日曜日(11月2日)、東海大学の2連覇で幕を閉じた関東大学バスケットボール1部リーグ。今日11月6日時点も入替戦を行っているが、この関東大学リーグが始まった頃、ある選手のことが気になった。明治大学でシューターとして活躍した目(さっか)健人選手は、どこでプレイする(している)のだろうか?
目選手の父・由紀宏氏は日本リーグ(現NBL)のいすゞ自動車でプレイし、1988年に新人王を獲得。その翌年には日本代表へ選出された経歴の持ち主。現在は東洋大学の監督としてもご活躍されている。珍しい名字ということもあり、記憶に残ってる方も多いだろう。
昨年のインカレ準優勝チームのスタメンであり、シューターとして活躍した目選手だけに、今後もその成長を見届けたい選手の一人であった。
2012年、大学3年時のインカレでは3Pシュート王となり、優秀選手賞も受賞。その試合をゴールエンドで撮影していた時、逆サイドから筆者のところへボールが転がって来た。コートへ返そうとボールを持ち上げると、小走りで目選手が駆け寄ってきて、「ありがとうございます」と丁寧な挨拶をして去って行った。失礼ながら見た目とは違い(笑)、好青年という印象を受けたことも、気になる存在だったのである。
目選手以外にも小林 遥太選手(青山学院大学〜滋賀レイクスターズ)、畠山 俊樹選手(青山学院大学〜大阪エヴェッサ)の強豪大学出身者がTK bjリーグに進んでいる。
開幕を控えた各チームサイトで今シーズンへ向けたロスターが発表されていく中、9月25日にようやく東京サンレーヴスにその名を見つけた。
同時に、10月4日の開幕まで10日を切っていることに驚かされる。
「学生時代に実績ある選手ですし、お父さんと一緒で3Pシューターであり華のある選手。スター性もあり、井手(勇次選手)に次ぐ東京の顔として、まだルーキーですがプレイタイムをしっかりと与えて成長させたいという思いが非常に強いです」
東京の青木 幹典HCは目選手をこう評価している。開幕からこれまで10試合全てを先発で起用していることこそが、期待の表れである。
決め手はプレイタイムをもらえそうなチーム
ー 開幕直前の契約となったが、難航していた理由は?
目選手:NBLへ道を進めようと思っていて、あるチームからもお誘いをもらい、そこに決めるつもりでいました。ですが、いざとなって契約内容を見たら、僕が求めていることとは違う点がありました。そこで、明治大学の塚本さん(清彦HC)に相談をしてチームを探していただいた結果、東京から声がかかりました。生活しやすい環境は一つの決め手でした。でも、やっぱりプレイタイムが一番もらえそうなチームだったことが決め手となり、東京に決めました。
ー これまで全てスタメン出場を果たし、ルーキーとして十分なプレイタイムとチャンスをもらっているが?
目選手:試合に出させてもらっているんですけど、それに見合うようなプレイでチームに返せていないですね。長野戦(10月18日-19日)はちょっと良かったですが、その前の富山戦(10月12日-13日)、(インタビュー時)今週(10月25-26日)の青森戦は全くダメでした。とくに気負ってるつもりもなく、プレッシャーを感じているわけでもなくやれてはいるのですが、まだうまくいかない。まだ自分の力が足りない、調整力が足りないなどいろいろ足りないところがあるんだと感じています。
ー 契約に至るまでの練習環境は?
目選手:明治大学の練習に参加させてもらっていましたが、現役時代とは違って参加できる練習も限られてしまい、運動量が減ってしまっていました。9月末にチームと契約した後、すぐに開幕でしたので「こんな状態で大丈夫かな」という焦りはありました。でも、開幕してしまったのでそんなことを言ってる場合でもなく、今はとにかく必死になって、どうやって自分のプレイをアピールするかだけを考えてやっています。
ー プロとなってアピールすべきプレイに変化はあるか?
目選手:大学の時は3Pシュートだけでしたが、今はそれ以外のプレイを試そうと思い、1on1を仕掛けたりしています。大学時代に僕のプレイを見たことがある方にとっては、こんなプレイもできたんだ、と思って見てもらいたいなぁと思います。
ー その新しい武器に対する手応えは?
目選手:全くですね。練習では決められたりするのですが、試合は別物なので、まだ全然うまくいってません。
ー 外国人が多いリーグに対する印象は?
