しかし「ディフェンスとリバウンドが信条」であるトヨタ東京にとって、緊迫した場面でオフェンスだけの新人を入れるとは考えにくい。田中のオフェンス力に期待を寄せつつ、一方で田中の、東海大学で鍛えられたフィジカルなディフェンス力も十分に評価しているということだろう。実際に第4ピリオドの残り7分、田中のハードなディフェンスがリンク栃木の田臥勇太に渡るボールをスティールし、そこからチームの得点に結びつけている。彼のディフェンスが1つの大きな流れを作った瞬間である。
「ベンチで見ていて、ハンドオフ(手渡しパス)からのシュートをやられていたので、もし自分が試合に出たら、フィジカルなディフェンスで、押し合いながら守ろうと思っていたんです。あの場面はそれがたまたまスティールにつながったのでよかったです」
たまたま、というあたりが田中の謙虚さだろうか。
「プレイオフはレギュラーシーズンとはまったくの別物だと思っています。ここからが本当の勝負だと、実際に試合に出ても感じるし、ベンチで見ていてもそうした緊張感が伝わってきます」
だからこそ、前半に出たとき、2本連続でシュートを落としたことを悔いている。周りからの賞賛よりも、反省のほうが大きい。田中とはそういう選手なのだ。
「控えとして試合に出る以上、1本目のシュートを決めないと試合に出るチャンスはどんどん減っていく。プレイオフでは1つひとつのプレイが勝敗を分けると思うから、余計にあの1本目がすごく大事だったんじゃないかって思うんです」
反省と課題を明確にしながらも、「自分はまだまだできる!」と口にする田中大貴。彼のような若者が、もっと出てきていい。
【イースタンカンファレンスファイナル】
東芝神奈川(1位)vs トヨタ東京(2位)
第1戦:5月10日(土)15:00@代々木第二体育館
第2戦:5月11日(日)15:00@代々木第二体育館
第3戦:5月13日(火)19:00@代々木第二体育館
【ウェスタンカンファレンスファイナル】
和歌山(1位)vs アイシン三河(2位)
第1戦:5月10日(土)15:00@愛知県体育館
第2戦:5月11日(日)15:00@愛知県体育館
第3戦:5月13日(火)19:00@パークアリーナ小牧
NBL
トヨタ自動車アルバルク東京
文 三上太