「なんで私たちが割を食わなくちゃならないの?」そう感じているであろう女子日本代表選手と川淵三郎チェアマンの意見交換会が2月25日(水)に実施された。
女子日本代表選手たちのオリンピックへ出たい、そのためにも必ずやオリンピック予選に出られるよう制裁解除を願う声は、出席したアンダーカテゴリーの選手たちからも挙がった。また万が一、今年のアジア選手権に出場できないとなれば、2部リーグ制となっている女子の場合は2年後の世界選手権予選時に2部に回ることとなる。つまり、その時点で世界選手権出場が無くなってしまう危機的状況であることを、内海知秀ヘッドコーチが切実に訴えていた。
今年8月にリオデジャネイロオリンピック予選が行われる。また6月末よりU-17世界選手権が、7月にはユニバーシアードが、10月にはU-18アジア選手権が予定されているが、制裁解除は早くても6月末。もし、それ以前に組み合わせ等が決まり、いくら大会前に解除されたとしてもそもそも出られないとなるのではないか、ということも懸念された。
日本代表だけではなく、Wリーグの登録期限が5月末日に制限されているため、日本代表キャプテンの大神雄子選手は国内復帰ができずにいる現状などの問題点を挙げながら、一つひとつの質問に自らの意見で返したり、改善へ向けた約束をしていた川淵チェアマン。現場からの生の声が挙がった意見交換会、ならびにその後に行われた囲み取材ではタスクフォースが行っている現状や、この後へ向けた話もあったので全文ご紹介しよう。
女子日本代表意見交換会 参加者
- JAPAN 2024 TASKFORCE
チェアマン 川淵 三郎
メンバー 境田 正樹(弁護士) - 女子日本代表(世界選手権出場チーム)
内海 知秀ヘッドコーチ
大神 雄子選手(キャプテン)
久手 堅笑美選手(トヨタ自動車アンテロープス)
宮元 美智子選手(三菱電機コアラーズ)
大庭 久美子選手(デンソーアイリス)
渡嘉敷 来夢選手(JX-ENEOSサンフラワーズ)
長岡 萌映子選手(富士通レッドウェーブ) - 女子日本代表(アジア大会出場チーム)
諏訪 裕美選手(アイシンAWウィングス) - アンダーカテゴリー
一色 建志ヘッドコーチ
篠原 華実選手(聖カタリナ女子高校3年/U-18日本代表キャプテン)
加藤 優希選手(桜花学園高校3年/U-17日本代表キャプテン)
意見交換会
川淵三郎チェアマン(以下川淵C):今日はここに出席された選手の皆さん、日頃思っていることをおもいきってバシバシと言ってください。だいたい男子が40年近くオリンピックに出られておらず、女子は出ているのになんで私たちが割を食わなくちゃならないの、というのが一番言いたいことだとは思います。今回のタスクフォースで、なんとしてもリオデジャネイロオリンピックアジア予選に出られるように私としては全力を尽くしたい。もうそれだけですね、僕がやれることは。それがやれなければ、僕の値打ちが無い。ともかくそれに全力を向けて努力していきたい。ほんの3ヶ月しかないですが、なんとしてもやり遂げたいと思っています。今日はとくに皆さんが日頃、女子バスケだけではなくバスケットボール界全体についてなどなんでも構わないですから、思い切って自分自身をアピールすること。それも大事。常識的なことを言うと、マスコミの皆さんはとりあげてくれないから、なんか川淵が偉げなことを言ってちゃんとやれんのかよ、みたいなことを言えば、テレビで取り上げてもらえるかもしれない。そのぐらいの勇気を持って発言してくれることをお願いします。じゃ、渡嘉敷から行くか!
渡嘉敷 来夢選手:やっぱり一番は、オリンピックに出たいです。
川淵C:オリンピックに出るためにはアジア予選を勝ち抜かねばならないだろう。
渡嘉敷:アジア予選に出ることを大前提に今は練習をしています。
川淵C:それは俺にしっかりせぇよ、と言いたいんだろ?
渡嘉敷:お願いします。
諏訪 裕美選手:昨年のアジア大会で私がキャプテンを務めたチームは若手主体でしたので、その選手たちが世界選手権やオリンピックを目指すためにも、まずこのアジア大会でしっかり戦ってがんばろうというモチベーションで臨んでいました。その若手選手たちが目指すところが今現状は、無くなりつつあるところが寂しいところだと思います。
川淵C:練習していても、なんか気乗りしないという感じは多少ある?
