負けたチームは泣くものだ。それが1回戦だろうと、2回戦だろうと関係ない。高校に入学してから3年間、チームメイトともに一生懸命バスケに打ち込み、ようやく出場を果たしたウインターカップという晴れ舞台であれば、なおさら負けた悔しさがこみ上げてくる。
男子3回戦、八王子学園八王子(東京)に敗れた金沢(石川)の選手たちは、試合終了の合図とともに溢れる涙をこらえきれなかった。序盤からリードを許す展開だったが、よく食い下がり善戦した。が、相手センター#7ソレイマン・ゲイの高さに手を焼き、大事なところでリバウンドを奪われては、追いつくチャンスを掴みきれなかった。
第4ピリオド、徐々に点差をつけられ勝負アリ。それでも最後の最後まで果敢にゴールに向かい、“あと1本”を狙い続けた……。
試合後、コートサイドで肩を寄せ合い、大舘コーチの言葉を聞く選手の目には涙が溢れていた。3年生だろうか、一人ずつ肩に手を置きグイっと引きせるコーチの仕草に“ハートでつながっている”証が見て取れた。その光景から、涙の理由は試合に負けたことだけが理由ではないと直感できた。
負けたチームは泣くものだ。でも、選手たちはかけがえのない何かを得たはずだ。試合が終わったコートにたたずみ、まだ試合が続いている別のコートを眺めていた選手に声を掛けた。「先生とバスケができて良かったです。進学して、またバスケを続けます」その言葉は、大舘コーチにとっては何よりの喜びであり、励みになる。思いは後輩たちに受け継がれ、いつまでもつながっていく。
男子はベスト8が出揃い、女子はベスト4が出揃った。いよいよチャンピオンを目指す激戦が始まる。嬉し涙は頂点に立つチーム・選手たちに与えられる特権だ。悔し涙を流すのは、たくさん嬉し涙を流す時のための練習なのだ。
高校3年生たちは、また新たなチームメイトたちとバスケに打ち込んで欲しい。どんなコートが待っていようとも、そこが自分のステージになる。夢をあきらめないで突き進んで欲しい。
文・羽上田 昌彦(ハジョウダ マサヒコ)
スポーツ好きの編集屋。バスケ専門誌、JOC機関紙などの編 集に携 わった他、さまざまなジャンルの書籍・雑誌の編集を担当。この頃は「バスケを一歩前へ……」と、うわ言のようにつぶやきながら現場で取材を重ねている。 “みんなでバスケを応援しよう!”を合言葉に、バスケの楽しさ、面白さを伝えようと奮闘中。