3月23日(日)快晴。富士山を車窓に眺めながら、向かったのは「ヒマラヤアリーナ」(岐阜県岐阜市、NBDLファイナルにはピッタリ!?) 対戦するのは豊田通商ファイティングイーグルス名古屋(レギュラーシーズン30勝2敗)と、東京エクセレンス(同29勝3敗)。今シーズン、ダントツの戦績を残した両チームの対戦はまさに“頂上決戦”と呼ぶにふさわしい。
JBL2を引き継ぎ、新たにスタートしたNBDLは参加9チームが4回戦総当たりのレギュラーシーズンを戦い、上位4チームがプレイオフ(ノックダウン方式のトーナメント戦)に進出する。「一発勝負」のプレイオフは見応え十分の展開になった。
ラストゲーム、TGI・Dライズが3位
ファイナルに先立って行われた3位決定戦は、アイシン・エィ・ダブリュ アレイオンズ安城(レギュラーシーズン3位:20勝12敗)とDライズ(同4位:17勝15敗)の対戦。今シーズン限りでバスラボ山形ワイヴァンズにNBDLの会員権を譲渡するDライズにとっては、これがラストゲーム。さまざまな思いを秘めてコートに立つ選手たちは、「悔いのないパフォーマンスをしよう」という金澤 篤志HCの激に応えた。
第1Qこそリードを許したが、その後は常に先手を取り、オンザコート2で高さを上手く生かしてリードを広げる。キャプテン#30鳴海 亮、#4細谷 将司が体を張ったプレイでチームを鼓舞すれば、3番にコンバートされた#26上杉 翔が期待通りにアウトサイドからシュートを決める。
最終スコアは79-66。ツアーバスを仕立てて応援に駆けつけたファンの声援にも後押しされ、昨シーズン(JBL2)はプレイオフで連敗し、4位に終わった悔しさを晴らした。
「いろいろ考えることがありましたが、最後に3位という結果が残せて良かったです。この経験を生かし、これからもチャレンジし続けます」(鳴海選手)。
今後のことはまだわからないが、「選手はみんな伸びしろがある。この結果を自信に、ステップアップして欲しい」(金澤HC)。ファンの声援や激励の言葉を心に刻み、それぞれが次のステージを目指していく。
明暗が分かれた第3Qの攻防。東京EXが頂点に
レギュラーシーズンの対戦成績は3勝1敗で豊通名古屋がリード。ただし、「負け越しているけどすべてアウェー。ファイナルはチーム全員“リベンジ”という気持ちが強かった。ファンも同じ気持ち」(東京EX:マイケル・オルソンHC)。それが結果につながった。
序盤はともにミスが少なく、緊迫したゲーム展開。豊通名古屋が#1宮崎 恭行の3Pなどでリードすれば、東京EXは両外国籍選手(#13マーカリ・サンダース、#24ジョー・ヲルフィンガー)がインサイドで得点する。20-19と豊通名古屋がリードして第2Qへ。
第2Qは豊通名古屋が連続10得点、リーグNo.1の得点力(Avg.94.5)を見せつけ主導権を握った。このまま一気に突っ走るかと思われたが、徐々に巻き返しを図る東京EX。フリースローを確実に決めるなど、32-38と何とかしのいで前半を終えた。
流れが一気に変わったのは第3Qだった。連続得点で36-38と追い上げる東京EX。と、ここで痛恨のベンチテクニカルファウルを取られてしまった。反撃に水を差す、かと思われたが逆だった。フリースローは決められたものの、ここからスパートしたのは東京EX。
プレイオフMVPの#32狩野 祐介が大爆発(14得点)すれば、#31石田 剛規もブザービーター(3P)を決めて6得点するなど、62-49と13点差をつけた。
第4Qに入っても流れは東京EX。豊通名古屋はリズムを崩し、いつものオフェンスが見られない。優位に立っていたリバウンドも完全に逆転し、反撃の糸口もつかめない。逆に、火が付いた狩野、石田コンビは後半だけで37得点(狩野22点、石田15点)。終わってみれば93-77と東京EXが見事にリベンジを果たした。
試合後に行われた表彰式でプレイオフMVPに選出されたのは東京EXの狩野選手。この日は33得点と誰もが認めるところ。NBDLのオフィシャルサイトで紹介されているヘッドコーチのコメントや本人のコメントも興味深い。
だだしもう一人、影のMVPとも言うべき立役者がいる。それは#33宮田 諭。随所にベテランらしいゲームメイクを見せ、ハードなマークでコートに倒れ込みながら何度も起き上がって来た。チームの精神的な支柱であり、ここまでチームを引っ張ってきた。東京エクセレンス・辻 秀一GMが掲げるチームづくり、そのフィロソフィーを体現するキープレイヤーだ。試合後のホッとしたような表情が印象的だった。
来シーズンも楽しみなNBDL
今シーズンは新規参入の東京EXが覇権を握ったが、老舗チームもこのまま黙っているはずがない。豊通名古屋、アイシンAWの2チームに加え、豊田合成は外国籍選手の加入、東京海上日動はレンタル移籍の活用などで戦力アップを図っている。
また、バスラボ山形ワイヴァンズとともにアースフレンズ東京Z(黒田電気が会員権を譲渡)の2チームが新規参入する。
JBL2からここしばらく、「老舗vs新規」という構図が続いており、来シーズンも新たな展開が見られるだろう。そして、今回のヒマラヤアリーナのように、地元ファンが応援に駆けつけるという光景も続きそうだ。愛情を注ぎ込めるチームがあればこそ、バスケ熱は盛り上がるもの……そう実感できたNBDLファイナルだった。
文・羽上田 昌彦(ハジョウダ マサヒコ)
スポーツ好きの編集屋。バスケ専門誌、JOC機関紙などの編 集に携 わった他、さまざまなジャンルの書籍・雑誌の編集を担当。この頃は「バスケを一歩前へ……」と、うわ言のようにつぶやきながら現場で取材を重ねている。 “みんなでバスケを応援しよう!”を合言葉に、バスケの楽しさ、面白さを伝えようと奮闘中。