諏訪:実際に私たちが日本代表として練習しているときは、まだ制裁が決定しているわけではなかったので、揉めてるね、という感覚くらいでした。しかしこれから先は、モチベーションを保つことなどは難しいのではないかとは思いました。
川淵C:女子が割を食っているという状況の中、大神さんがマスコミに少し出たくらいで、男子も含めて、選手たちの声をもっと出さないのか?と思っていた。大神さんはその時にコメントもしていたけど、思いの丈を打ち明けてください。
大神 雄子選手:一番はじめにようやく選手の声を聞いてもらえる場を持っていただけて大変感謝しています。具体的に準備をしてきたのですが、一番最初に言いたいのは、今まで日本代表を続けてきて、アテネ五輪の時は最年少出場、その後は北京、ロンドンオリンピックを逃しましたが、ようやく2013年に43年ぶりにアジア選手権で優勝し、アジアの頂点に立ったことでみんなも具体的な目標を定めることができたのが次のリオデジャネイロオリンピックだったと思います。
昨年、私は中国でプレイしましたが、今、ほとんどの選手がWリーグでプレイしながら強化し、それを日本代表で表現することが女子日本代表選手の環境であり、ルーティーンになります。一番の母体になっているWリーグのことに対し、自分の中で問題があるのではないかと思い、少し整理してきた話をさせていただきます。
一つは、移籍の問題。どのリーグもそうだと思いますが、前所属チームの会社の承認が必要であり、それで初めて移籍が認められてリストに載った時点から交渉権が得られて移籍が確立するのが今の流れ。男子リーグを見ても、契約更改に至らなかった場合は移籍リストに載り、自由契約になる部分があります。競技は違いますが、バレーボールは所属チームから移籍を認められなくても、自分の意思があれば移籍を認められます。ただし、その場合は確か半年間は移籍先チームでプレイできないというルールはありますが、それでもある程度は選手の移籍は認められています。日本の女子バスケリーグに関しては、その点で疑問があります。一度、移籍をしたいと言ったとしてもなかなか所属チームから承認が下りず、スポーツ裁判までいったことがこれまで2〜3例あったかと思います。では、どうやって女子バスケを盛り上げていくのか?Wリーグからそのまま日本代表へつながっているのに、リーグの部分では少し矛盾があると感じています。
川淵C:移籍の問題がWリーグか、協会マター(管理下)なのかが僕は分からないが、協会マターであれば、今度の改革の中で直接やれる。でもWリーグマターとなると、ちょっと違う話になるかもしれないが、それでも僕は大神さんの意見に賛成。どうも見ているといじわるしていような感じがすごくある。選手が違法な形で移籍した場合は、それなりの処罰を受けるのは当然だと思うよ。しかし、リーズナブル(妥当)の中で移籍して、なんで半年間プレイできなくなるのか。今、大神さんが協会所属になってること自体、僕には理解できない。今、どのように練習しているの?今日この場で聞くと具合の悪いこともあるかもしれないから、あとで個人的に聞こうか。協会所属というのは認められていることではあるが、では選手の実戦経験はどこで積ませるの?ということから言うと、その在り方はおかしい。一瞬そうならば良いが、長い間そのままでは問題がある。それは後で話をしましょう。
久手堅 笑美選手:私は正直言ってまだ制裁に関して詳しく分かっていないところも多いです。実際、男子の仕組みも詳しく分かっていません。ただ、オリンピック予選に出て、最終的にオリンピックに出られるようにして欲しいというのが今、一番思っていることです。その中で今、私たちにできることは何かといえば、やっぱり選手である限りはとにかく一生懸命コートで戦っている姿をファンの皆さんであったり、いろんな人たちに見せていくことです。
川淵C:女子は選手会あるの?
久手堅:無いです。
川淵C:僕の立場から言ってはいけないのかもしれないけど、選手会を作って選手の権利や、今回のことに対して発言することがあった方が良い。今回の件で男子もそんなに発言しなかったしね。オリンピック予選が出られないかもしれないのに、昨年10月末までに結論を出さなかったって、そんなバカな話があるか、と僕は人ごとながら本当に腹立たしかったよ。その時になんで選手がもっとものを言わないのか不思議だった。
宮元 美智子選手:私自身も今回の制裁に関しては全てを把握できてるかと言えば、そうではない部分があります。それは自分自身でも一選手として知ることが大事なことであると思っています。また、一選手としてやれることとしては、バスケットをしている小中高生や私たちWリーグの選手たち、これからバスケットを始めるであろう小さい子たちも、やっぱり目指すところはWリーグに入りたい、日本代表選手になりたい、そこからオリンピックに出たいとどんどん上に目標がつながっていくと思います。今回はいろんな問題でバスケ界の暗いニュースが流れていますが、逆に注目してもらえるチャンスです。どんどん良い方向に変わって行くことを世間の皆さんに知ってもらい、それをメディアの皆さんにも取り上げていただいて、バスケットを知ってもらえるチャンスでもあると思います。選手の思いもそうですし、オリンピックに出たいという思いもそうですが、今回のことでバスケをもっと発展させていきたいという思いがあります。
川淵C:小学校からバスケを始めたんでしょ?
宮元:はい
川淵C:代表になりたいという夢を実現できたにも関わらずこのような状態になっては、下の子たちだって夢を奪われるという感じもなくはない。実際はまだ、そこまで感じていないのかもしれないけど。実はうちの孫も小学1年からずっとバスケをやってたんだよ。補欠だったけど。だから、バスケットは子どもたちの夢だな、という思いがある。
大庭 久美子選手:今、選手として日本代表に選出されるよう、リーグ戦を通して毎日練習をがんばっています。その中で、日本代表チームが世界大会やオリンピックへの道が閉ざされるということは、日本代表選手を目指すみんなにとっても大きな目標を失うことになると感じています。子供の頃に日本代表が世界を相手に戦う姿を見て、自分自身もその舞台に立ちたいという憧れを持って続けてきました。同じように子どもたちが今、自分たちががんばっている姿を見て、将来を夢見ながらがんばっていると思います。今回、世界と戦うチャンスを失うとなれば、子どもたちの将来の夢を奪うことにもつながるのかなと感じています。早く問題を解決できることを願っています。
長岡 萌映子選手:私も細かいところは分かりませんが、やっぱり国際大会に出られないのは、日本のバスケット界の向上にもならないので、早く解決できることが一番です。私にとって、これからの目標がオリンピックになります。今、自分たちにできることは、リーグで精一杯戦って、多くの方にバスケットを見てもらうことが一番です。今はリーグ戦の最中なので、オリンピックを目標に毎日プレイすることが自分にできることだと思います。まず自分たちは、バスケットを知ってもらうことが大事だとも思っています。
川淵C:みんなはしっかりオリンピック予選を戦わせてくれ、という気持ちが最優先。さっき大神さんが言ったWリーグに関する移籍について問題提起されたけど、オリンピックに出たい気持ちは理解したし、そうだろうと思う。Wリーグだとか、日本代表強化とかも含めて遠慮無く言ってください。
篠原 華実選手:2020年東京オリンピックが決まって、それに向かって自分たち若い選手たちががんばっている中、世界大会に出られないとなると目標というか、がんばっていく先が無くなってしまいます。やっぱり世界を相手に戦っていかなければ、プレイの幅も広がらないと思います。日本だけではなく、世界を相手に試合したいと思っているので、そうできる環境になって欲しいです。
川淵C:海外には毎年行ってるの?
