2015年元旦からスタートした全日本総合選手権(オールジャパン)は4日に行われた準々決勝を終え、ベスト4が出揃ったところで小休止。続く準決勝、決勝は10日~11日に代々木第一体育館で行われる。
ここまでの戦いを振り返ってみると、大きな波乱の1つに男子・第1シードのアイシンシーホース三河が初戦(3回戦)で敗れたことが挙げられる。土をつけたのはノーシードから勝ち上がってきた千葉ジェッツ(NBL8位)。前半7点のビハインドをじりじりと詰め、4Q残り6分半にリック・リカートのシュートで55-55の同点に追いつくと、4分には63-59と前に出た。追うアイシンは外から果敢にシュートを放つも再逆転のゴールは遠く67-60でゲームセット。NBLのトップを走り、今大会優勝候補最右翼チームと目されていたアイシンはわずか一戦を戦っただけで早々と姿を消すことになった。
この試合、アイシンは主力の1人である比江島慎をケガで欠いていたが「それは言い訳にはならない。千葉のディフェンスに押されて、チームで戦わなければならないところを‟個„で戦ってしまった」(アイシン・喜多川修平キャプテン)
これに対し千葉ジェッツのレジー・ゲーリーHCは「チーム一丸となって戦ったゲームだった。桜木ジェイアールを荒尾(岳)が身体を張って守り、リーグ切ってのスコアラーである金丸晃輔を上江田(勇樹)が粘り強く守った。そして、何よりオフェンス、ディフェンスともにテンポを変え、コートにアグレッシブさをもたらしてくれた西村(文男)の力は大きい。それぞれが自分のやるべき仕事をやり抜いたことで得た勝利だと思う」と選手たちを称えた。
千葉ジェッツは主力の小野龍猛がケガで戦線離脱した状況の中、リーグ戦では12月21日のトヨタ自動車アルバルク東京戦をオーバータイムで勝ち取り、12月23日の日立サンロッカーズ東京戦も1ゴール差で競り勝つなど充実した戦いぶりを見せており、「上位チームとのタフなゲームを勝ち切ったことで、やればできるという自信も生まれたし、みんなの意識も変わってきたように思う。(アイシンを倒したことを)大金星と言う人もいるだろうが、自分たちのバスケットができれば勝てない相手ではないと思っていた」(西村文男)
とはいうものの、12月27日の熊本ヴォルターズ(現在ウエスタンカンファレンス最下位)戦では黒星を喫し、今大会の2回戦でもNBDLアースフレンズ東京Zに大苦戦する一幕もあった。
「こうしたゲームで足りなかったのはやはり気持ちの部分。(敗戦や苦戦から)学び、最後までゴールに向かう気持ちを忘れず、ハッスルして戦っていきたい」と語っていたゲーリーHCだが、その言葉どおりアイシン戦は、相手に傾きそうになる流れを粘り強いプレーで何度も引き戻しての勝利だった。
しかし、翌日の準々決勝(対トヨタアルバルク)は大会4連戦目の疲労が影響してか外角シュートに精彩を欠き1Qからトヨタにリードを許す展開となる。3Q終了時点で49-59と10点のビハインド。だが4Q、『タフなゲーム勝ち切ってきた自信』が千葉の背中を押した。リカートのゴール下、西村の外角シュートで連続得点を奪うと、残り3分17秒には64-66と2点差に詰め寄る。そこからの3分は両者譲らず2点差のまま残り10秒、西村が放った最後の3Pシュートはリングに弾かれ72-74で試合終了。ベスト4の切符を手にすることは叶わず、千葉ジェッツのオールジャパンは終わった。
「いや、自分、持っていなかったです」――それが西村の最初の一言。苦笑いの顔には一発逆転を狙ったラストショットを外した悔しさがにじんだ。昨シーズンまでプレーした日立サンロッカーズ東京から移籍して初めて臨んだオールジャパン。「結果が欲しいと思ったし、その分勝ちにこだわる気持ちは強かった」
卓越したボールハンドリングから繰り出すパスにも高確率のシュートにも定評がある西村だが、とりわけ光るのは持ち前のバスケットセンス。学生時代から洗練されたスマートなプレーでファンを魅了してきた。だが、今シーズンはそのプレーに今までにはない‟執拗さ„が加わったような気がする。今大会も連日30分以上コートに立ち「最後は足がつりました」と言いながらも最後の最後までアグレッシブにゴールを目指した。それを本人が言う「勝つことへのこだわり」とするならば、司令塔が発する勝利への執着心は確実にチーム全員に伝染し、『あきらめない千葉ジェッツ』を生んでいたように思う。
「準決勝には進めなかったが、全力を尽くした選手たちを誇りに思う」(ゲーリーHC)
元旦から4日まで連日会場を沸かした千葉ジェッツは準々決勝で敗れてもなお大きな歓声と拍手を浴びた。タフな4連戦を戦い抜いた姿は、今大会前半戦において最も‟記憶に残るチーム„であったと言っていいだろう。
松原 貴実