2014年8月2日、地元・大田区総合体育館で選手、スタッフのお披露目(公開記者会見)を行ったアースフレンズ東京Z。小野秀二HCの下、チームのミッションである『日本代表が世界一になること』『日本から世界に通用する選手を輩出すること』の実現に向け、全員が“熱く”練習に取り組んでいる。若手主体のチームを支えるのが「TAKUMA & TAKU」。同学年の2人は、ベテラン選手として、また異色コーチとして若手選手たちにアドバイスを送る。それは、彼らにとっても新たなチャレンジとなる。
トッププレイヤーのプライドを賭けて
── チーム最年長であり、JBLで新人王を受賞し、優勝経験もあります。ベテランとして、求められる役割は認識していると思いますが?
渡邉:それは自然と……やるべきことはわかっています。オファーを受けた段階から、チームを引っ張っていくことが求められています。僕なりのアプローチですが、プレイで見せて、声に出して伝えていきたい。これまであまりやってこなかったところかも知れませんが、ベテランになり、移籍を意識し始めてからですね。アースフレンズ東京Zという、新しいチームではより必要な役割だと思います。
── 移籍については悩んだのではないでしょうか?
渡邉:トップリーグにいてプレイタイムが限られる環境より、自分が先頭に立って引っ張る、そんな意識が強くなりました。このチームはスタートしたばかりで、みんなでチームの歴史を創っていこうという意識が高い。ただ、トップリーグ入りを目指すチーム(アースフレンズ東京Z)は誕生したばかりですが、大人向けのバスケ教室を開いたり、クラブチームを立ち上げたりと、山野勝行代表の考えやこれまでの取り組みに共感できたのも大きかったですね。
── ご自身のバスケへの取り組み、意識が変わったのでしょうか?
渡邉:これまでのキャリアで、ある程度実績は残せたのではないかという思いはあります。今度は、次の世代に自分の経験を伝えたい、(どういうカタチでも)バスケを教えたいという気持ちが湧いてきました。アースフレンズは目標が明確で、かつ具体的に動いていますから、モチベーションを高く維持できる環境です。若手選手が多く、僕が教えることで個々のポテンシャルを上げることができるでしょう。経験を伝えることで、試合に臨む準備や、勝つ喜びを共有できるかも知れません。そう考えると、これからの自分のバスケ人生においても有意義な経験ができると思います。プレイヤーとして勝利に貢献するのは当然ですが、プラスαの貢献ができるかも知れない……それがモチベーションであり、移籍を決めた理由のひとつなんです。
── 伝えていくこと。それが、ベテランの使命であり、バスケ界への恩返しになる?
渡邉:僕はまだまだ動けるので(笑)、一緒にプレイをして教えることが大切だと思います。トップリーグであれば「言わなくてもわかるだろう」で済んでも、今は一つひとつ確認し、皆の意識やレベルを高めていかなければなりません。選手たちが刺激を受け、面白がって楽しく上達していく、というのが良いですね。
── ご自身にとって、とても新鮮な環境ですね。将来は指導者を視野に?
渡邉:まだ漠然とですが、以前よりは明確になってきました。プレイで見せる、言葉で伝える、その両方が必要だと感じています。どういう関わり方であれ、指導すること、伝えることはやり続けたい。技術的なことだけでなく、「どういう思いでプレイを続けてきたのか」という気持ちの面も重要なので、それを伝えたい。どういう言葉で伝えればいいのか……それは、これから学ばなければなりませんね。
── 地元のイベント出演やクリニックなども増えたとお聞きしましたが?
渡邉:人前に立つことが増えました。でも、実はそれも移籍を決めた理由なんです。このチームは下地づくりの期間があったと言いましたが、約5年間、大人対象のバスケスクールをやったり、地元との連携をつくり上げたりしてきたチームです。自分もその活動に参加し、今までの経験を伝えつつも、また新たな(自分自身の)バスケキャリアを構築したいと考えたんです。人と接して、自分の思いを伝えることの面白さ、難しさが勉強できるかな、と。
── とはいえ、まだまだプレイヤー、拓馬を披露しますよね?
渡邉:そうです。これ以上フィジルカル面が向上するとは思いませんが(笑)……段階を踏んで、まだまだステップアップしたいと思っています。これまでは企業チームで多くのことを経験し、キャリアを積んできました。今度は、プロチームで自分の可能性を伸ばしたい、そう思っています。しかも、このチームがNBDLチャレンジ1年目、小野HCも充電を終えて指揮官復帰1年目。だから僕も、このチームではルーキーとして関わりたかったんです。来シーズンだったら意味がないというか、皆と一緒にスタートしたかった。新たなチャレンジには最良のタイミングです。
小野さんとは久々に同じチームなりました。実は、JBL1年目、小野さんもトヨタ自動車で初采配。一緒に優勝を経験し、新人王。不思議な縁ですが、またアースフレンズ東京Zでも1年目に一緒に頑張ることになったので、あのときの再現を目指したいと思います。今回の僕の移籍が、(トップリーグも含め)あとに続く選手たちが選択肢を広げるきっかけになれば嬉しいですね。そして何より、ファンのみなさんと一緒に喜べる結果を残したいと思っています。
#13 渡邉拓馬(わたなべ たくま)
1978年10月7日生まれ、福島県出身。188cm/83kg。拓殖大学 → トヨタ自動車アルバルク(2001~2012年) → 日立サンロッカーズ東京(2012~2014年)