11月2日、岡村 憲司選手がアシスタントコーチと兼任して茨城ロボッツと契約。その一報は、ちょうど弊誌Vol.3「The IRON MAN〜日本のバスケットを支えてきた鉄人」の内容が固まり、取材が全て埋まった後であった。遅ればせながら、最後のアイアンマンとして紹介できる機会を得た。
かつて、ジャパンエナジーやゼクセルで活躍し、30歳で一度引退。昨シーズンも大塚商会アルファーズのアソシエイトヘッドコーチをしながら、ユニフォームを着ていた。
茨城の山谷社長と上原GMから、コーチとして練習中にプレイで示して欲しいという要請を受ける。そこから「選手でやってみれば?」と話が飛躍。昨シーズン、2度の肉離れに見舞われ、「もう無理だ」と感じており、一度は首を横に振る。臨時コーチとして練習に参加すると、茨城の生温い状況を肌で感じ取った。
「最初に練習に来たときは、真庭(城聖)とかにメチャメチャぶつかってケンカするくらいやってました。そうすることで、真庭の意識も変わりました。茨城は他のチームで主力だった選手が少ないです。だからなのか我をあまり出さず、後ろに回る、下手に行く選手が多い。そこを前に行かせるように主張させて、お前らが点を獲らないといけないと言いましたし、選手たちも言って欲しかったんだと思います」
コートに立つことでできるコーチングもあると、43歳にして現役復帰を決意。これまで11試合に出場し、3度先発も任される。出場時間は平均19分。「まさかこんなに試合に出るとは思ってなかった」と自身も驚いている。逆に驚かされたのは、ディフェンスで相手の外国籍選手をはじき飛ばしたフィジカルだ。「30歳に一度現役を退いた後から一切ウエイトトレーニングはしてません。でも、それまでに死ぬほど体幹トレーニングをしてきました。筋肉がない部分は体幹でカバーできています」と話す。「昨年の写真を見ると顔がまん丸でしたが、ちょっとシャープになってきたかな」と、見た目に現役復帰の効果が現れている岡村選手。選手兼アシスタントコーチの役割に迫って行こう。
ーー 復帰されて1ヶ月半ほど経ちましたが、調子はいかがですか?
自分の調子はボチボチです。少しずつ上げて行こうと思っていますが、自分が主力となり、チームの顔になるような働きをしようとは思ってません。基本としては、茨城の選手たちのレベルを上げ、チーム力を上げていくのが自分の仕事だと思っています。
ーー 練習中がメインになってくるということですか?
そうですね。練習中はコーチの役割が7〜8割で、たまにコートに立って体で示す部分もありますが、指示をしている方が多いです。
ーー 同じポジションの選手へのコーチングが多いのでしょうか?
自分の強みはヘッドコーチ経験があることと、これまでにポイントガードからセンターまで全てを経験してきたので、いろんなポジションの気持ちが分かります。その経験をうまくつなげて、このチームのために注いでいくのが自分の仕事だと思っています。
ーー ベンチにいるときは大塚商会の時と同じような位置に座っていたので、スーツではないもののコーチ的存在感は変わらないと思って見ていました。
選手としての気持ちはまだそこまで上がってなく、コーチ的な役割が多いと思っています。でも、やっぱりヘッドコーチが自分の力を求める時があるので、コート上に出て安定し、落ち着かせる役割は求められています。
ーー 広島ドラゴンフライズ戦の第2ピリオドにはディフェンスでプレッシャーをかけ、トランジションから先頭を切って走り、アグレッシブな姿を見せていました。
自分が示すことで、チームメイトに戦う姿を見せていきたいという気持ちはあります。
ーー ヘッドコーチを差し置いて、指示をしたくなる場面もあるのでは?
えーっとね……あります。笑
自分は考えることが好きなので、接戦になるといろんなパターンを考えられるのでワクワクしちゃいます。なので、自分が試合に出ていないときは、なるべくヘッドコーチの指示を見ないようにしています。
ーー 今日(12月17日の広島戦)は接戦となった第4ピリオドはコート上にもいたし、最後の逆転を目指すときはベンチにおり、ウズウズしていたのでは?
難しいですが、コート上に出ていれば、ある程度は自分が思ったプレイができる。もちろんヘッドコーチの指示を優先しつつ、それでもうまくいかない時には自分が考えて、勝負して欲しい選手にボールを預けたり、スクリーンをかけに行ったり、プレイで示すことができます。まだまだ岩下ヘッドコーチも若いですし、自分もあの年でヘッドコーチをしていたわけではないので、いろんな経験をしてもらいたいです。
ーー 勉強熱心なヘッドコーチでもあるので、アドバイスを求められることも多いのでは?
すごくマジメで一生懸命勉強しています。毎日のように1〜2時間は試合のビデオを見ながら、あぁでもないこうでもないとお互いの意見を言い合えるコミュニケーションはできています。
ーー 広島戦を見ていて、B1と比較してもB2の選手レベルは遜色ないと感じましたが?
B1との違いは、ちょっとした細かい部分ですよね。ディフェンスのステップの仕方、クローズアウトのあと一歩の手を上げて詰めていくこと、オフェンスももう少しうまくスクリーンをかけたり、もう一歩アタックするとか、逆に一歩手前でストップしたり、パスの選択もそうですが、その辺がB1との違いです。でも、茨城の選手たちも頭を使い、考えてプレイできるようになってきた。今までは感覚でプレイしてしまい、大して能力がないのにどうにか能力でやってしまってる部分が多かったです。それが考えてプレイするようになってくれたので、僕が見た開幕戦に比べたらはるかに今の方がバスケットになっています。
ーー どんな練習方法を取り入れて向上を促していますか?
今はシーズン中なので難しいですが、契約する前も1週間に1度程度は練習を見ていて、その時は1on1でのディフェンスを教えたり、いろんなドリルも行っていました。しかし、完全に茨城に入ると決まった後は、うまく教えているつもりですが、時間が足りない。もっとうまくしたいし、それができると思っているのですが、なかなか時間が取れません。
ーー オールジャパンブレイクがあり、そこで『岡村塾』が開かれることに期待したいです。
12月31日のゲーム後、3週間ほど間が空くので、そこでどうにかして違うチームにして新年一発目の東京エクセレンス戦を迎えたい。今は東地区3位ですし、首位の群馬(クレインサンダーズ)とは5ゲーム差。これまでやってきたことを継続し、精度を高めていくとともに、本当に細かい部分を徹底していかないと逆転はできない。オールジャパンブレイクの期間をしっかり使って、とにかく教えていきたいです。2017年のロボッツはファンの方にも、「おっ、変わったぞ」と思ってもらえるように努力していきたいです。
今週末12月23日・24日、青柳公園市民体育館に島根スサノオマジックを迎えてクリスマスゲームが開催される。その姿と、オールジャパン後の最初のホームゲームである熊本ヴォルターズ戦(1月28日・29日@つくばカピオ)の違いをぜひ比較してもらいたい。
文/写真・泉 誠一