街中や試合会場で流れる音楽を耳にした時、「良い曲だな」と新たに興味を持つこともあるが、「これ知ってる」というのも耳を傾けるきっかけではないだろうか?
興味を示し、行動に移すためにも必要なのは、“知ってる”ということ。
マスメディアやクチコミ等で見たり聞いたり、少なからず何かしらの“情報”があるからこそ観に行くことにつながる。自分の行動を振り返っても、通りがかりの映画館やライヴハウスで、見たことも聞いたこともない映画やアーティストのライヴを観ようとは思わない。しかし、そのハコ自体が持つ魅力に誘われることはある。好きなジャンルの映画や音楽に特化した場所であれば、スケジュールを覗き見ることもあろう。その行動もまた、そのハコ自体の情報があるからこそであり、何も知らないところに飛び込むのはとても勇気のいることだ。
情報=会場へ行くきっかけ
3月2日、アイスホッケーアジアリーグを観戦するためにダイドードリンコアイスアリーナへ足を運んだ。なぜアイスホッケーを観に行こうと思ったかといえば、そこに2つの情報が重なったからだ。
一つは新聞スポーツ欄の日程を見て、試合があることを知ったこと。もう一つは、福藤 豊という選手を知っていたからである。
ユニクロのCMにも出ていたのでご存じの方も多いとは思うが、日本人初のNHLプレイヤーとしてロサンゼルス・キングスのゴールを守った福藤選手。現在はサッカーご意見番でおなじみのセルジオ越後氏がシニアディレクターを務めるH.C.栃木日光アイスバックスのゴールキーパーとして活躍中。
さらに前日、日本人初のNBAプレイヤーである田臥勇太(リンク栃木ブレックス)を目の当たりにしており、連日世界トップリーグに立った選手を見られる機会に恵まれた週末でもあった。
名の通った選手と言えば、Jリーグには久しぶりにワールドクラスの選手がやって来た。ウルグアイ代表としてワールドカップ南アフリカ大会では5得点を挙げMVPを獲得したディエゴ・フォルランのセレッソ大阪入りは大きく報道され、チケットも売れた。ホーム開幕戦となった3月1日、47,000人収容可能なヤンマースタジアム長居には37,079人の入場者が訪れた。昨シーズンのセレッソ大阪のホームゲームにおける平均入場者数は18,819人なので、倍近い集客増である。
選手との共通項探し
名のある選手を招くことが、集客につながる近道であることは様々なスポーツで証明されてきた。Jリーグが始まった当時、日本代表がまだ夢に見ていたワールドカップの舞台で活躍したスーパースターがこぞってやって来た。日本のサッカーに興味の無かった筆者であったが、ブラウン管の向こうで見ていたスターたちは一見の価値有りと、寒い早朝からチケットを買うために並んだものだ。
スター選手はマスメディアを通じて様々な情報が勝手にインプットされる。しかし、スターではなくても選手のことを知ってもらう機会を増せば、身近に感じることができ、集客へとつながるのではないだろうか?
情報こそが興味を持つ第一歩であり、その歩数を増やすことが来場してもらう道のりへとつなげたい。そのためには、選手との“共通項”を導き出すことから速やかに着手せねばなるまい。
WJBL公式サイトでの選手プロフィールは、ミニバスから現在に至るまでの経歴、そしてWJBLでのキャリアスタッツが一目で見られる。これは国内バスケのリーグサイトではWJBLだけであり、原稿を書く時にも本当に重宝している。翻ってbjリーグやNBLを比べると、いずれも出身校などのプレイ歴でさえ書かれていない。プロフィールやグラスルーツを紹介するだけでも、ファンの新規開拓へ向けた大事なプレゼン資料となる。もちろん各チームサイトでは掘り下げているので、そちらから入ってくれば良いわけだが…。
選手との共通項探しの一歩目は性別だ。男女ほぼ半分の競技者数を誇るバスケは、絶対的に男子の方が多いサッカーや野球と比べて大きく違う点である。
次に出身地が合致していれば、さらに出身校で振るいにかけながら年齢(世代)を掛け合わせることをオススメしたい。バスケ経験のある方であれば、対戦したことが無いかとソートをかけることができる。世代が違っていても、先輩後輩から当たることで共通項がヒットする確率は上向く。趣味や試合後のコメント、SNSなどから伺える選手像を照らし合わせていけば、どんどん具体化され、より身近になっていく。
北海道から沖縄まで男女54チーム(bjリーグ/NBL/NBDL/WJBL)に所属する選手の中から、様々な共通項が見つかるはずだ。選手との共通項が多ければなおさらだが、たったひとつであってもそこから興味を持ち、親近感が湧いてもらえるような仕組み作りは必要である。選手について調べて行けば、自ずとチームや試合の情報に辿り着き、会場へ来てもらえるきっかけになれば良い。
共通項を共有できる会場こそが最大のメリット
選手との共通項は、会場へ来るファン同士にとっても同じこと。共通の地域や趣味趣向を持った方々が集まっている会場なのだから、思い切って話かければ新たなコミュニティはすぐに生まれるはずだ。それこそが、各地域のバスケ会場に人が集まる本来の役割であり、最大のメリットであろう。
バスケのルールを知ることよりも、我が街のヒーローである選手たちを知ってもらうことが先決であり、会場に足を運ぶきっかけへとつなげたい。
微力ではあるが、バスケットボール スピリッツを通じて選手やチームを紹介することで、少しでも多くの方に会場へ足を運んでいただけるよう、筆者もさらなる努力をせねばならないと痛感している。
次回の後半は、小学生以下を対象に、一番最初に触れるスポーツをバスケにさせたい…というご提案。
泉 誠一