篠原:代表に選ばれれば、海外遠征に行ったりしています。U-18はカナダとフランス遠征を行い、アジア選手権はヨルダンで行われました。
川淵C:カナダとフランスは結構強いもんな。勝てなかった?
篠原:勝ったり、負けたりでした。
川淵C:それは代表と対戦したの?
一色 建志HC:その国の同世代やU-24といった年上のクラブチームと対戦しました。
川淵C:18歳は本当に東京オリンピックが夢だもんね。
加藤 優希選手:小さい頃からの目標がオリンピックに日本代表として出場することです。今、この問題に関して詳しくは分かりませんが、選手としてできることは一生懸命プレイすることだと思います。
川淵C:オリンピックを夢見ているのに、その予選にすら出られない状況を完全に無くしてもらわなければ困るよ、というみんなの気持ちは100%分かりました。それは置いておいて、日本の女子バスケ界に臨むことは何かありますか?
渡嘉敷:個人的な話になりますが、自分はもっと日本のバスケットを盛り上げたいという気持ちがあります。自分に何ができるかを考えた時に、日本代表としてアジア選手権で優勝し、世界選手権に出てプレイしてみて、やっぱり海外でプレイしたいという気持ちが少し芽生えてきました。そういった挑戦することで日本のバスケットが少しでも盛り上がれば、ちょっと自分やったな、と思えるんだと思います。
川淵C:海外になかなか行きにくい環境?
渡嘉敷:環境というよりは、自分は実力がまだまだで、自信もまだないです。その中で海外の選手とプレイすることで世界にはいろんな選手がいることを知ることができました。(世界選手権での)成績はあまり良くなかったですが、個人としてはすごく刺激を受けたので、海外へ挑戦してもっとバスケットを盛り上げたいと考えています。
川淵C:実力が無いと言ってるけど、海外で実力を上げる手もあるよね。
渡嘉敷:日本にいる限り自分は身長が高いので、Wリーグと日本代表として世界を相手にする時はプレイスタイルやポジションも変わってきます。自分にとっても、日本代表にとっても、海外での経験がプラスになれば良いと思っています。
川淵C:競り合う相手は、背の高い選手にはとくに必要だね。
渡嘉敷:世界には自分くらいの身長の選手はすごく多いので、もっと機敏な動きができるようにがんばります。
大神:渡嘉敷選手の話についてですが、私は2008年にWNBAでプレイさせてもらって、昨年は中国リーグでプレイしました。先ほど川淵さんから世界に出にくい環境なのかと質問されましたが、今、Wリーグの中では一律5月31日に登録締切という期限が決まっています。FIBAのアジア選手権や世界選手権が行われるのが8〜9月。昨年の世界選手権は10月末〜11月にかけて行われ、一昨年のアジア選手権も11月に実施されており、国際大会は夏場から秋にかけて開催されることが多いわけです。その中でリーグ登録が5月に締め切られると、例えば渡嘉敷選手のように世界選手権でパフォーマンスを発揮することができ、海外のチームからオファーをもらったとしても、その時点では登録が済んでいるWリーグでしかプレイできないという実態があると私は思っています。その改善策はもしかすると強化なのかもしれませんが、選手がバスケットを盛り上げるために海外に出たいという気持ちがあっても行きにくい環境だと感じています。
川淵C:(契約等の締切が)年に2回あれば良いんだよね。だいたい2回あるんだよ、普通は。Wリーグの関係者と話して、選手が海外にできるだけ出て行きやすく、日本代表の強化につながるようなことに協力してもらうような話し合いの場が持てるようにしたい。今日はいろんな話を聞き、すぐに回答できるとは思わないけども、念頭に置いて解決するべく努力します。
大神:ぜひお願いします。自分自身もそうですが、今シーズンも海外でプレイしたいという気持ちでチームをあたっていたのですが、中国リーグがアジア人枠を廃止したことで自分がプレイする場が断たれ、Wリーグの締切が5月ということもあり、そのタイムロスからなかなか契約ができなかった部分もあります。もちろんヨーロッパなどのリーグに行って話をさせてもらったりもしたのですが、すでにリーグが始まっており、時期が時期なので(契約に至らず)。今は自分でトレーニングをしている形です。なので、日本バスケットボール協会所属になっているわけです。
川淵C:チームに行って、少し練習をさせてくれというわけにはいかないの?
大神:今はリーグ中ということもあり難しいです。渡嘉敷選手が言ったように、選手自信が盛り上げるとか、日本代表の強化のためを思って海外に挑戦することに対し、選手の立場から言えるのであればもう少し競技登録の部分は外に出られる環境を増やしてもらいたいというのはあります。
川淵C:今日、提案いただいたので、検討課題に入れておきましょう。
今日、みんながどういうことを言うのかな、と自分なりに想像してみて、ある種男子のようなプロ化を期待しているのかな、とも思った。でも現状を考えれば、サッカーもそうだが、女子のプロ化はすごく難しい。サッカーでもプロとして保証されている選手はごく僅か。(女子ワールドカップで)世界一になってもだよ。世界中の女子サッカーチームでもプロ契約している選手はすごく少ない。いろいろ考えたら、女子バスケはむしろ恵まれているな、というのが率直な意見。皆さんがどういう感覚をもっているかは分かりません。でもやっぱり企業がしっかりバスケットをやらせてくれて、給料もちゃんともらえる。サッカーの選手は、練習の合間を縫って自分でアルバイトをして、お金を稼いでサッカーをやらせてもらっている環境の選手の方が多いからね。僕があえて質問しなかったからかもしれないけど、現状でとりあえずは良いと思ってくれているんだなと思う。僕に言わせれば、今の企業チームの中で日本代表として一生懸命活躍している恰好が一番良いのかと思うのだが、みんなはどう思う?
