4月5日(土)。東京都内では3会場でバスケットボールリーグの試合が行われた。NBLはトヨタ自動車アルバルク東京vsリンク栃木ブレックス@墨田区体育館と日立サンロッカーズ東京vs東芝ブレイブサンダース神奈川@代々木第二体育館、bjリーグは東京サンレーヴスvs仙台89ERS@稲城市総合体育館がそれぞれ開催。14時からスタートした代々木第二体育館でのNBLを観戦後、急いで稲城市へ移動し18時のティップオフに間に合うことができた。ダブルヘッダーで観戦した後、話を伺ったのは今年1月よりコートに戻ってきたともに、同じく背番号5番の選手たち。
準備はしていたが契約されずに来日できなかったジャマール・スミス(日立サンロッカーズ東京)。
ケガに見舞われコートに立てなかった伊藤 拓郎(東京サンレーヴス)。
二人が置かれた状況、そしてリーグは違えど、同じ1月よりそれぞれの職場に舞い戻って来た。
好きなことを仕事にできる人は一握りかも知れない。バスケを生業にする選手たちこそがその一握りであり、結果によっては様々な感情はあれど最終的には楽しい仕事であるはずだ。シーズンは出遅れた選手たちだが、コートに立てる喜び、バスケができる楽しさを感じている。
ジャマール・スミスの場合
最大オンザコート2のNBLにおいて、現在の日立東京はケガにより外国人はジャマール・スミスが一人で奮闘中だ。オールジャパンを終え、後半戦が始まった1月25日よりロスター入り。復帰当時はダリアス・ライスとともにコートに立っていたが、3月に入るとそのライスがケガをし、孤軍奮闘の日々が続く。
「1Qと3Qなんて相手はオンザコート2で来るわけだからチームとしても大変。でも、ウチには(竹内)譲次がいるから、高さの面ではカバーできる。ただ、交代ができない状況もあり、その面では本当にタフなシーズンだね」
40分フル出場した試合は2試合だけだが、ほとんどが35分以上コートに立ち続け、延長戦となった4月4日(金)の東芝神奈川戦では43’51もコート上で戦い続けた。世界のバスケリーグを見回しても、毎週2日連続同じカードで行われるリーグは珍しい。
「野球であればそれでも良いかもしれないけど、正直言ってきつい時もある。金曜の夜にゲームをして、翌日も昼過ぎには準備しなければならないので、休む間もなく試合が来るのは海外ではなかなか見ないスケジュールであり、とてもタフだ」
チームとしてはスミス一人しかおらず厳しい状況であはるものの、昨シーズンまでのJBLはオンザコート1から2人に変わった点は歓迎していた。
「オンザコート1は交代しながらの出場なので、リズムをつかむのが難しかった。体が温まって来たと思ったら次はベンチにいなければならないといったことがあったので、今シーズンは自分にとってはより良くなった」
バスケットは何が起こるか分からないスポーツ!大事なのは試合を楽しむこと
日立東京と契約する前、他のリーグ等ではプレイしていなかった。それでも、いつどこから呼ばれてもすぐにプレイできるように、兄のジョーとともにアメリカでのワークアウトは欠かさず準備をしていた。
しかし、ヘッドコーチが変わった日立東京であり、なかなか結果が出ないチームへの合流は難しい部分もあったのではないだろうか?
