アーリー・エントリー制度(日本及び海外の新卒選手が2月より公式戦に出場できる制度)で今シーズン途中より秋田ノーザンハピネッツに入団を果たした富樫勇樹。秋田オフィシャルサイトに掲載された入団記者会見時の記事には「大型新人選手」と紹介された。富樫の身長は167cm。東京サンレーヴスの青木康平と同じサイズであり、見た目の”大型”さはない。秋田での期待の表れっぷりを中村和雄ヘッドコーチはこう説明した。
「信じられないほど、スポンサーを含め秋田の皆さんに興味を持っていただいており、コート外でも忙しい日々を送っている。それもスター選手だからこそ乗り越えなければならないし、やっぱり他の選手とは違う」。
初出場を果たした2月2日の富山戦からスターターで起用され、40分間フル出場。15点を上げ、持ち前のパスで11本のアシストを決め、スティールが3つ。上出来のスタッツを残し、チームも88-78で勝利し、デビュー戦を飾った。
得点を求められ戸惑う富樫
2008年、富樫の地元である新潟で開催された全国中学校バスケットボール大会。新発田市立本丸中学校では、実父である富樫英樹監督の下でプレイし、親子鷹で臨んだ全国の舞台で初優勝。京北中学校との決勝戦で富樫は36点を挙げる活躍。中学卒業後に渡米し、トヨタアルバルクの松井啓十郎や伊藤大司らと同じ、モントロス・クリスチャン高校で将来のNBA選手になるであろう猛者たちとの3年間を過ごす。そして昨年、NBA CARES「バスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズ アジア2012」で久しぶりに日本でプレイし、その成長した姿を披露した。英語を操ってコミュニケーションを取り、アジア各国から集まった選手たちの中で常に中心にいた。そしてラストゲームでは素早いドライブ、そしてスペースが空けば3Pを沈め、アジアの同世代のライバルたちを翻弄しMVPを獲得。
そんな富樫にとって、得点することも容易なことと思っていた。しかし、「高校3年間でほとんどシュートを打つことが無かったですし、スクリーンを使ってシュートを打つことなんて無かったです」と話しており、好スタートを切ったと思われた新天地での現状に戸惑いを見せた。
中村ヘッドコーチは、「シュートを入れること。中学校の頃までは入っていたのに、高校でフォームを変えられて入らなくなった。アメリカのコーチだからと言って良いとは限らない。富樫のシュートが入るようになれば、もっと良い状態でバスケットができるようになる」と、バスケットで勝つためには当たり前のことであり、けっして高くはない要求を課している。