高校生たちは将来のことをどう考えている?
一色HC:この2人は3月で卒業し、もう企業チームに内定が決まっています。
川淵C:あっ、そうか。ごめんね。それはオープンになってるのか?
篠原:大丈夫です。自分は春からデンソーに行きます。
加藤:シャンソン化粧品です。
一色HC:僕はジュニア選任コーチなので、高校や高体連との兼ね合いがあり、皆さんにご協力いただいてうまく行ってます。もっとうまく行く方法もあるかとは思います。FIBAから制裁が下り、今年7月にはU-19世界選手権、8月にU-16アジア選手権があります。もしかすると海外遠征を一度もできないまま、大会に出なければならないかもしれません。アジアでは中国と争って1位、2位の成績を収めてきましたが、この影響で成績不振につながるのが心配です。これまで各世代、2回ずつくらいは海外遠征を行かせていただいて大会に臨んできました。万が一、6月に解除されたとしても大会エントリーのこともありますし、国内で行える範囲での強化はしていますが、6月末に制裁解除されたとしても準備期間がないのが心配です。
川淵C:バスケットもあらゆる競技もそうだが、国際経験無くして国際大会を勝ちきるのは無理。やっぱりボディコンタクトなどのフィジカル面や技術面など全て含めて、そういうものを体験しないと国際大会では勝てないよね。
内海 知秀HC:今の話で言えば、日本代表の対戦相手は海外となり、個の強化が大事になります。それができないというのが非常に強化という点ではマイナスな部分があります。大神も言いましたが海外にチャレンジすることは、サッカーもそうですが、それも個の強化につながります。世界の技術や精神面でのタフネスさなどを吸収し、日の丸をつけて戦う形もまた、個の強化です。そういう個の強化は非常に重要であり、海外遠征、海外挑戦はどの競技でも同じですが、重要なところです。
選手たちが言うように、我々はずっとオリンピックを目指してやってきています。例えばこの制裁が万が一、6月に解除されなかった時はオリンピック予選だけではなく、今年のアジア選手権に出られないとなるとその次の大会時はディビジョン2からスタートとなります(女子はレベル差を分けた入替ありの2リーグ制。世界につながるのはディビジョン1となる1部リーグのみ)。そうなれば、自動的に次の世界選手権には出られないわけです。東京オリンピックに向けた強化において、世界の上位との真剣勝負ができず、非常に大きな問題になります。それも含めて川淵さんにはがんばっていただきたいと思っています。
国内の強化は、Wリーグの中での切磋琢磨が必要。男子リーグの方は問題となってこれからいろいろと改善されるでしょうが、女子の方も少し発展性を見出していきたい。
今、海外挑戦できないのか、という話がありますが、ヨーロッパと日本のシーズンは同じであり、ヨーロッパに行くならば日本のチームを辞めていかなければなりません。夏にシーズンを行っているアメリカ(WNBA)はレベルが高く、これもなかなかハードルが高い。それらのリーグに入れれば個の強化につながり、サッカーと同じような強化ができると思います。
もう一つ私の心配しているところですが、例えば6月に制裁が解除されたとしても、その前にあるU-19世界選手権やU-16アジア選手権といった大会において、その参加に対するレターがFIBAから来ないのではないかということが想定されます。
川淵C:それは5月中に来るの?
内海HC:時期に関しては分かりません。
川淵C:ならばFIBAに間に合うかどうか、聞いてみながら交渉しよう。
内海HC:我々のアジア選手権もそうですが、例えば解除前に組み合わせが決まってしまい、解除されても出られない状況になってしまっても困るわけです。
川淵C:その話がこの時点で聞けて良かった。分かりました。
普段思っていることをこのような場ではなかなか言いにくいとは思いますが、大神さんはなかなかいろんなことを言ってもらって良かった。渡嘉敷は何かあるか?すぐ前にいて、目が合うからさ。これだけは言っておきたいことはあるか?
渡嘉敷:すごく恵まれた環境で、バスケットだけに集中できるというのは、本当に感謝しています。日本では自分より大きい人がいないので、世界に行こうと思ったときに自分よりも大きい人に慣れていないとダメだと思いました。世界選手権前に海外遠征をすごくたくさん組んでいただいていたので、海外遠征とかは大事ですよね。
川淵C:仰るとおりでございます。他に何かあるか?
