スポーツの秋、体を動かしていますか?
健康志向と合わせ、“Do(する)スポーツ”に関する環境は目まぐるしい成長を見せている。
スマホには運動をサポートするアプリがあり、週末になれば参加型スポーツイベントも多い。
芸能人なども、“Doスポーツ”に関しては様々なサークルのようなものを作って、体を動かしているそうだ。
「バスケがしたい」と選手に呼びかけてスタートしたTK bjリーグはチーム数を年々増加させ、来シーズンは24チームになる。NBLも、JBL時代の8チームからプロチームが増えて13チームになった。選手の立場から見れば、バスケにおける“Doスポーツ”環境が拡大されたわけだ。
この「スポーツする環境」と比較し、「スポーツを観る環境」はまだまだ発展途上である。
スポーツを観戦しながら旬の旨いものを食べることができれば一石二鳥、秋を欲張って満喫できる。余暇を楽しむための選択肢として、スポーツが選ばれるためにも「スポーツを観る環境」作りに本腰を入れて着手しなければなるまい。
1日中スポーツを楽しみながら呑みまくりのスペイン
先日、サッカーの名門チーム“FCバルセロナ”に魅せられるがままにスペインに住み着き、取材活動を行っていたライターさんのお話を聞く機会があった。
ご存じの通り、バルサにはサッカー以外にもバスケ、ハンドボール、ローラーホッケーなど複数のスポーツクラブを所有している。サッカーに次ぐ人気スポーツはバスケだが、ホームゲーム開催日が重なる場合はどうしているのか、ふと疑問に思った。
サッカーは夜8時や9時など遅い時間にキックオフを迎えることが多い。開催日が重ならないように調整するとともに、時間をずらして一緒に観られる機会を作っている。バルサのホームスタジアム“カンプ・ノウ”に隣接してアリーナがあるので、ハシゴが可能だと言うのだ。会場の周りにはバルなど飲食店も充実しており、試合の合間に食べて呑んで、試合が終わればまた呑んで、スポーツ観戦を中心に1日中楽しく過ごせる環境なのだ。
諸外国の成功例を見れば、一つのスポーツには依存しておらず、スポーツが文化として成立していることが大きい。アメリカであればシーズン毎に違うスポーツをそれぞれを楽しむ土壌がある。ピラミッド型のクラブ組織が主流のヨーロッパでは、サッカーを中心に他競技やユースチームなどを応援し、試合後にはクラブハウスで呑みながら愛するチームの話でさらに盛り上がる。1部とか、2部とか…10部とかはあまり関係ない。そこにチームがあり、ゲームをしているから応援し、楽しむスポーツ文化が根付いている。
観客を取り合う日本バスケ
日本のスポーツは、それぞれががんばっていると言えば聞こえは良いが、隣を見ないがために観客を取り合ってるようにさえ感じる。複数のリーグがあるバスケは、その最たるものだ。同じ日に、同じ街で、会場だけ違って試合が行われることもしばしば。
昨シーズンは、同じ都内で両リーグのファイナルの日程が重なった。幸い5戦3先勝方式のNBLが3試合で終わったことで、一発勝負のTK bjリーグの決勝戦とのバッティングは回避された。今シーズンもTK bjリーグ側の日程が確定していないが、場合によっては重なってしまう。早く一つになりなさい!
日本バスケにおける最大の集客力を誇るウインターカップ期間中(12月23日〜29日/東京体育館)にも、同じ東京近郊で両リーグの試合が行われる。NCAAファイナル4が行われる日、NBAは全試合がオフとなり、バスケファンを奪い合うことを避けることが当たり前なのだ。
スポーツを観る環境を考える上で、スタジアムやアリーナ(体育館)のある場所にも問題が山積している。ほとんどがスタジアムだけ、アリーナだけがポツンと建っており、スポーツを観に行くぞ、と気合いを入れなければなかなか足を向けない場所が多い。
ショッピングモールや東京ドームのように遊園地が併設されるなど、会場へ足を運ばせるための付加価値も大切になる。多くの人を呼べるスポーツイベントこそ、会場の周りに商業施設が集まり、街が大きくなるのが本来の姿であろう。目の前に駅があり、ショッピングモールもあるさいたまスーパーアリーナや、新幹線が止まる長岡駅から直結して会場へ行けるアオーレ長岡などは、優良モデルと言える。
テレビやネット中継で世界最高峰のNBAを手軽に見られる時代。会場そのものを変えるには多額の費用がかかるが、会場までの動線や仕掛けにはまだまだ改善の余地があり、寒い季節に足を運んでもらうためにも知恵を絞る必要がある。
オリンピックを見据え、五感で楽しむ生観戦!
しかしテレビとは違い、会場に行けば五感でスポーツを楽しめる。
トップレベルを見て、ぶつかり合う音を聞き、選手に触れることだってできる。さらに匂いに誘われて、旨いものを味わう──それが生観戦の醍醐味だ。
2020年に待っている東京オリンピック・パラリンピックへ向けて、意欲ある選手を集めてトライアウトが行われた。やっぱり、“Doスポーツ”ばかりが整備され、チャンスが広がっている。メダル獲得数を増やすことも大事だが、観客を集めることも成功へ向けては切り離せない大きな課題だ。
オリンピックが来れば、自ずと会場は埋まると短絡的に考えていないだろうか。
サッカーという共通言語の祭典であるワールドカップとは違い、オリンピックはルールも知らない競技の会場を埋めねばならない。なんだかオマケのように扱われている感じが否めないパラリンピックも同じであり、大会期間中、東京に多くの人を集めて賑わせることこそが、オリンピックなのである。
スポーツ文化が確立されていない日本において、真剣に会場を埋めることを考える時期に来ており、体育からスポーツに進化させる岐路に立つ。
バスケも多くの人を集めて盛り上がりを示し、インドアスポーツの仲間であるレスリングやバドミントンなどオリンピック種目の他競技とともに、「スポーツを観る環境」を成熟させることが大切だ。集客面から先導する形で改善案を示せば、少しはJOCに対しての罪滅ぼしにもなるだろう。
バスケをはじめ、お近くで行われているスポーツを観に行きましょう。
JBA
TK bjリーグ
WJBL
NBL
NBDL
SOMECITY
泉 誠一