連日熱戦が続くウインターカップ。3日目を終え、男子では藤枝明誠、大阪学院、洛南、八王子学園八王子、延岡学園、京北など有力校が次々と姿を消した。
3日目のハイライトの1つだったのは洛南―市立船橋。4Qに見せた市立船橋の見事な逆転劇は会場をおおいに沸かせた。
立ち上がりから洛南の勢いに飲まれ1Qを21-12とリードされた市立船橋の近藤義行コーチは「選手の力は関係なく、チームの歴史として全国大会優勝をされている吉田(裕司)先生のキャリア、その先生が作り上げてきたチームとして、7:3で洛南が上だと思っていました」と語る。事実、過去3回戦った全国の舞台で市立船橋は1度も洛南に勝ったことはない。
「だから、1Qから仕掛けて行こう、それで少しでも洛南をあわてさせようとゲームプランを立てたんですが、その気負いからか逆にうちが固くなってしまってファーストシュートがなかなか入らなかった」
しかし、シュートが打てていないわけではない。「相手のシュートが入って、うちが入っていないだけなのだから、今は我慢しよう。そのうちこの波が逆になるときが来るから、今はみんなで我慢しようと選手に言い続けました」
『我慢しよう』――その言葉を近藤コーチは試合前のミーティングでも口にした。
「昨日、尽誠学園が藤枝明誠を破った試合を(会場の)上から見ていたんです。劣勢のときも我慢して勝機を得た色摩(拓也)先生のバスケットを観て、これだ!と思いました。だから最後のミーティングで選手たちになぜ尽誠が藤枝明誠に勝ったのかということをもう1度考えてみようと言ったんです」
相手は力のあるチームだ。正直、その力は自分たちを上回るかもしれない。もしかすると10回戦って1回しか勝てないかもしれない。だが、その1回がこの一戦だと信じて戦えばいい。その気持ちは必ず勝機を生む。
「あの尽誠の戦いからそんな色摩先生の思いが伝わってくるような気がして、うちも同じ思いで戦いたいと思いました。俺たちはまだ洛南に1度も勝ったことがない。でも、勝てる試合がこの一戦かもしれない。そうするために劣勢のときも我慢して自分たちの力を出し切ろうと」
3Qを終わって60-51。9点のビハインドは変わらなかったが「一桁差なら行ける。開き直って勝ちに行こう」と近藤コーチは選手たちを送り出した。
そして、その言葉どおり“開き直った„選手たちのアグレッシブなプレーは次第に洛南を圧倒し始める。残り4分でついに逆転。そこからは1度も流れを渡すことなく、84-73で2回戦の大きな山を越えた。
「本当に大きな山でした」
もちろん大会の先にはまた新たな山が待ち受けている。
しかし、市立船橋にとって格別だった洛南という山、それを越えたことでチームが手に入れた自信は大きい。全員で登り切った山の上からはまた違う景色が広がっていくに違いない。
松原 貴実