本日10月27日からタイ・バンコクで「第25回FIBAアジア女子バスケットボール選手権大会(以下、アジア選手権)」が開催される。この大会は来年9月末に開幕する「第17回FIBA女子バスケットボール世界選手権大会」の予選も兼ねていて、上位3位までに入れば世界選手権の出場権を得られる。
大会を目前に控えたヘッドコーチ、選手のコメントを紹介する最終回はキャプテンの大神雄子。2004年のアジア選手権(仙台)以来、常に日本代表の中心としてチームをけん引してきた大神だが、その2004年を最後にアジア選手権のファイナルを経験していない。中国・WCBAへの参戦を決めた今、後顧の憂いなく中国に旅立つためにも、大神はアジア選手権でのファイナル進出、アジア制覇への思いを強めている。
――まずは東アジア競技大会の感想からお願いします。
大神 ディフェンスでは、やられた感のあるチャイニーズ・タイペイ戦でも60点台に抑えているのでそこまでネガティブになる必要はないかなと。でも得点が伸び悩んでいるのが気になります。みんなが最後まで決められた動きをやりきろうという気持ちが強すぎて、途中のスクリーンがかかっていないことがあったんです。だからチャイニーズ・タイペイ戦のときに動きを読まれてしまうと別人のようなチームになってしまう。速攻でもアーリーオフェンスにこだわりすぎて、ディフェンスからのファストブレイクもほとんど出せなかったし…梅嵜(英毅)コーチからもアタックするように言われているんだけど、まだそれが出ていない不安はあります。
――もう少し決められた形にこだわらず、コートに立っている個々の状況判断で攻めるところがあってもいいと。
大神 そうですね、初選出の選手やまだ代表経験の浅いメンバーが多い分、言われたことを忠実にやろうことは大切ですけど、ちょっと形にこだわりすぎていますよね。東アジア競技大会はそういう意味ですごくフラストレーションが溜まる試合だったので、そこは自分たちで崩していかなければいけないと思っています。
――とはいえあと1週間です(取材は10月21日)。どうチームを上げていきますか?
大神 やっぱりディフェンスからファストブレイク! アーリーオフェンスのパターンが多い分、その確認もすごく多いし、最近は相手国のアジャストも入ってきて、いろんな確認練習が多いのですが、ファストブレイクは形じゃないから、練習のゲームから自然に出すことで今あるこだわりからも解き放たれるのではないかと。そういう意味で東アジア競技大会には、それを気づかせてくれるきっかけを作ってもらったといえます。ディフェンスをアグレッシブにして、どれだけファストブレイクを出せるかが大事なので、まずはスタメン5人が走って、チームに勢いをつかせたいと思っています。
―今年のチームは高さがありますが、高さがあってもファストブレイクを出す自信はありますか?
大神 タク(渡嘉敷来夢)も王(朝新喜)もしっかりと走れるプレイヤーので、走って得点を獲る方が良いと思います。ハーフコートオフェンスではなく、ファストブレイクでタクがレイアップシュートをするほうが、相手に対してもすごく効果的だと思いますし。そうすることでインサイドにディフェンスが集中すれば、アウトサイドが空く。アウトサイドも頑張って走ることで、インサイドも空く。今年の前半の合宿のようにそうやってリズムを作りたいですね。
――大会の組み合わせが決まりましたが、それを見てどう戦おうと考えていますか?
大神 アジア選手権はまず総当たりの予選をやってから、準決勝、決勝と8日で7試合を戦うことになります。予選はインドやカザフスタンとの試合があるにしても5連戦です。タイトなスケジュールなので、コンディショニングとモチベーションが大事になると思います。コンディショニングのことを考えれば、ディフェンスからファストブレイクを出すにも、短い時間帯で出す勢いが必要になるでしょう。40分間すべてで出そうとするのではなく、たとえば最初の5分でファストブレイクをバッと出す時間帯があって、その後は流れが落ち着いても、またバッと出す勢いを出さなければいけません。そういう戦い方がすごく大事になると思います。
――バスケットファン以外でもわかる女子バスケのおもしろさとはなんだと思いますか?
大神 ひとつは気持ちの部分であり、みんなが声を出すチームワークは熱いと思います。プレイ的にいえば、流れるように連動するチームプレイが特徴だと思います。熱いチームワークと、それに準じた連動するチームプレイを見てもらえると、自然と「あっ、こういうことか…女子バスケットもおもしろいな」って思って、応援してもらえると思っています。
――では最後にアジアの頂点に向けての意気込みをお願いします。
大神 今年度は5月から合宿を重ねてきました。ラントレやフィジカルトレーニングなどを含めて厳しい練習をやってきて、それを表現できる場所が大会だと思っています。東アジア競技大会では良い結果が得られなかったけれども、アジア選手権というリベンジできる場所がまだあります。そのことに感謝しながら、大事に戦わなければいけないと思いますし、もちろん1つ1つの試合が大切なのは理解していますが、しっかりとした目標設定…今年度の女子日本代表はアジア選手権でチャンピオンを獲ることが目標なので、その目標に向かって、チームみんなでこれまでやってきたことをコートの上で表現したいと思います。
経験を積んだベテランになればなるほど、これで大丈夫だろうかと不安に思うこともあるだろう。ベテランとして、またはキャプテンとしてそれを不安を取り除く最後の修正は施さなければならないが、かといって不安に苛まれたまま試合に臨めば最後の一歩が出てこなくなる。「できるか、できないではなく、やるか、やらないか」――大神が好んで使う言葉だが、最後は覚悟を決めるしかない。アジア選手権では大神雄子の覚悟が見たい。
女子日本代表のアジア選手権・予選ラウンド対戦スケジュール
10月27日(日)14:00〜 対カザフスタン
10月28日(月)20:00〜 対チャイニーズ・タイペイ
10月29日(火)20:00〜 対韓国
10月30日(水)16:00〜 対インド
10月31日(木)16:00〜 対中国
11月2日(土)準決勝
11月3日(日)決勝
*すべてタイ時間。日本との時差:マイナス2時間。例)日本22時=タイ20時
JBA:第25回FIBA ASIA女子バスケットボール選手権大会特設サイト
FIBA ASIA:第25回FIBA ASIA女子バスケットボール選手権大会サイト(英語)
フジテレビNEXT:TV放送スケジュール
文・三上 太