「ただ彼が東芝のディフェンスのエースとして僕にマッチアップをしてきて、ファウル覚悟のハードなディフェンスをしてくる。その意味ではタフな選手だと思っていますし、(第2戦の終盤)僕からスティールをしたのも、僕のミスではあったけれども、彼がいいディフェンダーだからこそ、あの場面でスティールができたのだと思っています」
メディアに対するリップサービスだとしても、川村の中に栗原のディフェンスを認める部分もあるわけだ。そのうえで第3戦に向けて、こう繋ぐ。
「それでも個人的にはやっつけられる力を僕は持っているので、彼のようないいディフェンダーと対戦することを楽しみにしながら、第3戦も戦いたいですね」
力のあるディフェンダーを破ってこそ、川村のスコアラーとしての輝きはさらに増してくる。
他方、栗原はファイナルの相手が和歌山と決まった瞬間から、自分の仕事は川村を抑えることだと、ディフェンスモードのギアを一段階引き上げた。
「でも川村さんを完ぺきに抑えようとするのはまず無理なので、とにかく苦しいシュートを打たせたり、40分間フル出場をする選手なので、少しでも疲れさせて後半に思うようなプレイができないようにさせることを考えています」
しかし2戦を通した結果は上記のとおり。チームは勝ったものの、栗原個人としては反省の色のほうが濃い。それでも終盤、川村と対峙した1対1の場面でスティールを決めたことは、第3戦に向けて大きな自信になったに違いない。
「お互いが正対して、止まった状態での1対1では3ポイントを打たれた印象もないし、ドライブも絶対に止められないなという感覚はなかったので、反省のほうが多いですけど、次につながる手ごたえもありましたね」
バスケットは1対1のスポーツではない。そのことは彼らも十分に理解している。理解しているからこそ、川村は第2戦の終盤、自らの1対1から木下博之の3ポイントシュートを引き出すアシストを決めているし、栗原も自らの仕事を川村を守ることだと言いつつ、「1人だけで守ろうとせずに、チームで話し合って守りたい」と言っている。
それでもゲームのなかにある1つの局面として、日本が誇る稀代のスコアラーと、日本屈指のディフェンダーの1対1は見逃せない。矛が盾に穴を開けるのか。盾が矛の貫通を阻止するのか──。
NBLプレイオフ・ファイナル第3戦は24日(土)15時に、ティップオフ!
NBL
文 三上太