大神:統計を見ても、日本のバスケットの競技登録者が60万人を越えています。他競技と比べてもバスケットの競技人口はすごく多いと思います。自分たち選手も北京とロンドンのオリンピックを逃して、なかなか世界で戦っている姿を見てもらえていない部分や勝てない現状に対し責任も感じています。どうして競技人口がここまで多いのに、なかなか日本でバスケットが盛り上がらないのか、ずっと疑問に思っており、川淵さんはどうお考えなのかを聞かせていただきたいです。
川淵C:それは強化の方法が悪い以外何もない。早い話が渡嘉敷は背が高いがゆえのハンディキャップが日本の中ではあって、海外にいかないと良い競争相手が見つからない。そういう選手は、やっぱり外に出した方が良いとかね。僕はこの前、試合を観ていて、体幹が弱いなぁ、と思った。バスケットはすごくぶつかって吹っ飛ばされる割に、体幹を鍛えてるのかな、と思ったわけ。そういう部分、部分での強化の的が絞られていない。だから結局、男子チームは40年近くもオリンピックに出られていないわけであり、強化のやり方が悪かったからに他ならない。やり方によっては行けてた可能性もあるわけですよ。国内だけで試合をしていても、国際大会で勝てるわけがない。どうしたら海外の一流チーム、一流選手たちと四六時中やっていけるかなど、いろんなことを考えるためにも、その考え方の種類が明らかに少なかったんだよ。それ以外無い。日本人だって俊敏性などいろんな良い要素だってあるわけで、男子の渡邊雄太というのが20歳で今、ジョージ・ワシントン大学で活躍しているよね。あのような選手、そしてその下のユース年代が日本のバスケットボール界にいても上達しないからと言って、アメリカのハイスクールに行ってるという話は聞いているが、どのくらいの数が行ってるかまでは知らないよ。少なくともある身長以上の選手をどう集めて、どう鍛えていこうかということをやってるの、と僕は調べてないからわからないけど。僕がちょっとバスケットに関わっただけで、こういうことあるな、こんなこともあるな、と考えることが山ほどあり、それをこれまでやっているとは考えられない。そういうことから言えば、これまでの強化の方法がまるでなってなかったと僕が断言しても、何もおかしくない。それが僕の結論です。
川淵 三郎チェアマン:囲み取材
ー 選手たちの意見を聞いた感想は?
オリンピックに出たいというのは当然の話であり、それ以外にもWリーグに関してや日頃のバスケットに関することでの不満が多少出てくると思っていたけど、全く無かったね。やっぱり大神さんは、それなりのプロとして苦労しているのであのような意見を率直に言ってくれたのは非常に良かったと思うし、確かに外部から見ていて移籍や国籍を変えた後の選手の扱いなどはもっと選手サイドに立ってものを考えれば良いのにな、とずっと思っていました。彼女の意見は当然の話。僕がそのことに関して解決できるとは思わないけども、問題を次に送って少しでも良い方向に持って行けるよう努力したいと思います。
ー 冒頭、オリンピック予選に出場させなければ値打ちがない、と選手たちの前で宣言していたが?
もう、それが全て。僕がこれを引き受けたのは、なんとしてもオリンピック予選に出してあげないと、選手がかわいそうじゃないか。とくに女子の場合は男子の割を食ってしまっている。男子が悪いというわけではなく、すべからくプレイヤーズファーストという立場でものを考えていないことに対して僕は相当ガマンがならないんだよ。言いたいことはいっぱいあるけど、今は本当にガマンしている。最後になったら爆発するよ。今は僕としてはかなり冷静にしゃべっています。
ー アンダーカテゴリーの懸念材料も挙がったが、経過措置としてFIBAと掛け合うことなどもできるのか?
そういうのはバウマン(FIBA事務総長)とできるだけ話したいと思うし、若手の育成として企画していることに対して力を貸してくれと言われればFIBAと話し合いますよ。そういう努力は絶対にしなければいけないと思います。現場からそういう声が挙がり、切実だと感じた。ユニバーシアードも7月初旬にあり、5月までに登録締切があるようで、ともかく制裁解除してもらえるという前提において、なんとか処置して欲しいと境田弁護士からバウマンに話してもらうようにします。
ー 当面は男子2リーグが問題になっているが、男子よりも先に女子選手と話し合いを持った意図は?
どういうことで女子だったの?
(境田氏)いろいろ都合が合うところから進めています。先週は盛岡へ行って試合(岩手ビッグブルズvs仙台89ERS)を観てきました。男子も近いうちに行います。
女子は意見を聞いて欲しいという話だった。切実なオリンピックに出たいという思いを僕に伝え、しっかりがんばれよ、という風にきちんと受け止めました。
ー 6月まで時間が無いと言われていたが、動き出してみてやっぱり時間は足りないか?
今は全てバスケットのことを考えている。首都大学のことはちょっと隅に置いて…。
何かあるとこれはどうか、など常に考えており、スマホのメモに思いついたことは入れている。今はバスケットのメモばかりいっぱいになっていて、何かあればそれを見て確認している。それほど今はバスケット一色だな。
ー 選手の意見を聞き、現場も見られ、今後やってみたいいくことは?
今は3月4日の次回タスクフォース会合にハードルとなる基準を出すわけです。この基準に対して、各チームがどう実現できるのか。または5千人というアリーナの要求に対して、4千人までならば対応できるというような経時変化というか、計画を見て、その中で順番を決めて行くことになります。今の戦力というのは、移籍などを考えればそれほど気にすることはないです。今の財源の差は6千万円〜4億円くらいまでの差があります。その財政面の配慮は当然なされるべきであり、選手の報酬が少ない中でトッププロチームとしてやっていけるかといえば問題がある。いろんなことを複合的、総合的に判断して参加チームを決めて行くことになると思います。どの辺になるかと言えば、16チーム±4チームという感じだと思います。
ー 5千人規模のアリーナや最低年俸一千万円ということに対してチームはどんな反応なのか?
