「オールジャパン」のプログラムに掲載れている“推薦チーム”の内訳を見てみると、トップリーグ(NBL/NBDL、Wリーグ)に続いて大学生枠(インカレ上位校)が紹介されている。そして、その次に掲載されているのが「全日本社会人選手権大会」のトーナメント表。いわゆる「社会人枠」であり、実業団、クラブ、教員の上位チームが参加する大会だ。ここでファイナルに進出(優勝・準優勝)すると晴れてオールジャパンに出場できる。男子は日本無線(実業団1位)と九州電力(実業団2位)が、女子は山形銀行(実業団1位)、秋田銀行(実業団2位)が勝ち上がった。
また、地方予選を勝ち抜いて出場した実業団チームもある。男子の宮田自動車(北海道)、JR東日本秋田(東北)、曙ブレーキ(関東)、女子の鶴屋百貨店(九州)の4チームは地方の代表であると同時に、実業団というカテゴリーの代表とも言えそうだ。
元旦に開幕したオールジャパン。上記の8チームのうち、社会人1位の日本無線(男子)と山形銀行(女子)を除く6チームは1回戦から登場した。その中で勝ち残ったのは、九州電力(61-56筑波大学)と鶴屋百貨店(75-74新潟医療福祉大学)の2チームのみ。翌日、2回戦を戦った4チームは残念ながら勝ち残ることはできなかった。
もちろん、トップリーグにも「実業団」チームは存在する。が、その置かれている環境には大きな開きがある。学生時代に華々しい活躍をし、アスリートとして高い評価を受け、“スカウト”されるようなプレイヤーであれば、バスケ優先の環境が約束される。それは本のひと握りに過ぎず、だからこそ高評価と高待遇は当然のこと。「日の丸」を背負って活躍することを期待されるほどの逸材はピラミッドのてっぺん近くにいるものだ。
高くて強いピラミッドを造るために
「実業団」にもっとフォーカスを!
でも、ピラミッドは裾野(土台)が広くなければ高くはならない。しかも、どっしりと安定していなければ、すぐに崩れてしまう。かつて、日本のバスケは実業団がピラミッドを形成していた(その前は学生スポーツだが、各競技とも日本リーグがスタートしてからは実業団)。最近はトップリーグを頂点とした(bjリーグもあるが……)ピラミッドが形成されようとしている。2020年東京オリンピックを控え、その方向性は定まりつつある。男子は出場が危ぶまれているだけに、日本のバスケがベクトルを合わせて進んでいくことが不可欠だ。
で、何が言いたいかというと今の“実業団”の存在である。登録数は減少傾向とのことだが、高校・大学を卒業したプレイヤーたちが、“あきらめないで次を目指す”ためには大切なカテゴリーであり、仕事との両立において大変な思いをする分、ヒューマンスキルも磨かれる。2回戦で敗れた日本無線と九州電力の関係者は「バスケも大事ですが、バスケを通して、人として成長して欲しい」と同じようなコメントを口にした。「実業団というカテゴリーで日本一を目指し、オールジャパンで上のカテゴリーと戦うことがモチベーションになる」とのこと。
今度は2月に行われる「第46回全日本実業団選手権大会」での優勝を目指す選手たちは現状に甘んじることなく、少しでも上を目指す強いスピリッツの持ち主たちだ。“実業団”からステップアップを果たし、トップリーグやbjリーグ入りを果たしたケースもある。仕事との両立を受け入れ、自分の成長の糧に活躍するプレイヤーがたくさんいる。
九州電力#35熊谷 駿選手
「大学(京産大)卒業後はもっと上のレベルでバスケが続けられれば、と思っていたのは事実です。でも、現実的には難しいこともわかっていました。地元へのUターンを考えていたことや、山口コーチから声を掛けていただいたこともあったので入社を決心しました。仕事との両立は大変なこともありますが、職場や後援会の方々の応援が励みになります。元旦からわざわざ来てくださり感謝の気持ちでいっぱいです。次は2月の大会で『日本一』を目指します」
少しでも高いレベルでバスケを続けたい! ビジネススキル、ヒューマンスキルも磨きたい!……キャリア形成の選択肢として、実業団はもっとも裾野が広いカテゴリーだ。ごく普通に入社試験を受け、合格を果たさなければならないし、それなりに就活だって必要だろう。
ハードルが高いからといって「卒業したらバスケも卒業……」ではなく、もう少し視野を広げ、情報収集(2月の大会を観戦するとか!?)してみてはいかがだろうか。そう、我々もWebや小誌(『BASKETBALL SPIRITS』)での情報発信を心がけたい。
文・羽上田 昌彦(ハジョウダ マサヒコ)
スポーツ好きの編集屋。バスケ専門誌、JOC機関紙などの編 集に携 わった他、さまざまなジャンルの書籍・雑誌の編集を担当。この頃は「バスケを一歩前へ……」と、うわ言のようにつぶやきながら現場で取材を重ねている。 “みんなでバスケを応援しよう!”を合言葉に、バスケの楽しさ、面白さを伝えようと奮闘中。