文・松原 貴実 写真・安井 麻実/吉田 宗彦
10月9日、NBL 2015-2016シーズンが開幕した。ここから約7ヶ月の長いレギュラーシーズンが始まり、その先にあるプレーオフ、さらにはNBL最後の王者を目指して12チームが熱い闘いを繰り広げる。
長いリハビリ生活を経てコートに帰ってきた篠山竜青(東芝ブレイブサンダース神奈川)、新天地となる千葉ジェッツで活躍が期待される岡田優介と富樫勇樹、新たな気持ちでコートに立つ3人に、それぞれシーズンに懸ける今の思いを聞いた。
■プレーできる喜びを感じながら全力を尽くす
(東芝ブレイブサンダース神奈川・篠山竜青)
「いよいよ開幕ということで戦う僕たちも観客の皆さんもわくわくするものがあったと思いますが、今日、1番気持ちが高揚していたのは自分だったような気がします。たくさんのお客さんの前でプレーできることがうれしかった。ものすごく楽しかったです」
試合後、上気したままの顔でそう振り返ったのは、東芝神奈川のPG(ポイントガード)篠山竜青だ。
「10ヶ月ぶりにようやく立てた公式戦のコートでしたから」
篠山が左脛骨骨折の大ケガを負ったのは昨年12月23日の対リンク栃木ブレックス戦でのこと。残りのシーズン出場は絶望的となり、キャプテンでありながら戦線離脱を余儀なくされた。
「NBLのサイトに登録抹消選手として自分の名前が載ったとき、なんかズーンと胸にこたえるものがありました。“登録抹消”という文字が予想以上にショックでした」
だが、落ち込んでいては何も始まらない。
「北(HC)さんからは、試合に出られなくてもキャプテンとしてできることをやってほしいと言われましたし、2月、3月ぐらいからは午前中にリハビリをして、午後はチーム練習を見て、練習後はまたリハビリをするという日々を過ごしました。自分だけがずっと体育館にいるような生活でしたね。シーズンが終わって、みんながオフになった期間もリハビリを続け、新シーズンに向けてチーム練習が始まる7月にやっとみんなと合流することができました。ほんとに、ほんとに長かったです」
この日の試合は最大21点あったリードを4Qに逆転される展開となったが、3点ビハインドの残り2分、篠山のパスを受けたブライアン・ブッチがシュートを決めて1点差、さらに1分半に篠山のジャンプシュートで70-69と再逆転。結局これが決勝点となり、東芝神奈川は開幕第1戦を勝利で飾った。
「後半の戦いには課題が多く残りましたが、とにかく勝ててよかった。自分も最後まで集中力を切らさずに戦えたことはよかったと思います」
昨年に引き続きキャプテンを任されたチームをコートの上で牽引できる喜び。
「頑張ります。ブランクがあったからパフォーマンスが落ちたと言われないよう、逆に、あの10ヶ月があったから成長したと言われるよう、全力でプレーしていきます」
■自分が選んだ道で最高のパフォーマンスを目指す
(千葉ジェッツ・富樫勇樹)
アイシンシーホース三河との対戦となった千葉ジェッツは船橋アリーナで迎えたホーム開幕戦で、4813人(第1戦)、4415人(第2戦)の観客を集めた。運営サイドの働きもさることながら、岡田優介、富樫勇樹という新加入選手の存在がファンの興味をそそったことも確かだろう。
TKbjリーグ秋田ノーザンハピネッツを経て、テキサス・レジェンズのメンバーとしてNBAディベロップメントリーグ(Dリーグ)でプレーした富樫は、昨年もっとも注目を集めた選手。今季イタリア・セリエAディナモ・バスケット・サッサリとプレシーズン契約を交わしたが、その後、外国人選手枠の問題などから正式契約には至らず、帰国後、千葉ジェッツでプレーすることを選択した。
「チームに合流したのは2週間前、練習はまだ4、5回しかしていません。でも、こういう状況は(開幕してから参加した)Dリーグでも経験しているし、あまり気にしていません。あとは結果を出して自分の存在をアピールしていくだけです」
第1戦での出番は短かったが、2戦目は2Q7分にコートに出ると17分のプレータイムを得て、流れを引き寄せるアップテンポのバスケットを披露した。「今日の富樫はとても良い仕事をしてくれた」と評価したジェリコ(パブリセヴィッチ)HCは「彼はチームのシステムを理解していくことでさらに頼もしい存在になると思う」と期待を寄せる。
「自分の持ち味はスピードなので、そこを求められていることはわかっています。英語が話せることも武器の1つですから、外国人選手とも積極的にコミュニケーションをとっていきたいですね」
今後は信頼されるPGとしてプレータイムを増やしてしていくことが目標。
「うちがまだ完成度が低いチームだというのはみんなわかっています。でも、大事なのは長いシーズンの中でどう成長していくかということ。レギュラーシーズン1位になることより、プレーオフに出たとき、いかに完成したチームになっているかが重要だと思います。そのためにもチームの成長に貢献できるよう頑張っていきます」
■自分がトッププレーヤーであることを証明するシーズン
(千葉ジェッツ・岡田優介)
つくばロボッツのユニフォームを着て開幕を迎えた昨シーズン、そこからわずか2ヶ月後に自由契約の道を選び、数ヶ月のブランクを経た翌年2月に広島ドラゴンフライズに入団…岡田優介にとって昨季はまさに怒涛の1年だった。
「確かに昨シーズンはいろんなことが次々に起こって、バスケットに集中できなかった時期もありました。そういう意味ではしっかり準備して開幕を迎えられたことはうれしいし、その分このシーズンに懸ける思いは強いです」
千葉ジェッツの現在地については「まだまだ未完成の部分が多いですね。新しいヘッドコーチを迎え、チームのシステムも大きく変わったと思うので、新加入の僕や富樫も含めて全員が新たなバスケットを目指していく感じでしょうか。荒尾(岳)も(小野)龍猛もアジア選手権から帰ってきたばかりですし、本当のチームつくりはこれからです。戦いながら強くなっていくチームでありたいと思います」
その中で自分の役割はまだ手探りの段階だと言うが、「少なくともヘッドコーチには僕の“経験値”を求められていると思うので、プレーの選択、判断力などは自分が貢献すべきところだと考えています」
残念ながら開幕2連戦は黒星スタートとなったが、2戦目は32分近く出場し、チームハイとなる19得点をマーク、シューターとしての存在感を示した。
「ただシュートを入れるだけではなく、どこで入れるか。同じことがディフェンスにも言えますが、相手が嫌がる場面で、相手が嫌がるプレーをする。このシーズンを通して自分がまだトップでプレーできることを証明したいと思います」
コンディション作りは万全。
「このシーズンを悔いなく戦いたい。その準備はできています」