あの時、みんな反対したでしょ。先日、盛岡に行ったら、盛岡市長がこのアリーナ(岩手県営体育館)を5千人にします、とその場で宣言してくれました。大阪エヴェッサは7千人のアリーナ(舞洲体育館)と複数年契約を決めた。それから浜松(東三河フェニックス)は5千人のアリーナがあるとかね。かなり(アリーナは)あるんだよ。なのになんで、できないとみんなは言うのか?現状維持して、これ以上のことを無理矢理やらしてくれるな、という自分の努力を惜しむ人だけだね、そういうことを言うのは。そうは言っても行政サイドはどういう風に考えるか、予算その他が取れないからそれは無理だ、と言うかもしれない。そういった時にどう判断するかという話になる。ただ、バスケットの将来を考えたときに、本当に発展すると心から僕はそう思っている。そしたら3千人で満足するの?3千人で良いの、みんなは?そんなに夢がないの、バスケットの関係者は?と本当にそう思う。夢がなさ過ぎるんじゃないか、何を考えてるんだ、と。僕がそんなに腹を立てることではないんだけど、本当に腹が立つよ。やれないわけがない。それは、2〜3年先に計画が成されるのであれば、それは認めるかもしれない。それは全体のバランスを見た上でこれから決めたい。
ー アリーナの猶予期間は2〜3年が限界となるのか?
2〜3年はある程度は見た方が良いと思っている。さっき聞いたところによると、韓国はだいたい5千人以上いつも入っている。サッカーはあまり入っていないのに、バスケットは人気がある。韓国で5千人以上入っているのに、日本で3千人が精一杯と思うのか皆さんは!(5年では長い?)5年はちょっときついが、その場合は2部にいてもらってそこから力を溜めていけばよい。一番今日言いたいのは、皆さん2部に行ったらチームが潰れると思っていること。今、財政上苦しいのは分かるけど、新しくリーグができてマーケティングなどどんどん市場が増えれば、収入が増えるのも明らかなんだよ。そういう動きも今しようとしている。そうすると2部に落ちても、現状より悪くなることは無いんだよ。だけど、みんなは2部に落ちたらブースターがいなくなる、スポンサーがいなくなる、だからそのためにも2部に落ちたら困る、と。それはあなたが勝手に思ってるだけで、ブースターやスポンサーをバカにしていないか、という話。そんなことでブースターが応援を止めるなんてことがあるわけがない。そういう風な言い訳は自分に対して言ってるんだ。そんな無理を言ってくれるなとなるが、俺は無理を言うために来たんだ、ここへ。常識通りならば俺がやる必要なんて何も無いもの。
ー 鹿島アントラーズのような無理を言ったら本当にやってしまったという成功例もある。
できちゃうんだよね。
ー 新リーグを引っ張るようなリーダー的なチームの気配は感じているか?
あるよ、結構。だから手応えは十分あって、もう3千人が精一杯であり、5千人は夢のまた夢と言ってる人は一部いるようだけど、そんなことよりとっくに具現化し始めている。だから(一部の意見は)気にしていない。
ー 企業チームの中にも前向きなチームはあるのか?
あるよ。企業チームの問題は法人化することに多少抵抗があるので、その辺を法人化しないと断固許すべきではないと僕は思っているけど、トップの人たちとしっかり話し合ってうまい方法がないのかを探りたい。頭から話にならないというのではなく、話し合いをもった方が良いと思っています。
ー アリーナ同様、そこにも2〜3年などの猶予期間はあるのか?
それは猶予期間はほとんどない。そっちは1年先なんて言うようじゃ、いい加減にせぇというわけでしょ。だいたい起業するときに1年先になんて言うかい。それはダメだ。
ー 制裁解除のプロセスは、バウマン氏は全てが揃ってからであり、途中段階での見切りはないと断言していたが、その見通しはどう運んでいくのか?
(境田氏)一つの新しくリーグを作ろうと思っていますので、今あるbjやNBLのチームが加盟してもらうための少なくともハンコをもらうのが条件であり、そこまでを5月までにはやり切りたい。あと3ヶ月までしかありませんが。そこまでやらないと制裁解除しない、とバウマンは言っています。新チームに加盟するチームのハンコをもらうことが最低条件となります。
ー 北海道と長野が一つのアリーナに固執せず、地域全体で試合をしたいということだったが、チェアマンがもとめる本拠地との兼ね合いは?
そういう言い方をするとみなもっともだと思うけど、結局は多くの観客を集められないことにつながる。8割を一つのホームアリーナで行い、あとの2割を動かす分には良いが、ホームアリーナがどこにあるか分からないようなチームは発展していかないね。だから日本ハムファイターズが北海道へ移転し、今ではもう北海道全土からお客様が来てくれるようになった。今度、コンサドーレ札幌が北海道全域からお客様を迎えるために北海道コンサドーレ札幌と名前を変えるわけでしょ。一番はじめに北海道と名前がつけたからそうなったわけではなく、日本ハムファイターズというソフトが本当にみんなから賛同を得られたからこそ集まるわけ。はじめに一つの地域の名前をつけたから集まるのではなく、まずは固定客をしっかり集めた上で、いろんなところから来たことで全県の名前にするのは良いが、東芝ブレイブサンダース神奈川と言って、誰が神奈川県民が応援するんだ、って言ったら反論する人がいた。そりゃ、一人はいるだろう。川崎というのと、神奈川と言うのではハッキリしているでしょ。それが将来、神奈川一円から来るようになってから変えれば良い。岩手県で盛岡市長に、岩手ビッグブルズで良いんですか?と聞いたらね、本当は盛岡にしてもらいたい、と本音を言っておられた。本当はそういうものだと思うよ。そのアリーナに対する責任を感じるかどうか。感じてもらった方が良いわけです。神奈川県知事の黒岩(祐治)さんがとどろきアリーナに責任を感じるとは思えない。やっぱり川崎市長に責任を感じてもらった方が良いし、そうなれば当然川崎と名前をつけた方がチームは支援を受けやすくなる。そういう単純な話なんです。一般的に何かを言えばそれが良いように聞こえるかもしれないけど、実際は機能しない、そんなものは。と、言うのが僕の意見です。
境田 正樹氏:囲み取材
統一リーグ発足を逆算すれば、4月1日に新法人を作って、4〜5月の2ヶ月間をみんなでがんばっていく。
チーム登録に関しての締切はギリギリで5月末であり、もう少し前倒しになるかと思いますが、これから考えます。
ー バウマン氏と連絡を取ってるとのことだったが?
