ゴールが決まれば笠置シヅ子の「東京ブギウギ」を高らかに歌い、ワッショイワッショイとお祭り騒ぎになる。3点獲ろうが、4点差にしようが、ロスタイムだろうが、攻撃を緩めないのが東京スタイルの魅力だ。東京といっても、こちらはサッカーJリーグ、FC東京のホームゲームでの話。
bjリーグにおいて、東京に拠点を置くのはチーム創設2年目を迎えた東京サンレーヴス。10月19日-20日、立川市泉体育館にてホーム開幕戦が行われた。両日とも集客は1500人程度。しかし、片側しかスタンド席が無い泉体育館なので上々の集客率と言える。対戦相手は開幕から連勝街道をひた走る秋田ノーザンハピネッツ。秋田のチーム新記録となる開幕6連勝をアシストする形で、2連敗を喫した東京はホームゲーム黒星スタート。
昨シーズンの総出場時間は55分。多くの個人記録を塗り替えた開幕戦
「我々は弱いチームであり、どこも楽には勝たせてくれない」
そう力強くコメントしたのは、東京の青木 幹典HC。あまりに歯切れの良い口調に、弱くたって良いじゃないか…という錯覚さえ覚えてしまう。発足1年目の昨シーズンはプレイオフを逃し、自分たちの弱さを自覚しながらも、下克上を目指すのが今年の東京だ。昨シーズンから残るメンバーは12人中5人。泉体育館へ向かうモノレールには、一新されたメンバーを並べた中吊り広告で開幕戦を告知。しかし、見知らぬ顔ばかりでパッとしない……。失礼ながら、これが今ーズンの東京に対する筆者のファーストインプレッションだった。
しかし、フタを開けて見ればいきなり琉球ゴールデンキングスに延長の末、競り勝つ。青木HCの言葉を借りれば「アップセット」。同じプロチームとはいえ、優勝経験ある沖縄に勝てたことはやはり金星なのだ。その試合でチームハイとなる34点を挙げる活躍をしたのは、外国人選手でも、昨シーズンからいる井上聡人でもない。
井手勇次、予期せぬ伏兵が話題をさらう。
井手のルーツを紐解いていくと、なるほど── チームメイトの金井 賢治とともに、早稲田大学時代からポイントゲッターとして活躍。さらに遡れば、ウィンターカップ準優勝に輝いた北陸高校の先発メンバー。そう!あの井手 勇次と言えば、学生バスケを見ている方にとっては顔と名前が一致し、ピンと来たことだろう。
大学卒業後、JBL2のTGI・Dライズでプロ選手としてスタートし、昨シーズンはドラフト1巡目で島根スサノオマジックに入団。しかし、2012-2013シーズンに井手が残した数字は、52試合中20試合に出場したがプレイタイムは合計55分。1試合平均にすると3分にも満たない。その中で決めた得点は12点。打ったシュートはフリースローを合わせてたった12本。
その昨シーズンの記録の多くを、開幕戦のたった1試合で大きく更新させたのである。出場時間31分・34得点(3P:11/21本、2P:6/12本、FT:4/6本)