ある中学バスケットの指導者が言っていた。バスケットは“矛盾”のスポーツである、と。その理屈はこうだ。片やオフェンスは「絶対にシュートを決める」と考え、片やディフェンスは「絶対にシュートを決めさせない」と考える。じゃあ、その「絶対にシュートを決める」オフェンスと、「絶対に決めさせない」ディフェンスが対峙したらどうなるのか──
NBLプレイオフのファイナルが佳境を迎えている。イースタンカンファレンスを制した東芝ブレイブサンダース神奈川が、ウェスタンカンファレンスの和歌山トライアンズに対して2連勝を果たし、初代チャンピオンに王手をかけているのだ。そのなかに“矛盾”を思い起こさせるマッチアップがある。
矛── 川村卓也。和歌山のみならず、日本が誇るスコアラー。絶対的な得点感覚を持ち、どんな体勢からでもシュートを沈めてくる。
盾── 栗原貴宏。彼もまた東芝のみならず、日本を代表するディフェンスのスペシャリスト。そのディフェンス力を買われて、昨年のアジア選手権では相手国のエースキラーに抜擢されたほどだ。
そんな2人がマッチアップをするのだから、思わずとも注目をしたくなる。
しかし実際はといえば、チームの勝敗とは真逆に川村がイニシアチブを握っている。栗原が常に1人でマッチアップしているわけではないにせよ、川村の得点は初戦が20点、第2戦が33点。矛の勝利である。
「メディアのことを考えなければ、対栗原については別に何とも思っていませんよ」
川村は日本でも有数のディフェンダーを、いい意味で屁とも思っていない。それだけ自分のオフェンス力に自信があるということだろう。
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