FIBAのバウマン事務総長とは直接連絡を取り合っています。不意打ちを食らうのが恐いので、そこは密に連絡を取らないといけません。現状について報告しており、先日の両リーグの代表を全て集めて川淵さんと意見交換会をしたことや、新リーグの法人を4月1日に作ることなど、随時報告すれば向こうも非常によくがんばっているなと評価してもらっています。
今後、今日の話し合いで出たことについても聞いていく。
ー 例えば、トントン拍子で話が進めば、制裁解除が前倒しになることはあるのか?
FIBAの総会が6月に開催されるので、その時になってしまいます。とはいえ、なかなか大変なことであり、いろんなチームが抵抗を示していることもあり、丁寧にやらなければいけません。
大神 雄子選手:囲み取材
ー みんなの前で意見を言えたことの感触は?
今までは限定の中で1対1で話したり、自分が思ってることがエゴとして捉えられてしまうこともあったかと思います。今日、こうして皆さんの前で話すことができたことは、自分自身としても責任を持って準備して来たことなので、しっかり話せたと思います。もう少し(言いたいことは)あったのですが…。
ー そのもう少しの部分とは?
一つは帰化選手の問題。強化や盛り上げるという部分では、矛盾しているのかなと思う点です。帰化選手の問題に関して、少しは緩和されてきたものの、5年教育を受けていれば各チーム2人まで認められるのであれば、なんで外国人枠を入れないのか、という疑問があり、聞いてみたいと思っています。元々外国人を廃止した理由が、日本人のビッグマンの強化につながらないと10数年前に廃止したことを知ってる身から言わせれば、どうして日本の国籍を持っていない選手が2人までOKなのに、外国人枠を入れないのか。どちらかと言えば、リーグを盛り上げるとか、渡嘉敷に対する強化を考えれば、そっちが先に来るべきではないかと思います。現に韓国は、プロリーグだからすんなり行く部分はあるかもしれませんが、リーグが始まる1ヶ月〜1ヶ月半前にリーグ自体が6人の外国人選手をピックアップし、それをドラフト制に簡単にできている。なのになぜ、日本はここまで時間がかかるのかは、リーグのガバナンスなのか、協会のガバナンスなのか、分かりませんがそういう部分も私自身は感じています。渡嘉敷も言ってましたし、内海さんも仰ってましたが、日本代表が戦う相手は世界なので、もう少し海外の選手とぶつかる部分や取り組む姿勢など、良い意味でも、弱点を知る意味でも、一緒に生活することが大事ではないかと、私は昨年の中国リーグで実感しました。
ー 外国人プロ選手が来れば、その意識など学ぶことは多いということか?
多いと思いますね。逆に言えば、良い意味でも悪い意味もあると思います。この選手はこんなにすごいと言われたのに、こんなところがあったのかと思えば、こんな選手には負けられないという気持ちが生まれると思います。自分はこんなに努力しているのに、この選手は実はこうだったというのも実際に一緒に生活することで感じられることですので、そういう気持ちの部分でプラスαになる部分と、コンチクショーと思う部分が、中国リーグで一緒に生活してみて感じることは多々ありました。日本のリーグの選手たちにも同じように感じてもらえれば、もう少しプライドを持って日本代表として戦える一つの武器になるのではないかと思っていました。
ー 男子の問題だったが、女子も知らなすぎたとこれまで言っていたが、このような機会があったことで選手全体が考えるよいきっかけになると思うが周りの選手の反応は?
実は今回の意見交換も私だけで良いのでは無いかという話があがっていました。そこは直談判して、こういう時には選手がいなければダメだ、と言いました。川淵さんと話をするというよりは、川淵さんの話を聞いて選手が実際に感じること、選手の話していることを選手が聞いて気付かされること、それが2人になり、3人になり…5人と増えて行くチームになるためにも、やっぱり選手がいなければダメなんじゃないですか、というのを強く主張させてもらいました。リーグ中で忙しいというのはすごく分かってはいますが、監督会、部長会、リーグの代表の方々に理解してもらって、ここまで選手が集まったという部分は高橋本部長(日本代表強化委員/JX-ENEOS)はじめ、皆さんに感謝しています。選手の中には、あまり詳しく知らないという意見が多数あったというのはそれが今の現実だと思います。それがきっかけになれば良いと思っているので、すごく良い会だったと思います。
ー 現時点で所属が協会となっているが、不安などはあるか?
もちろん振り返ってみれば、エゴにはなってしまいますが、競技登録の問題も実際に海外でやると言っていても、実際にプレイするチームが無ければ母国でやるという選択肢がどこかで最終判断としてあった方が良いのかなという部分はあります。自分の最後の願いと考えれば、もしかしたら今は今週末のリーグに向けて練習していたかもしれないと正直考えるところもあります。
ー 登録締切の問題で、今シーズンは国内でプレイできない状況という認識で良いか?
そうですね。自分も海外でプレイすると言い切っていたこともありましたし、ちょうど中国リーグのアジア枠撤廃が発表されたのが7月中旬ぐらいで、5月末に登録が締め切られており、自分は中国リーグでやるつもりでいた矢先にリーグから切られてしまい、方向性が見失ってしまったというのはあります。
ー 最後に質問されていましたが、川淵Cの答えはどうだったか?
