ホーム開幕戦を前にチケットの売れ行きが振るわず、「ホーム開幕戦・緊急ご支援のお願い」というリリースを出し、ブースターに会場へ来るようお願いした岩手ビッグブルズ。前回のコラムもたくさんの方々がSNSを通じて共有していただいたが、その願いもむなしく、2日間の集客は10月20日(土)1,032人、翌21日(日)は774人だった。しかしチームは、千葉ジェッツを振り切り開幕6連勝。ゲーム内容も土曜日は78-77と接戦の末に勝利を手にし、日曜日はダブルオーバータイムまでもつれ込みながら99-88と連日にわたり劇的な勝利を飾った。会場に行ったブースターにとっては、シビれる2試合であったはずだ。生観戦したその感動を何かしらの形で広めてもらい、少しずつ観客を増やしていきたいところだ。
3週目を終えて、ほとんどのチームによるホーム開幕戦が行われた。
その集客数を見ていくと、苦戦しているのは岩手ビッグブルズだけではなかった──
ホーム開幕戦各チーム集客数
- 岩手:1,032人
- 秋田:2,855人
- 仙台:3,532人
- 新潟:3,189人
- 富山:1,483人
- 長野:1,117人
- 群馬:3,051人
- 埼玉:1,613人
- 千葉:2,131人
- 東京:10/26(金)@中央区立総合スポーツセンター
- 横浜:11/10(土)@スカイアリーナ座間
- 浜松:1,701人/10月26日(土)@浜松アリーナ→3,032人/10月13日(土)@豊橋市総合体育館
- 滋賀:1,533人/10月20日(土)→1,612人/10月21日(日)
- 京都:2,273人
- 大阪:1,636人
- 島根:2,165人
- 高松:1,485人
- 福岡:1,946人
- 大分:756人/10月19日(金)→839人/10月20日(土)
- 宮崎:1,336人
- 沖縄:10/27(土)@沖縄市体育館
全21チーム中18チームがホーム開幕戦を終えており、そのうち1/3となる6チームの初戦の集客数が1,500人に届かなかった。現在3勝1敗と好スタートを切った大分ヒートデビルズに至っては、開幕戦が金曜日ということもあり756人だったが、翌土曜日も839人と3桁止まりとなり、岩手ビッグブルズ以上に厳しい状況である。また、開幕戦以降に集客数が伸びたゲームがあったチームは、大分ヒートデビルズを含めてたった3チームしかない。週末、同会場での連戦は集客を分けてしまい、いずれかに偏ったりする傾向にある。
bjリーグは発足当初、平均3,000人の集客目標を掲げていた。来シーズンより立ち上がるNBLもまた2,500〜3,000人の平均集客数を想定している。ただ、現在使用している多くの公共体育館のキャパシティ、そして週末連戦同会場開催を続けていくにあたり難しい状況にもある。いずれにしても、バスケを見てくれる絶対数を増やすことが急がれる。
集客数・集客率・利益率のどれをビジネスモデルとするか
キャパシティの現状は、秋田ノーザンハピネッツがホーム3・4戦目に使用した由利本荘市総合体育館のように、そもそも500席ほどしか固定の客席が設けられていないこともある。そこに仮設や椅子を並べた結果、10月21日(日)の群馬クレインサンダーズ戦は1,409人の観客を集めた。1,500人を割ったからといって、会場によっては集客率はクリアされているケースもある。
今週末、初めてホームゲームを行う東京サンレーヴスは、中央区立総合スポーツセンターを使用する。こちらも固定席は674席と少ない公共施設。1,000人も入れば、満員と感じるほどかもしれない。チーム運営や理念によって様々ではあるが、集客数・集客率・利益率など、リーグとしてのバスケットボールビジネスの方針を見直す時期に来ており、改めて明確にして行く必要がある。
しかし、1,500人程度で満員になるようなキャパシティの会場は、当日を迎える前に完売になっていてもらいたい。
集客も選手の年俸も、3桁から4桁に引き上げたい日本のバスケ事情。
プロリーグであり、地域を代表するプロチームである以上、単なるバスケ大会程度では物足りない。何をエッセンスとしながら、他のプロチームや様々な娯楽と渡り合うコンテンツとしていくか?海外旅行をツアーで行ったら、見たくもない宝石屋さんへ強引に行かされた経験がある方もいるのではないだろうか。同じように、例えば東京であれば、否が応でもはとバスツアーに盛り込んでしまうなど、強引なくらいの集客戦略も必要だ。
まだ開幕したばかり!分からなかったらファンに聞け!
開幕前に、悲痛なお願いとなる「最後の切り札」を使ってしまった岩手ビッグブルズ。
「分からなかったらファンに聞け。答えはファンが知っている」とは、MLBボストン・レッドソックスオーナーの金言である。幸い、bjリーグのブースター数は少なくない。ブースターが求めているものは何なのか、そして身の丈にあった中でそのニーズに応えられるものはどれか。取捨選択をしながら、地域密着プロチームとしてしっかりコミュニケーションを取って行くことも大事である。
まだまだ開幕して1ヶ月も経っておらず、これからいくらでも挽回できる。趣向を凝らしながら、それぞれのホームカラーを出し、全国各地でバスケットが盛り上がって欲しい。俯瞰で見ていると、21チームもあることで独自カラーが薄いチームがあると感じている。コート内でバスケットボールを競うのはもちろんだが、プロチーム同士、バスケットボールビジネスやエンターテイメント面でも切磋琢磨し、オリジナリティを持って集客、そして収入につなげていきたいところだ。そしてこの現状をリーグはどう捉え、改善していくのだろうか。
いよいよ今週末(10月27日・28日)には、bjリーグチャンピオンの琉球ゴールデンキングスがホーム開幕戦を迎える。同時に「第2回 コザAランチ選手権」も開催される。週末に開催された「B-1グランプリ」は大いに盛り上がったが、沖縄ではこの「コザAランチ選手権」が同じように盛り上がるのではないかと想像する。
昨シーズンも沖縄市体育館でホーム開幕戦が行われ、2,720人を集めた。昨シーズンのプレイオフ・ウェスタン・カンファレンス セミファイナルの2戦目には、過去最高となる3,413名(宜野湾市立体育館)を集客した。
さて、この週末は何千人の熱いブースターが集まり、2連覇へ向けてチームを後押しするのだろうか!?
オンザコートとコート外の両方で、最後に笑うのはどのチームだ!
text by IZUMI