「確かに、簡単なところと難しい部分の両方があった。日立のメンバーとは2シーズンを一緒にプレイしているので、意思の疎通はすぐにできた。でも、ヘッドコーチが変わり、新しいシステムが導入されたことで、そこへの対応は難しかった。やってること自体はシンプルであり、アメリカンスタイルなので頭では理解できる。でも、バスケはチームスポーツ。みんなで合わせたセットプレイを覚えるのにどうしても時間がかかってしまった」
ケガ人がいたことも影響した日立の前半戦は6勝20敗。スミス復帰後は12勝10敗(4月5日現在)で勝ち越しており、敗れはしたが首位東芝神奈川と遜色ない戦いっぷりを見せている。しかし、18勝30敗で5位の日立東京はプレイオフも、順位をさらに上げることもできない。
「バスケットは何が起こるか分からないスポーツ。毎試合がこれで最後だと思うくらいの意気込みで試合に臨み、全力を尽くすだけ。そして大事なのは、試合を楽しむこと。そうすれば自然とハードにプレイすることができるんだ。今言えることは毎週末行われる2ゲームずつをしっかりと戦って行くということだけ。残る6試合はプレイオフを争うチームばかり。そのチームと台頭に戦えることを証明し、自信にするためにも一生懸命やらねばならない。それが来シーズンにつなげる糧になるからね」
- 4月12日(土)15:00 リンク栃木 vs 日立東京@栃木県立県北体育館
- 4月13日(日)15:00 リンク栃木 vs 日立東京@栃木県立県北体育館
- 4月18日(金)19:15 トヨタ東京 vs 日立東京@代々木第二体育館
- 4月19日(土)14:30 トヨタ東京 vs 日立東京@代々木第二体育館
- 4月26日(土)18:00 日立東京 vs 北海道@大田区総合体育館
- 4月27日(日)15:00 日立東京 vs 北海道@大田区総合体育館
伊藤 拓郎の場合
「大学時代、インカレ直前に全十字靱帯と半月板の軟骨を損傷した影響で、昨年はヒザに水が溜まってしまいプレイできずにいました。それが良くなって復帰したのですが、またすぐに今度は左の足首を脱臼骨折して、さらに靱帯が切れてしまって昨年1月に手術。そこからリハビリを続けて、今年の年明けに復帰することができました」
昨シーズン、ようやくコートに戻ってきたと思った矢先、2012年12月30日の横浜ビー・コルセアーズ戦で再びケガに見舞われてしまう。普通であれば心が荒んでもおかしくない状況であろう。しかし、伊藤の示す態度は違った。チームの中では明るく接し、孤独なリハビリ生活を乗り越えて、今年1月12日に岩手ビッグブルズを迎えて行われたホームゲームで約1年ぶりの復帰を果たした。
「そんなに下を向くことはなく、もう復帰することだけを目指して地道に取り組んでいただけです」
ケガでコートにいなくてもブースターに支えられるのがプロチーム。4月5日(土)仙台戦は、勝利でブースターに応えることができた。
「応援してくださる方がいて、その声援に応えられることがすごく楽しいことです。今日のような結果がどんどん積み重なって行けば、僕たちもブースターの皆さんにとっても充実感が増していくと思います」
思い描くプレイはできていない。まだまだこれから!
しかし、チームの方は13勝33敗(4月6日現在)で11チーム中9位。プレイオフ進出はすでに消滅している。連勝を目指した翌日の試合に向け、勝った後は大敗するケースも多いと気を引き締めて臨んだが63-101で敗れ、その心配は的中。シーズンも終盤に来た今、結果に反映されていなくとも、チームが目指すバスケはできているのだろうか?
「正直言って、すごく良くなっているという実感は無いです。プレイオフ進出も消滅していますし、あまり良い練習もできていない時期もありました。ラスト6試合であり、ホームゲームもあと2試合しかありません。何とか最後のホームでしっかりと自分たちの良い形を作って、勝てるようにしたいです」
北陸高校〜拓殖大学へ進み、類い希なるバスケセンスで将来を嘱望されていた。しかし前述通り、最後のインカレ直前に負ったケガを引きずって来た。さらにアメリカへ渡ったり、北海道での練習生時代などブランクがあることも否めない。そのせいもあり、まだまだ20代だと思っていた伊藤だが、もう30歳を越えていた。
今、プロ選手としてコートに立てることに喜びを感じながら、ようやく前進できる体を取り戻しつつある。
「コートに戻ることはできましたが、自分が思い描いているようなプレイはまだできていませんし、体のキレも戻って来ていません。とにかく今は、本来の自分に戻れるようにコンディショニングを上げることを一番に取り組んでいます。今年で31歳になりますが、ようやくケガも治り、体が動くようになってきました。自分自身では衰えを感じてはおらず、コンディションも上がって来ていますので、まだまだこれからです」
- 4月12日(土)18:00 東京 vs 秋田@秋田県立体育館
- 4月13日(日)14:00 東京 vs 秋田@秋田県立体育館
- 4月19日(土)18:00 東京 vs 横浜@町田市立総合体育館
- 4月20日(日)14:00 東京 vs 横浜@町田市立総合体育館
- 4月26日(土)18:00 東京 vs 富山@富山市総合体育館
- 4月27日(日) 13:00 東京 vs 富山@富山市総合体育館
泉 誠一