉田 亜沙美(JX-ENEOS#12)Avg.7.18本/2年連続2回目
リバウンド 高田 真希(デンソー#8)Avg.11.48本/初
スティール 森 ムチャ(トヨタ自動車#22)Avg.2.85本/初
ブロック・ショット 渡嘉敷 来夢(JX-ENEOS#10)Avg.1.86本/2年連続3回目
フィールドゴール成功率 高田 真希(デンソー#8)Avg.57.35%/初
フリースロー成功率 稲本 聡子(羽田#22)Avg.86.89%/初
3ポイントシュート成功率 山本 千夏(富士通#15)Avg.39.52%/初
【平成25年度 東京運動記者クラブ バスケットボール分科会選出 年間ベスト5】
吉田 亜沙美(JX-ENEOS#12)5年連続5回目
間宮 由佳(JX-ENEOS#21)3年連続3回目
渡嘉敷 来夢(JX-ENEOS#10)2年連続3回目
高田 真希(デンソー#8)2年ぶり3回目
久手堅 笑美(トヨタ自動車#25)2年連続2回目
文・羽上田 昌彦(ハジョウダ マサヒコ)
スポーツ好きの編集屋。バスケ専門誌、JOC機関紙などの編 集に携 わった他、さまざまなジャンルの書籍・雑誌の編集を担当。この頃は「バスケを一歩前へ……」と、うわ言のようにつぶやきながら現場で取材を重ねている。 “みんなでバスケを応援しよう!”を合言葉に、バスケの楽しさ、面白さを伝えようと奮闘中。