54試合目、レギュラーシーズン最終戦でプレーオフへの道を拓いたリンク栃木ブレックス。
53試合目、首位・東芝ブレイブサンダース神奈川に敗れるまで、28連勝していたトヨタ自動車アルバルク東京。連勝を止められたこの1敗により、1ゲーム差でイースタンカンファレンス2位通過。3位リンク栃木とのカンファレンスセミファイナルからのNBLプレーオフ開幕となった。
100点ゲームで初戦を飾ったトヨタ東京であったが、その後は苦戦を強いられる。2戦目は流れをつかめないまま81-95で敗れ、1勝1敗。何が起こるか分からないのがプレーオフ。第3戦の3Qまでは46-46、同点。勝利を呼び込んだのは、アーリーエントリーで入団した田中大貴選手。第2戦で出番が無かったルーキーが、積極果敢にチームを盛り立て、74-59で勝利。2勝1敗としたトヨタ東京が、東芝神奈川の待つカンファレンスファイナルへ進出。
アップセットに手を掛けていたリンク栃木だったが、勝利の女神は微笑んでくれなかった。
今シーズンの課題点が大事な場面で出てしまった悔しい思い
目を赤くし、足早にロッカールームへ向かう網野友雄選手。1人ベンチに残り、うつむいたまま立ち上がることができなかった山田大治選手。ともに日本大学からトヨタ自動車アルバルクへ進み、トップリーグでのキャリアをスタートさせ、日本代表でも活躍した実績がある。そして2011年、大きな期待とともに二人揃ってリンク栃木へと移籍して来た。網野選手はトヨタ〜アイシンの一員としてそれまでプレーオフ常連。逆にトヨタ時代以降、プレーオフの舞台に立つ機会が無かった山田選手。リンク栃木で3シーズン目を迎えた今年、ようやくプレーオフの舞台に返り咲くことができた。網野選手と山田選手は、昨シーズンより5分ほど平均出場時間が短い。しかし、久しぶりとなる真剣勝負の舞台に辿り着き、様々な感情を感じてもいた。
「やっぱりトヨタの方が最後まで集中していたのが勝敗を分けた敗因だった」
第3戦を振り返る山田選手。勝負が分かれた4Qの10分間、コートに立ち続けたが、第2戦のような流れを引き寄せる活躍には至らなかった。
「トヨタに気持ち良くオフェンスをやらせてしまった。自分の中ではディフェンスを修正していたつもりでしたが、うまく行かなかった」と言い、肩を落とす。シーズンを通して課題となった点が最後の4Qに出てしまった。
「最後まで集中し切れなかったのがブレックスの弱い部分。相手に引き離されたらそのままズルズルと行ってしまうのが、今シーズンの課題でもあった。それが大事なこの試合でも出てしまったのが悔しいです」
一番成長を感じることができた今シーズン
涙をシャワーで洗い流した後、再び目の前に現れた網野選手。42試合だった昨シーズンのJBLからNBLは54試合に増えたが「実際にやってみたらあっという間でした」と切り出し、シーズンを振り返り始めた。
「ブレックスに来て3シーズンが経ちましたが、その中で一番チームの成長を感じられたし、充実した1年になったのは間違いないです。開幕からトヨタと千葉にやられて連敗スタートでしたが、後半にはアイシンや東芝、トヨタにも勝つことができた。このプレーオフでも3試合全てにおいて、どっちに転んでもおかしくない試合を最後までできていたので、チームとしての成長を実感しています」
ラストゲームは2Qだけの出場機会であったが、ディフェンスやリバウンド、ルーズボールといった網野選手らしい活躍から得点へとつなげ、自らも2連続得点を挙げて35-28とリードを奪う。第2戦での出場機会は無かった網野選手だったが、第3戦では限られた時間の中でやるべきことをやり、チームを勢いづけた。
「先週の千葉戦で足を少し痛めてしまったので、ヘッドコーチが気を遣ってくれてたのかなと思います。以前も少しケガをした時に、『選手のキャリアを守るのもコーチの仕事だ』と言ってくれていました。勝たなければならない試合と選手を守ることの判断をコーチはしてくれたのだと思っています。でも、選手としてはありがたい反面、出たいという気持ちがあります」
フツフツとした個人的な感情を抑えつつ、チームの勝利へ向けて網野選手はできることを考えながらベンチで戦況を見つめていた。
「今日はチャンスが来るかなという期待もあったので、出た時にはディフェンスでシューターを止めたいという気持ちがありました」