丸山 そうですね。日本の中だけじゃスターになれないイメージがあるんですよ。田臥選手の次は富樫選手(勇樹・千葉ジェッツ)と言われてますけど、彼もまたNBAに挑戦した選手ですし。もちろん、小さくても速くて上手いっていうわかりやすさもありますが、やっぱり『海外』っていうのは1つのキーポイントになると思います。
マーク 僕はスター選手の条件は2つあると思ってます。1つは単純に点を取ること。たとえば1試合に50点とか、そういうパフォーマンスを何度かすると「あいつはまた何点取った」とか「ほんとにすげー」とか話題になる。今はハイライトベースっていうか、ツイッターでも5秒のハイライトが沢山挙がってますから、話題になると同時に動画としても拡散されます。つまり、ハイライトが拡散されるぐらい得点能力がある選手ということですね。2つ目は能力だったり、ビジュアルだったり、何か突出したものがあって、ワンプレーでみんなを大騒ぎさせられるような選手。たとえばアンクルブレイクとかものすごいダンクをするとか。そういう意味では馬場選手(雄大・アルバルク東京)のポテンシャルはそれに近いかな。もともとバスケはワンプレーですごく強い印象を残せるスポーツなんで、めちゃくちゃすごいダンクを続けて、拡散されたハイライトが積み重なっていけばファンの中に「この人はスターなんだ」っていう印象が自然に植えつけられていくんじゃないでしょうか。
平 ストーリー性を持っているとか、海外に出るとか、突出したプレーのハイライトを積み重ねるとか、皆さんの話をまとめると『個の価値が高い選手』ということになりますよね。確かに他のスポーツでもスターというのはその条件を満たしている選手ばかりです。ただ僕には『スターというのは作り上げて行かなきゃならないもの』という考えがあって、そこに対する努力がまだ圧倒的に足りない気がしてます。
山上 言い方を変えれば『スターを育てる』ということでしょうか?
平 そうですね。たとえば日本を代表するシューター金丸選手(晃輔・シーホース三河)は、高校時代に磨かれたオフェンスの資質を大学の4年間でフォーカスして、さらに開放された選手なんですね。その結果、さっきマークさんが言っていた「50点取る選手は目に止まるよね」というようなスコアラーに育ったんです。
丸山 えー、そうなんですか。
平 彼は世界大会でも平均38点くらい取ってますから、海外でも彼と同世代の選手はみんな彼のことを知ってます。でも、基本的に平均を求めるという日本のバスケットスタイルからしたら、彼はまだ例外の部類でしょうね。国民性かもしれないですけど、日本では1つだけバァーンと突出している選手が育ちにくいように思います。Bリーグの中にもあまり見当たらないですよね。
マーク 今の話で浮かんだのはデニス・ロッドマンです。彼があれだけリバウンドを狙ったのにはもちろん『チームに貢献したい』っていう思いがあったでしょうが、それは半分で、あとの半分は『自分の価値を高めたい』だったと思うんですよ。つまりはセルフマーケティングですね。何か1つのものに突出して自分の価値を高めるってことです。
丸山 それを言ったら日本の選手はスタッツを稼ぎにいってないですもんね。
マーク そうそう。まあ得点に関して言えば、今のBリーグではほぼ最優先は外国籍選手になっているので日本人選手のシュートの数は圧倒的に少ない。必然的に点が取りにくいってこともありますけどね。あと、さっきの何かに突出した話で言えば、最近NCAAでどこの大学だったか忘れちゃいましたが、わりとマイナーな大学で1試合でテイクチャージを5回したことが記事になってておもしろいなあと思いました。
丸山 そういう話が記事になるのがアメリカですね。バスケへの関心度が高いというか。
平 日本もそういうところをフィーチャーしてあげるのが発信側の仕事の1つかもしれないですね。先ほど私が言った『スターを作る』ということも公平性を求められるリーグは難しいかもしれないけど、チームが意図して発信することはできる。そういうことが大事なんじゃないかなあ。
構成・文 松原貴実
写真 吉田宗彦、泉誠一