■熱気に包まれたTKbjリーグ
2015年5月24日(日)、TKbjリーグ10シーズン目のFINALSが行われた有明コロシアム(東京都江東区)。昨シーズンの雪辱を期す秋田ノーザンハピネッツ(東地区1位)、4シーズンぶり3度目の優勝を目指す浜松・東三河フェニックス(西地区3位)のブースターにとっては待ちに待った日で1万人以上が詰めかけた。しかも、FINALSは“一発勝負”とあって両チームのブースターのボルテージは上がりっぱなしでコートは熱気に包まれた。
また、この日はJBA(公益財団法人 日本バスケットボール協会)の川淵三郎会長の来場が知らされており、前日(カンファレンス・ファイナル)よりもプレスの数が多い。ハーフタイムに行われた囲み取材では、大いに盛り上がるアリーナの雰囲気に気を良くしたのか、いつも川淵節が飛び出した(一部抜粋)。
川淵:プロフェッショナルとして、エンターテインメントとしての盛り上げ方はさすがに凄いね。こういったものを今後どうしていくのか考えなければならないと思います。(bjリーグの)10年の経験というのは凄いもんだなぁと。
ただ、昨年も観ているので、今年の試合は第2Qまではシュートのミスが多くて得点が入らないなという印象。ちゃんと練習しているのかな、シュート練習ができているのかな!? これから第3Q、第4Qになって3Pシュートもどんどん決まっていくと思うんだけど、第2Qが終わるまでに3Pシュートは2本しか決まっていないから。試合の流れとしてはちょっと期待外れなんだけど、全体の盛り上がりとしては凄いし、今日も1万人は入っていると思うけど、凄いなと感心しています。
後半は得点シーンをもっと観たいと思うし、今日は決勝戦ということで選手たちが緊張しているのかも知れないけど、プロフェッショナルとして少しもの足りないという印象かな。
──秋田ブースターの印象は? 秋田はアリーナの件で知事の発言がありましたが?
川淵:それはもう凄い、プロとして10年やって来た経験があって、応援の中にも生きているなということ。応援(盛り上がり)に関しては言うことはありません。今日、これだけの応援が秋田から来ているわけで。それを見れば秋田のファンが地元でチームを応援したくなるのは当たり前。クラブ(チーム)の成長はアリーナの大きさで決まるんです。それこそ日本一のクラブにしようというなら、アリーナがなければ成長しない。今日だってこれだけのお客さんが来ているのなら、3,000人で十分と思う方がおかしいんじゃないなか。そう思うでしょ!? 器の大きさがクラブの規模を決めるので、3,000人でいいと思えばそれまでのクラブになる。皆さんはそうではないでしょう。5,000人や6,000人、将来的には1万人のアリーナをいっぱいにできないわけはない。今日のファンの盛り上がりをみたら意を強くしましたよ。
この試合、浜松・東三河は秋田のシューター#5田口選手を徹底的にマークするなど、いつも以上にディフェンスで勝負。それが奏功し、前半は秋田を25点(田口選手は0点)に抑え込んだ。川淵会長の目には「シュートが入らない」と映ったかも知れない。が、囲んだ記者から「強豪同士で決勝戦となると、かなりディフェンスが強くなりますから」と説明を受け、「お互い、守備が良いんだね」と半分!?納得。後半は川淵会長が期待した通りの展開になった。
後半は5本の3Pシュートが勝負どころで決まり、シュートの確率もグンと上がって見応えの攻防が続いた。試合後、川淵会長にコメントを聞くことができなかったのは残念だった。
※試合以外に、FIBAの発表について言及があった。
川淵: FIBAのセントラルボード(中央理事会)のこと(8月初旬日本開催予定)がホームページに出たらしいんですが、内容については正式に聞いていません。6月にFIBAのバウマン事務総長が来日するので、その際によく話を聞いて、問題がなければ日本で開催してもいいと思っています。ただ、資格停止の解除についても8月まで持ち込しかというとそうではなく、6月中旬の日程に変更はないということなので皆さん安心してください。
この結果、当初予定されていた、川淵会長自らがFIBAを訪問する予定はキャンセルされた。6月のタスクフォースの会議が注目される。
──他の理事の方も来場されていますが?
川淵:僕が観に来いって言ったわけではない。集合を掛けたわけではありません。各理事の方も責任を感じて来場し、自分の目で確かめた上で「日本のバスケットの将来を考えよう」と頑張っておられる。三屋さん(裕子/JBA副会長)はNBLの試合も観ているんだけど「この盛り上がりを観たら、これは成功しないわけありませんね」と。
──NBLとbjリーグのファイナルの日程が重なっていますが?
