オールジャパン男子決勝が行われた1月13日(月・祝)。NBLは、来シーズンへ向けたルール改定を発表した。
来シーズンより変更される大きなルールは3つ!
- リーグエントリー(登録)15名、ゲームエントリー(試合出場)12名
【今シーズン】リーグエントリー15名全てベンチ入り可能→試合出場12名
【来シーズン】リーグエントリー15名だがベンチ入りできるゲームエントリーは12名に制限
※今シーズンは、出場12名は事後報告(試合前に12名を申請せず采配の結果として12名出場を事後に報告すること)も認められたが、来シーズンは事前申請方式のみ採用。 - 外国人登録数を3人に増加。2P、4Pをオンザコート2
【今シーズン】外国籍選手登録数2名+帰化選手1名
1P・3P=外国籍選手2名まで、2P・4P・OT=同1名のみ(いずれも帰化選手は含まない)
【来シーズン】外国籍選手登録数3名(帰化選手を登録する場合はこの制限数に含む。帰化選手登録は1名まで)
1P・3P=外国籍選手1名+帰化選手1名、2P・4P・OT=外国籍選手(帰化選手含む)2名まで
※P=ピリオド、OT=延長 - 帰化選手の新定義
【今シーズン】帰化申請が許可された選手のみ1名まで登録可能
【来シーズン】帰化申請が許可された選手または帰化申請中の選手も認め、1名まで登録可能
今シーズンがまだ半分しか消化していない時期にも関わらず、早くも発表されたルール改定の意図について、NBL山谷 拓志COO(最高執行責任者)にお時間をいただきお話を伺った。
「当初から記者会見等でもお話をしてきましたように、NBLは新リーグとして始まったばかりであり将来のPリーグに向けた暫定的な位置づけのリーグです。臨機応変に新しい試みにチャレンジしたり、チームが入場者数を増やすため、強化するためにプラスとなることは、どんどん取り入れていこうというスタンスを持ってスタートしました」
トライ&エラーを繰り返しながら、より良いリーグへ変貌させるスタンスは納得であり、歓迎する。しかしながらリーグ主導でのルール改定は、チームや選手の戸惑いを生むのではないかという疑問も併せ持つ。
「昨年8月頃から全チームを対象にしたアンケートを取ったり、個別チームから意見や要望をもらうなどしながら、事務局でルール改定の目的や意味を踏まえて案を練ってきました。それを踏まえて毎月行われるNBL実行委員会(NBL理事会で意思決定するために各チームの意見を集約する場)でも約半年間かけて議論を重ねてきましたので、リーグによる単なる思いつきでのルール改定ではありません。各チームとの議論の中で、選手の試合出場機会をもっと確保できるような環境づくりなど様々な意見が挙がりました」
山谷COOはある講演で「リーグにとってチームはファン同様に顧客である」と説明をしていた。つまり、顧客を無視して押しつけるようなルール改定はそもそも考えてはおらず、チームの総意を束ねて遂行するのもまたリーグであり協同組合という見解を示している。
上記に挙げた3つのルール改定もまた、チームの意向を汲みながらも議論を重ねて導き出したひとつの挑戦でしかない。同時に、このルール改定が答えでもない。1シーズン目よりも2シーズン目、さらにその先へと顧客であるチームにとっての最善策を求めること。それはチームの観客となるファンをさらに楽しく、エキサイトさせることにつながっていく。
1.リーグエントリー(登録)15名、ゲームエントリー(試合出場)12名
「すでに今シーズンから12名エントリー案を出していましたが、企業チームにとって社員選手を減らすことができないという意見などがありました。そこで今シーズンはベンチ入り15人、事前申告と事後報告という複雑な12人ロスターとなっています。しかし、選手出場時間の統計を取ってみたところ、リーグエントリー13人以上のチーム(6チーム)においては出場時間が無い(DNP)選手が約8割の試合で固定化してしまっている状況です。また、全チームの試合出場選手数の平均値は10.4人(※いずれもルール改定議論をしていた当時の第7節までのデータ)。国際ルールの12名ということを鑑みても、そのロスター数が好ましいということが証明されるわけです。選手の流動性や戦力均衡という観点から見ても、試合に出られる選手12名を明確にすることが必要だと判断しました。とはいえ、特に社員選手はいきなり契約解除することもできませんので、今シーズンと同じくリーグエントリーは15名、そこからベンチ入り12名の制限を設けました」
