それは突然、1本の電話から始まった
来シーズンからNBDLに参戦するアースフレンズ東京Zのヘッドコーチに、小野秀二氏が就任する。独自のコンセプトでバスケに取り組み、新たな広がりを見せるアースフレンズ。山野勝行代表の行動力は折り紙つきで、まったく接点がなかった(!?)バスケ界のビッグネームに突然のアプローチし、時間をかけて就任にこぎ付けた。今回は1年の充電期間を経て、再び現場に戻る小野新HCに心境をお聞きした。
──やはり、突然の電話から始まった就任だったのでしょうか?
小野HC:まさに突然です(笑)山野代表から連絡をいただきましたが、日本代表のこともあって「即答はできません」とお答えしました。状況を見ながら話を進めましょうということで、(実際にチームのことを知らなかったので)練習を見に行ったり、活動の様子を伺ったりしていました。社会人向けスクールでは和気あいあいの中、真剣に練習に取り組んでいて「なるほど、こういう雰囲気で活動しているのか」と理解しました。
──それはいつ頃のことでしょうか?
小野HC:昨年の11月ぐらいでしょうか?(※ここで山野代表がカットイン)
山野代表:初めてお会いしたのは国体の予選のあと。「ヘッドコーチ、どうしようか」と話していて……実は小野さんは、私が初めてトップリーグ(JBL)を観たときにヘッドコーチをされていました。JBLの日立vsアイシンです。
──それまで存在はご存じだったでしょうが、「生で観た」わけですね?
山野代表:そのとき「小野さんは!?」って言ったら、周りのスタッフは“ないないない……ウチでヘッドコーチなんてゼッタイない!”って(笑)そこからですね、いつかチャンスがあったらアプローチしようと思ったんです。たまたまウチの選手(バリバリ)が連絡先を知っていて……。
小野HC:僕がトヨタ時代に地元の中学校で知り合った子がバリバリチームに居た。それがきっかけです。
山野代表:それで連絡を取らせていただき、お会いすることができたんです。
新たなチャレンジ。すべては日本代表のために
──ここでコーチをやろうと決心されましたが、また新たなチャレンジですね?
小野HC:ひとつには山野代表の考え方に共鳴するところがありました。僕が指導者になってからは、ソウルオリンピック(1988年)出場目指して戦うチームを目標にし、そして日本が世界へ出て行くためのバスケット、それを追求してきたつもりです。その気持ちは山野代表の考え方にもつながっています。カテゴリーはNBDLですが、このチームで日本人選手を鍛えながら、いずれは日本代表に入れるような選手を育てたい、そういう思いがあります。もうひとつは、プロとしてゼロからスタートすることです。選手もフロントも“プロ”。まったくの白紙状態からなのでエネルギーが必要ですが、やりがいの大きいことが楽しみなんです。
──今の段階でこんなチームにしたい、というイメージはありますか?
小野HC:まだまだこれからですが、今までの僕のスタイルが変わるわけではありません。まずはディフェンスから。ディフェンスをきちっとつくって、より速いチームを目指したい。
──1シーズン、現場を離れたわけですが「充電期間」はいかがでしたか?
小野HC:指導者になってから26年になりますが、このような過ごし方ができたのは初めてです。一つはTV解説です。FIBA ASIAやFIBA EUROPE、FIBA AMERICAなど、世界のバスケットを観て理解が深まりました。NBAもそうです。二つ目はいろいろな現場(クリニックや国体チームの指導など)を経験し今までとは異なるカテゴリーにおいて、たくさんの方の話を聞けたことは収穫でした。三つ目は僕のこれまでのバスケットボール人生においてお世話になった方々に久々にお会いし、話をする機会を得たことは、自分自身を見つめ直すきっかけとなり、とても感謝しています。
──次はアースフレンズ東京Zを強くして、トップリーグのチームや選手を刺激してください。
小野HC:コート上だけでなく、地域とのふれあいを大事にしながら、プロとしてチームをつくっていく。その経験をまた自分の糧にしようと思っています。NBDLでは強いチームと対戦しなければなりません。プロとして結果を出しながら、さらに広い視野でバスケットに関わっていけるのが楽しみです。一人でも多くの方が会場に足を運び、応援してもらえるチームをつくりたいと思います。
そして、アシスタントコーチに決まったのがTAKU(斎藤 卓)。どんなチームが誕生するのか、とても楽しみだ。
「皆さん、こんにちは。この度、アースフレンズ東京Zのアシスタントコーチに就任した斎藤 卓です。昨年度からクラブチームであるアースフレンズ『バリバリチーム』のコーチとして指揮を執らせてもらいましたが、また今年も皆さんと共に、このチームで戦えることを嬉しく思っています。
アースフレンズが掲げている2つの大きな目的、
○日本代表が世界で勝利することに貢献する
○世界に通用する日本人選手を輩出する
という2点に、自分の今の立場から何ができるのかを常に考え、少しでも自分やチーム、さらには日本のバスケットボール界が成長していけるように頑張りたいと考えています。チームの母体となった『バリバリチーム』を長い間支えてきてくれた選手やスタッフには改めて大きな感謝をここで伝えたいと思いますし、今後も『チームを支えてくれる地域やファンやスタッフの人たちがいて、初めて僕らがいるんだ』ということを強く胸に留めて頑張っていきたいと思います」
指導歴:アースフレンズ「バリバリチーム」(2013〜2014年)ヘッドコーチ
選手歴:都立駒場高校→東海大学→横浜ギガキャッツ(横浜ギガスピリッツ)→TEAM-S
もっと知りたい人はこちらをどうぞ。“バスケットボール教科書”TAKU(TEAM-S)引退
なお、2名の選手の契約締結、新ロゴーマークも発表された。
泉 秀岳(いずみ しゅうがく)
1991年11月27日生まれ、埼玉県出身
190㎝/90㎏/F
狭山市立東中学校→西武学園文理高校→順天堂大学
佐々木 隼(ささき はやと)
1989年9月28日生まれ。東京都出身
191cm/93㎏/F
練馬区立三原台中学校→東海大学菅生高校→東海大学→葵企業(2012年4月〜2014年3月)
山野代表のフィロソフィーの下、4年間の活動を続けてきたアースフレンズが、さらに「上」を見てつくり上げるのがプロチーム“アースフレンズ東京Z”であり、小野HCを招聘した理由だ。NBDLは面白い! プロ、実業団、クラブチームなどが混在しながら、参加するチームの意思を尊重するリーグ運営がなされている。そんなNBDLにあって、新たな“旋風”を巻き起こすアースフレンズ東京Z。来シーズンはNBDLの観戦予定をしっかり組んでおこう!
文・羽上田 昌彦(ハジョウダ マサヒコ)
スポーツ好きの編集屋。バスケ専門誌、JOC機関紙などの編 集に携 わった他、さまざまなジャンルの書籍・雑誌の編集を担当。この頃は「バスケを一歩前へ……」と、うわ言のようにつぶやきながら現場で取材を重ねている。 “みんなでバスケを応援しよう!”を合言葉に、バスケの楽しさ、面白さを伝えようと奮闘中。