川淵:いかに話し合ってこなかったという証明だな。そういうこと自体が問題なんだから、それらはすべて解決できる。
試合は終盤に浜松・東三河が追い上げる展開になり、残り3秒で71点目のシュートで優勝を決めた(71-69)。
10,000人の盛り上がりと多彩なエンターテイメント……川淵会長のみならず、バスケットファミリーすべてが“この盛り上がりを観たら成功しないわけない”と“意を強くした”のは間違いない。
■トッププレイヤーにシビれたNBL
翌25日(月)、今度はNBL FAINALSの会場、国立代々木競技場第二体育館(東京都渋谷区)に川淵会長の姿があった。トヨタ自動車アルバルク東京(東地区3位)とアイシンシーホース三河(西地区1位)が1勝1敗で迎えた第3戦は、3戦先勝方式のため優勝決定戦とはならない。平日のナイトゲームであり、客足の伸びが気になったが2,104人が応援に駆けつけた。
前日同様、ハーフタイムに囲み取材に応じた川淵会長は、また別の視点からコメントした(一部抜粋)。
川淵:やはり、実力的にはこっちが上だというのが明白で、シュートの精度やプレイのスピード、パスワークの正確さやバリエーションなどはbjリーグとレベルが違うな、というのが率直な感想です。
アリーナの盛り上がりというのは、あっちは1万人でこっちは3,000人弱ということだから、当然、向こうのほうが凄い。だけど、試合の内容としては明らかにこちらの方がレベルは高いので、僕としては嬉しいようなそうでないような複雑な心境ですね。こういったレベル以上のところ(アリーナや観客動員などの面で!?)で、日本のバスケットは発展していかなければなぁと思った次第です。
──目立った選手はいましたか?
川淵:やっぱりアイシン#14、金丸!? 彼はシューターとしてはNo.1だと聞いていたけど、期待に違わず良いプレイをしていたので、彼みたいな選手が……顔も良いんでね(笑)、彼みたいな選手が日本のスポーツファンに知られてしかるべきだな、と。彼をもっと売り込まなければ、というのが率直な感想だな。常に3Pシュートを狙う姿勢だとか、観ていて軽快で、「日本にもこういう選手がいるんだ」と気を強くしました。彼は本当に素晴らしい。多くの人に彼のプレイを観て欲しいと思いますよ。
──代々木第二体育館の規模だとアリーナとしては?
川淵:やっぱり小さいよね。昨日(有明のbjリーグを)観ているからね。これぐらいの規模で日本のバスケットが発展していくとはとても思えない。やはり、これの倍ぐらいのアリーナというのが、日本のバスケット界全体が発展していく一番の基だなと思います。今日はマラソンの有森裕子さん、テコンドーの岡本依子たち一緒に観ていたんだけど、結構、興奮していましたよ。「カッコイイ選手がいますね」って(笑)。初めて観る人がバスケットを興味深く観ることは間違いない。日本のバスケットボールを、バスケットを知らない多くの人に観てもらう必要があると思います。そういう意味ではテレビ中継やスポーツニュースで、今日の金丸選手のような選手を日本中の人に覚えてもらいたいと思います。
──NBLの競技水準を観て、新リーグの1~3部の振り分けに勘案しなければという考えになりましたか?
川淵:でもね、アリーナの規模の大きさや財政力などが、良い選手を雇い入れる基になるので、移籍を積極的に行えるような仕組みをつくれば、あまり(現時点での)戦力のことは心配しなくてもいいと思っています。初めは弱いチームであっても若手が育ったり、移籍が頻繁に行われたりする中で、レギュラーに入れない選手がよそのチームで成長するということもありうる。そういう意味では、今日の試合を観て夢が広がりました。
──今日は平日の夜だからかも知れませんが、空席もややあるような印象ですが?
川淵:企業チームと言われているアイシンとトヨタでしょ。その2チームでこれぐらい熱気があれば、それなりによくやっていると思う。勤め帰りにバスケを観に行くとなれば、そういうのが習慣化するというのであれば水曜日ぐらいに開催すればいいわけで、そういうことがもっと広がっていくと思いますね。
この日、川淵会長お目当てのアイシン三河#14金丸晃輔選手が大爆発! 前日、トヨタ東京#13菊地祥平選手らの厳しいマークに合い、わずか2得点に終わったうっ憤を晴らした。川淵会長が囲み取材に応じたのは前半終了時点だが、すでに3Pを3/4の高確率で決め20得点。トータルでは39得点を叩き出す活躍だった(81-69)。
川淵会長のみならず、この日は観客全員が金丸の凄さに改めて驚かされた。「日本にもこういう選手がいるんだ」と気を強くした川淵会長だが、「他にもこういう選手はいる」ことをファンは知っている。これまで以上にバスケットファミリーが結束し、新たなチャレンジの時がやって来た。“プロ”としての盛り上がり、“プロ”としての実力を融合させた新リーグに期待が膨らむ。
ちなみに、NBL 2014-2015 FINALSは今週末、最終決戦の時を迎える。ぜひ、多くのファンが国立代々木競技場第二体育館に足を運んで欲しい。
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