今シーズンより下部リーグJBL2からNBLへ主戦場を移した選手たちの心境に迫った後編。
話を伺ったのは、悪夢の23連敗を経験した兵庫ストークス#9谷 直樹。4月6日、ホームで熊本ヴォルターズに勝利を挙げ、ようやく連敗を抜け出した兵庫。続けて、同じくJBL2から上がって来たライバルでもあるつくばロボッツを2連勝で下し、現在3連勝中。
「先週、熊本戦に勝てたことでだいぶ精神的にも落ち着き、これまでとは違う気持ちで試合に臨むことはできました。その流れを今日の試合に生かせたので良かったです」
初戦を勝利した4月10日(木)のつくば戦で逆転勝利した後、安堵したコメントから谷へのインタビューはスタートした。
NBLは大きなチャンス
兵庫ストークスは発足当初からプロチームとして、トップリーグを目指していた。ゆえに、NBL参戦も自然の流れではある。しかし、ほぼJBL2の時と変わらぬ戦力のままであり、逆にヘッドコーチが変わって迎えてしまったことに戸惑いは無かったのだろうか?
「シーズン前から厳しい戦いになることは分かっていました。でも、僕たちとしては大きなチャンスですし、バスケット選手としても良い機会を与えてもらったので、『やってやるぞ』という気持ちの方が強かったです」
しかしながら蓋を開けてみれば、前述したようになかなか勝てない暗闇に突き落とされた。長いトンネルから抜け出した瞬間は、「うれしいというよりも、ホッとした方が強かったです」と言う。さらに勝てなかった日々は、「メンタルはヤバかったです」と、今では笑顔を見せてくれた。
「負け続ける中でも腐らずに、チームとしてもいろいろと話し合いを続けて来ました。何を変えたら良いのかなど話し合ったことで、チームとして成長できた時でもありました。今考えれば良かったのかなとも思っています。ん?良かったことは無いですね。今後に生かして行きたいです」
差を肌で感じた前半だったが、負け続けていても成長を実感
旧JBL勢を相手に勝てない状況ではあるが、谷自身は成長を感じられているだろうか?
「JBL2とJBLのチームではすごい差があるというのは、今シーズン前半戦のうちに肌で感じていました。しかし後半に入ると、そこは慣れて来たという感じはあります。スクリーンや1on1の場面で対応できるようになってきた点は、成長しているのかなと思います。現時点で旧JBLチームには勝てていませんが、接戦まで持ち込む試合も出て来たというのは、チームとしても少しずつは良くなっているのだと思います。でも、それを持続できないのがうちの弱さでもあります」
日立サンロッカーズに1勝を挙げたが、それ以外はパナソニックの流れを汲む和歌山トライアンズも含めて勝てていない。しかし、同じウェスタンカンファレンスの上位全3チームに対し、一桁点差で終えた試合が5度あることを自信へとつなげたい。
- 9月29日(日)兵庫 76-79 三菱電機名古屋
- 10月19日(土)兵庫 69-72 アイシン三河
- 11月2日(土)兵庫 67-75 三菱電機名古屋
- 11月17日(日)兵庫 75-79 和歌山
- 1月19日(日)兵庫 85-91 和歌山
環境が変わり、新たに芽生えた高き目標
JBL2の時とは違い、日本代表選手とも対戦する機会を得た今シーズン。川西緑台高等学校から甲南大学へ進み、兵庫県一筋でバスケをして来た。しかし、全国には縁遠かった谷にとってNBLは眩しすぎる舞台でもあった。
「最初は、今までテレビで観ていた選手が目の前にいるわけです。僕なんか田舎の高校出身なので、『ウワッ、○○選手だ!』という気持ちでやってしまっていた部分がありました。もちろん今はそういった気持ちは無く、相手が日本代表であれば、『オレが止めてやる』という気持ちで向かって行けるようになりました。少しずつですが、自分も日本代表になれるように、NBLでもっともっと成長したいです」
サラッと口から出た日本代表への目標にうれしさを覚える。しかし、「僕はそもそもプロになるつもりも無かったです」と谷は続けた。
「大学4年の時は就活してましたし、内定ももらってました。入社の4日前に断ってしまったんですけどね。自分が卒業するタイミングに、地元の兵庫にプロチームができることを知り、家族の応援もあって、やりたいという気持ちが強くなってプロ入りしました」
偶然なのか、必然なのか。はたまた運命とも言うべきだろうか。
たまたま人生の岐路となる大学卒業時に兵庫ストークスが誕生。そして今、トップリーグの舞台に駆け上がってきた。さらに、学生時代は思い描くことも無かった日本代表への夢を明確な目標へと変え始めている。
「日本代表になりたいという気持ちが芽生え始めました。でも、そんなことを思えるようになったのは本当に最近のこと。まだまだ手に届く位置にあるかどうかは分かりませんが、選手としてやる以上は目指す場所です」
そう言い終えた後、「ヤベッ、ちょっと大きいことを言い過ぎちゃったかな」と照れ笑いを見せた。
しかし、プロ選手として、NBLでもbjリーグでも頂点を目指す舞台に立つ選手である以上、抱いて当然の夢であり目標だ。
刺激的な毎日であり、来シーズンもここでプレイしたい
兵庫から約600kmも離れたつくばカピオアリーナまで、ファンがやって来てゴール裏から声援を送っていたつくば戦。
「アウェイなのにホームのような声援を送ってくれて、人数が少ないのにあれだけ大きな声をコートに届けてくれたのは僕らにとってはすごく大きな力になりました」
そしてつかんだつくば戦での2連勝。連敗から抜け出した熊本戦では、ファンは涙したとも聞く。そのサポートも功を奏し、JBL2からのライバル対決は4勝2敗で兵庫に軍配が上がった。
残すは4試合。プレイオフ進出を逃したが、その中でも最高位となる4位、そして来シーズンへつながる経験と自信をつかみとる期間としたい。そしてもう一つ、僅差の試合ができた手応えを糧に、プレイオフ進出チームを食う戦いにも期待したい。
「NBLに来て、毎日良い刺激をもらっていますし、今まで経験したこともないような舞台でプレイをさせてもらっています。プレイオフへ行くことはできませんが、だからと言って腐らずに、来シーズンもNBLでプレイしたいという気持ちが強いので、残る期間も無駄にしたくないと思っています。1日1日を大切にしたいです」
- 4月19日(土)18:00 兵庫 vs 和歌山@神戸市立中央体育館
- 4月20日(日)14:00 兵庫 vs 和歌山@神戸市立中央体育館
- 4月26日(土)14:00 三菱電機名古屋 vs 兵庫@愛知県体育館
- 4月27日(日)14:00 三菱電機名古屋 vs 兵庫@愛知県体育館
泉 誠一