第1ピリオド、両チームともに得点が決まらない中でのタイムアウト。天皇杯優勝経験のあるベテラン率いる日立と、大学を出たばかりのルーキーを多く抱えNBL参入1年目、文字通り“若いチーム”である広島。
序盤では両者譲らず、この先どんな展開を魅せてくれるのかを占う1枚。“All Japan 2015”と書かれたボールの向こうには、黄色いユニフォームが見えた。
初の天皇杯優勝が決まった日立サンロッカーズ東京。試合終わりの挨拶時、誰よりも先に、誰よりも深く頭を下げたのはキャプテン・竹内譲次選手。
苦しんだ昨シーズンを支えてくれたすべての人に捧げる感謝の想いが、この瞬間だけで感じ取れる、そんな1枚。ヒーローインタビューのたびに、ファンや周囲の人へ感謝の言葉を述べる彼らしさがよく表れている。この一礼には“ありがとう”では表しきれない想いが籠められているのだろう。
チームの副キャプテンを務める酒井泰滋選手。ディフェンシブなプレイが輝く、縁の下の力持ち的存在。プレイタイムは多くないものの、練習や試合前のアップ、ベンチにいる時、もちろんプレイ中に至るまで、さまざまな場面でチームのメンタルを支えているのは彼だ。移籍することなく8年間、チームを支えてきた彼はチームからもファンからも絶大なる信頼を得ている。
そんな彼が優勝メダルを胸に下げ、見つめる先には“天皇杯初優勝”と書かれた会場中央の電光掲示板が……。
同期の竹内選手と8年かけてようやく手にした“天皇杯優勝”。ここに至るまでの過程、仲間たちとの想い出をどう振り返っていたのか。今までの彼のプレイを蘇らせてくれるような、そんな1枚となった。
Photo & Text by Mami Yasui