32歳からの成長に対するワクワク感と上手くなれそうなウキウキ感
アイシン三河のときは我慢することもチームに対する貢献だと自分らしさを消すことも厭わなかった朝山。しかし、移籍したことでバスケの楽しさを再認識し始めている。
「やっぱり自分の特長を生かすプレイを出しながらチームを勝たせることを求めて行かないと、自分というモノが消えてしまうような気がしていました。だから今は、そのバランスを模索しているような状況です。我慢する時間帯と自分らしく行くところ、今はそのバランスを探しています。この年になって、それが新たなる成長につながると思うとワクワクさせられますし、それがすごく楽しい要因のひとつかもしれません。もう少しバスケットが上手くなれそうな感じがしており、ウキウキ感を持てていること自体がすごくうれしいんです」
アスリートにとっての楽しみは、己の成長とチームの勝利。まだまだ模索するところは多いが、目の前に立ち塞がる高い壁を一つひとつクリアしていくことにこそやり甲斐を感じるのは当然のことである。優勝したときもあれば、レラカムイ北海道(現レバンガ北海道)のように勝てない時代も経験して来た。当時はどのような気持ちでプレイしていたのだろうか?
「あのときは僕自身がまだ若かったことと、“勝ち”を知らない選手でした。本当の勝ち方や勝つことの難しさも知らないのに、あの中に入って、このメンバーがいたらファイナルまで行けるというイメージがあった。でも、実際にそうではないという結果になって行ったことで、どんどんイメージが崩れて行き、立て直しが効かなかった自分がいました」
勝つことを学んだアイシン三河の強さとは?
その後、アイシン三河へ移籍し、勝つことに対して多くを学ぶこととなる。では、アイシン三河の強さとは何なのか?「これは言ってもいいんですかね?」と躊躇する朝山をけしかけて、真相に迫ってもらった。
「それは勝ちに対する意識です。みんなが勝ち方を知ってるし、勝った先に何があるのかをチーム全員がしっかり分かって戦っています。あくまで僕がいた昨シーズンまでのアイシンの強さの秘密であって、今シーズンは分かりませんよ」
すごく当たり前の話に聞こえるが、最後まで勝ち続けられる選手はほんの一握り。経験者の話はさらに続く。
「そこがこのチームにはまだまだ足りないところです。どうしても、個人の力に気持ちも目線も行きがちであり、それがチームとして噛み合わない一つの理由でもあります。誰かのためにプレイすること。これは単にキレイごとを言ってるわけではないです。結局は、勝てばそれが絶対に自分のためになるんです。その差が分かるかどうか。本当に勝たなければダメなんです。勝ったからこそ分かることが多いんです」
勝たなければダメ。勝ったからこそ分かる。だからこそ負けた時の悔しさも尋常ではない。
「何度も優勝させてもらいましたが、同じように準優勝も多く経験しています。でも、あれほど最悪なことってないんですよ。あの瞬間はバスケを辞めたくなるほどです。準優勝だって本当はすごいはずなのに、すっごく悔しくて、こんな気持ちになるんだったらよっぽどプレイオフになんて出たくなかったって思うほどです。相手が喜びを爆発させている瞬間を生で、間近で見せられてるわけじゃないですか。準優勝した時は、悔しいということは経験になってるかもしれません。でも、その程度の思いしか出て来ないわけですから、結局は勝たなければ意味が無いんです。そこにしか答えが無い。そのことをみんなが分かってくれたら、すごいチームになると思いますよ」