2.外国人登録数を3人に増加。2P、4Pをオンザコート2
「今シーズンを見ていても、外国人選手がケガ等で1人欠けると極端に戦力ダウンするチームが実際に出て来ています。ならば、3名の中で2名を使えるオプションにした方が試合の質が保てるのではないかという意見がありました。また、帰化選手がいる場合も外国人登録数3人の枠内に含めることで、さらなる戦力均衡を目指します。また、オンザコート2の状態がベストメンバーであり、試合の決着をつける場面となる4Pこそベストメンバーで戦いたいという意見がありました。今シーズンの主旨として、最終局面は日本人選手が頑張って試合をフィニッシュできるよう4Pにオンザコート1を採用した経緯があります。それも意義があることですが、最後まで接戦となる試合や下位チームの金星を少しでも増やすことを考慮すれば、最終局面をベストメンバーで勝負させるためにピリオド毎のオンザコート数を入れ替えるということも一つの方法です。ただ、どちらが良いという結論は出ておらず、今シーズンは2 P・4 P・OTがオンザコート1でしたので、来シーズンはそのPでオンザコート2を試し、この結果を見てまた議論しながら判断していきます」
3.帰化選手の新定義
「今後の男子日本代表の強化にとって、帰化選手の活用は大きなテーマになってきます。リーグとしては、チームに帰化選手を保有したいという欲求が生まれ、実際に保有しやすい仕組みに改善することを目指したのがこの改定です。そして、リーグに帰化選手が1〜2人しかいない中から日本代表を選ぶよりも、例えば全チームに1人ずついる帰化選手たちを切磋琢磨させながら、最高の1人を選んだ方がおのずと日本代表の力になるはずです。帰化選手の中で日本代表争いが生まれれば、活性化が起きます。そういう意味では全チームが1人ずつ帰化選手を保有できることが理想ですね。そのような観点からWJBL同様に帰化申請が受理された書類があればその時点で帰化選手として認めるようにしました」
今シーズンの数値的検証とチームとの議論を重ねていった結果、さらなる「選手の流動化→競争意識→強化」の活性化を目指すNBL。来シーズンより明確なゲームエントリー12名にすることで、ベンチ入りできなかった3名こそ発憤し、さらなる成長を目指して競争させる状況づくりとなる。
「選手の流動化がリーグとしてのテーマとしてあります。能力ある選手が出場機会を求めて、移籍を促すようなルールづくりが必要です。千葉ジェッツの小野龍猛選手のようにトヨタ東京ではベンチにいた選手が移籍したことでスタッツを伸ばしているケースをもっとつくりたい。その選手の実力を伸ばすとともに、レギュラークラスの選手たちを下から押し上げることでの競争意識を芽生えさせることで、強化にもつながるはずです」
最後に、山谷COOにこのルール改定により、リーグが期待することを伺った。
「選手リクルートにおけるチームの優位性には、資金力以外にもチームの歴史や実績やブランドといったようにすぐには獲得できないものがあります。いまNBLで強豪と言われているチームもトップリーグ参入当初は下位チームだったわけですから。今回の一連の議論の中で検討された施策にはドラフトなどの入口時点での戦力均衡施策もありました。大卒選手のドラフトについては今後Pリーグに向けては必要になってくる制度のひとつでしょう。ルールによってすぐに戦力格差が埋まるわけではありませんが、来シーズンは新規参入のチームもあることを踏まえると、選手の流動性が高まり移籍市場が活性化されることに期待しています。チーム強化においては根本的には各チームの経営努力と創意工夫が必要ですが、このようなルール整備によりチーム強化における様々な選択肢が増えたり、選手の意識や行動が変わったりすることで少しでも質の高いそして面白い試合をファンの皆様に提供できるよう前進してゆきたいと思います」
解説:NBL山谷 拓志COO(最高執行責任者)
文・泉 誠一