目選手:学生時代はチームに外国人選手はいませんでしたし、初めて一緒にプレイしています。そこで感じたのは、外国人の存在の大きさです。そうは思いつつも、まだコミュニケーションがうまく取れないので、ストレスになることもあります。
bjに来られてありがたかった
ー チームへの合流が遅れた分、今後はチームケミストリーを高めていきながら、仲間たちに自分らしさを引き出してもらうことも必要なのでは?
目選手:そうですね。とくに今週はこんな負け方をしてしまい(10月25日●79-89 青森/26日●57-76 青森)、来週はアウェイで岩手戦なので、練習中からもっと声を出してコミュニケーションを取っていかないと、もっとひどい試合になってしまうかもしれません(11月1日●53-109 岩手/2日●68-100 岩手)。次の練習日までにみんながどれだけの準備をして集まれるかが大事だと思っています。
ー 今のコメントを聞いていると、ルーキーながらもチームを引っ張って行こうという姿勢が感じられたが?
目選手:引っ張るというのは無いですけど……今までの試合を振り返ってみると、ディフェンスに対する気持ちがオフェンスに比べてまだまだ弱いと思っています。自分が先頭に立って、というわけではないですが、声を出してハードに動いてディフェンスすれば、流れも少しは変わってくるのではないかなと思っています。
ー NBLに入るつもりだったのに、直前でbjリーグになったことで何か心境に違いはあるか?
目選手:むしろbjリーグに来られてありがたかったと思っています。もし、NBLのチームに行ってたらなかなか試合に出られなかったでしょうし、出たとしても10分程度だったと思います。でも、東京では平均20分以上(10試合で平均22.9分)のプレイタイムをもらえているのは、自分にとってとても大きな経験をさせてもらっています。外国人選手が多く、NBLとはまた違った難しいリーグですが、その点はおもしろいと思ってプレイできています。
ー 今シーズンの個人的な目標は?
目選手:今は井手選手やジェマール(ファーマー)選手を始め、他の選手に気を遣うというか、まだビクビクしながらやってる部分もあるので……
ー ん?先ほど、「気負ってるつもりもない」と言ってたけど?
目選手:いや、あの……たまに恐いんですよ。自分がこんなにシュートを打ったり、攻めたりしたり、こんなにやっちゃって良いのかな、と思うことがあります。周りに気を遣わなくても良くなるように、もっと自分がやりたいことをチームメイトにアピールしたいですし、そこを意識していきたいです。
ー そのためにも一つひとつ自分のプレイを出し、結果を残して行くことが信用につながるのでは?
目選手:そうですね。1年目なので、個人の成績を気にしても意味は無いと思っていますし、チームが勝つことの方が自分にとっての自信にもつながります。スタメンで出させてもらってるので、ゲームに勝つことをまずは目指しています。
* * * * *
青森ワッツ戦後のインタビューで目選手が心配していた通り、次の岩手ビッグブルズ戦は2試合とも100点ゲームの大差で敗れた。これまで10戦を終え、3勝7敗。イースタンカンファレンス12チーム中9位。
「若い選手ですので今はいろんな経験をさせ、シーズン中盤から後半にかけて“東京に目あり”と言われるぐらいの活躍をしてくれると信じて起用しています。長い目で見守っていきたいです」とも青木HCは言っている。
契約が遅れたことで、せっかくのルーキーシーズンながらガイドブックに掲載されていない目選手。だが、プレイタイムを与えられていることで、開幕戦から着実に記録を刻み、プロバスケットボーラーとしての歩を進めている。
今週末はアウェイで同じく3勝7敗の大分ヒートデビルズ戦があり、その後の2週はホームで10位福島ファイヤーボンズ、11位群馬クレインサンダーズ戦が控えている。東京にとっては勝ち星を重ねるチャンスでもあり、ルーキーの自信と経験を上積みできる大一番となる。気を遣わず、臆することなく、その才能を遺憾なく発揮し、勝利に導いてもらいたいものだ。
11月8日(土)18:30 東京 vs 大分@コンパルホール
11月9日(日)14:00 東京 vs 大分@コンパルホール
11月15日(土)18:00 東京 vs 福島@稲城市総合体育館
11月16日(日)14:00 東京 vs 福島@稲城市総合体育館
11月22日(土)18:00 東京 vs 群馬@武蔵野総合体育館
11月23日(日)14:00 東京 vs 群馬@武蔵野総合体育館
泉 誠一