男子の強化やリーグ問題がFIBAから挙げられましたが、女子の部分でもU-16〜19世代は確かに上位を占めているものの、それがトップに行った時に自分たちは世界選手権でどうだったかということ。下からつながっていくはずなのに、なかなか強化が進んでいないのは、女子にも言えることだと素直に感じました。その中でも、ビッグマンの強化などを女子の中ではやってるとはいえ、強化方針といった部分でも考える必要があります。昨年、中国リーグに行って感じたのは、アメリカ人のコーチ、ストレングスコートやスキルコーチをたくさん入れてきています。日本はと言えば、まだ日本の中だけであり、コーチにとっては直接的に感じていることも、選手にとっては間接的にしか感じない。アメリカのコーチから直接感じることと、海外のリーグに挑戦することは、実は同じことではないかと思います。強化が一つのキー。中国はアメリカ人コーチをガンガン入れいている実態があります。
ー 海外でプレイしやすくするためには、登録日を後ろに動かした方が良いということか?
提案とすればそこが一つあります。WNBAのトレーニングキャンプも前日ですし、実際に川淵さんが仰ってたように、2回あるのも良いと思います。その中でフリーエージェントで行ける部分と、もちろん雇用形態も含めると契約社員とプロ、それに社員もいるので本当に難しい部分だと思います。そこをリーグのガバナンスを発揮してもらって解決していかないと、11月に開幕するのに5月締切ではやりきれない。選手がオファーをもらった時にレンタル移籍でも良いのではないかなど、サッカーのようなもう少し柔軟性を持って取り入れられないかなと思います。自分はその部分でのプロではないから分からないですが、発想としてはいろんな競技を見れば、いろんなルールがあるので、それもありなのではないかと思います。登録期限を後ろ倒しにするか、2回にするかなど、選択肢のひとつとしてあって欲しいです。5月末までに登録し、その間に移籍までしなければいけないとなると、選手が逆に守られていない部分が多少強いのではないかと思います。
ー 男子のリーグ問題でタスクフォースが発動したが、これに付随して女子リーグも観客が増えるきっかけにつなげることも大切では?
今の中ではなかなかプロになるのは難しいと川淵さんも仰ってましたが、現に羽田と新潟はプロに近い。大本となる企業があるとはいえ、スポンサーを集めてやっていく部分では今後のFIBA世界選手権アジア予選がホーム&アウェイになるように、リーグ戦からホーム&アウェイ感を増やして選手がより地域密着できるような環境を作っても良いと感じています。
ー 世界のリーグを見ているわけだが、他国での女子の盛り上がりは実際はどうなのか?
世界的な認知度も、人気度も、どの競技を見ても男子の方が上回っていると思います。ただ、競技人口という面ではバスケットは1位、2位を争うスポーツなので、その中でもダイアナ(・トーラジ)などスーパースターがいたり、コネティカット大学の試合は1万人が入ったりする部分はあります。もう少し、日本のキャパは広げなければいけないのではないかというのも、実際に行って感じてもらいたいです。
渡嘉敷 来夢選手:囲み取材
ー 川淵さんに伝えることを何か用意していたか?
とくにこれを伝えたいということよりも、自分が思っているオリンピックに出たい、日本のバスケットをもっと盛り上げたい、という思いだけは絶対に伝えたかったです。でも、それは日々思っていることでもあるので、自然に出たことでもあります。ただ、1発目に「(意見を言って)良いぞ、渡嘉敷」と言われた時は、ちょっとビックリして「オリンピックに出たい」としか言えませんでしたが、その後にもう一度回って来たときにしっかりと盛り上げたいことを伝えられて良かったです。
ー JX-ENEOSの代表として来ている立場とも考えられるが、チームメイトから何か託されたことはあったか?
具体的にこれを言ってきて欲しいという話はなかったですが、ただやっぱり、自分が思ってることをしっかり伝えてきな、と言われていました。自分が思ってることは、他の選手も思ってることだと思っていますし、バスケットをやってる以上、一番目指すべきところはオリンピックだと思っています。
ー 海外挑戦の意思が分かったわけですが、今後どんなビジョンで海外へ行くかが浮かんでいるのか?
まず今シーズンしっかり戦うことが一番の目標ですが、そのシーズンが終わった時に次の夢である海外挑戦へ向けて準備ができればよいと思っています。たくさんカメラがある前なので、海外に挑戦したいという意思を持っていることを、しっかりと言っておこうと思いました。
ー この機会に他に言いたいことがあれば。
JX-ENEOSサンフラワーズの渡嘉敷です。やっぱりバスケットを知らない人が多いとは思いますが、一回会場に見に来てもらえれば、本当にハマるスポーツだと思うので、たくさん観に来てください。そして、皆さんとともに日本のバスケットを盛り上げて行ければと思っています。
ー オリンピック予選に向けて待ってることになるが、渡嘉敷選手自身はどうしていきたいか?
1日1日の練習をしっかりこなすことが一番です。いつオリンピック予選に出られるよ、と言われても良いように、待ってました、というくらい準備ができたら良いと思っています。
ー 男子と練習した方が良いと川淵Cから提案があったが、それに対しては?
おもしろそうだな、と思いました。高さ対策の練習にもなりますし、体の強さも日本と海外の選手では全然違うので、自分にとってはすごい練習になると想像しただけで楽しくなりました。
ー 後輩のヒル理奈選手(LSU)がアメリカ(NCAA DIV1)でプレイしているが、何か思うことはあるか?
アメリカでプレイしていることは自分にとっても刺激になりますし、本人とも少し話したことがありますが、いつかアメリカの地で同じコートに立てたら、桜花学園の恩師である井上先生への感謝の気持ちになるのではないかというのは考えたりしています。なので、向こうはアメリカのWNBAへそのままプレイし、自分も挑戦できたらな、と考える部分でもあります。
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