「ウインター2013」。女子は桜花学園が連覇を果たした。インターハイ、国体と合わせて高校3冠……「3冠が懸かった決勝はやはり違います」と、井上眞一コーチはホッとした表情を浮かべた。31年連続31回目の出場。優勝回数は19回目となり、ベスト4以上は25回。高校女子バスケ界では圧倒的な実績を誇る強豪校だ。
岐阜女子と対戦した決勝戦は79-69の10点差。2ケタ得点差をつけた完勝にも見える。が、果たしてそうだろうか? 前日の準決勝戦、聖カタリナ女子と対戦した桜花学園は68-65という3点差でなんとかに逃げ切っていた。序盤からリードを奪う展開で、第3ピリオド終了時点で61-37。残り1ピリオドで24点差は大差であり、誰もが勝負アリ、と思ったに違いない。
ところが、そこから怒涛の攻撃を仕掛けた聖カタリナ女子。第4ピリオドだけ見れば、28-7と“完勝”だった。何が起こるかわからない……それがスポーツの醍醐味だ。ライブで観るからこそ、心震える奇跡が起こる瞬間に出合える。
話を戻して、決勝戦の第4ピリオド、61-51と桜花学園リードで始まった。岐阜女子はディフェンスの当たりを強め、相手のミスを誘い得点につなげる。残り7:43には57-63と6点差に。ペースをつかんで追い上げムードが高まっていく。残り5:58、57-67と再び10点差に押し戻されてしまった岐阜女子はタイムアウトを要求した。
次のワンプレイ、岐阜女子に得点が入れば、奇跡が起こるかも……。ところが、逆だった、桜花学園が3ポイントを決め70-57。大歓声とため息が入り混じった雰囲気が応援団席にあった。たった1つのプレイ、しかもタイムアウト直後の攻守が明暗を分けた。
その後、もう一度粘って追いすがった岐阜女子だったが、結局は10点差で勝負がついてしまった。「~~たら」「~~れば」は禁句かもしれない。が、スポーツのもう一つの楽しみ方、感動の余韻というのは、あの時の瞬間を共有した者同士が『あの時~~だったらね』と語り合えることだろう。
選手たち(ベンチにいてもいなくても)は、その瞬間を共有した同志である。10点差の記憶を持ちながら、次のステップで頑張ることだろう。今日もまた、男子の決勝戦、3位決定戦で「バスケの記憶」が刻まれるはずだ。この記憶を大切に、語り続けることがたいせつなのだと思う。
文・羽上田 昌彦(ハジョウダ マサヒコ)
スポーツ好きの編集屋。バスケ専門誌、JOC機関紙などの編 集に携 わった他、さまざまなジャンルの書籍・雑誌の編集を担当。この頃は「バスケを一歩前へ……」と、うわ言のようにつぶやきながら現場で取材を重ねている。 “みんなでバスケを応援しよう!”を合言葉に、バスケの楽しさ、面白さを伝えようと奮闘中。