栃木ブレックスから広島ドラゴンフライズへ移籍した山田 大治選手。2007年アジア選手権など、ともに日本代表として戦ってきた佐古 賢一ヘッドコーチの下、これまでの全試合で先発を任されている。ここ2シーズンは平均9分だったが、広島にやってきて平均25分に出場時間が増加。そのせいか、体つきや顔がシュッとしたように見える。
「プレイタイムを求めて移籍先を選びました。試合に出てるからには結果を出さなければいけないのですが、まだチームはうまくいっていないため、現在西地区3位。でも、残りは40試合弱あるのでまだまだ分からないですし、これからです。1位の熊本(ヴォルターズ)とも2ゲーム差だし、なんのこっちゃないです」
走るメニューで先頭を切って走る35歳
山田選手は番長気質と末っ子っぽさを併せ持つ印象がある。頼りがいがありそうで子供っぽさもあるとでも言えば良いのか。良い意味で…。
トヨタ自動車(現・アルバルク東京)からパナソニックを経て、レラカムイ北海道(現・レバンガ北海道)へ移籍しプロになる。さらに栃木ブレックスへと移籍したが、これまでは常にリーダーシップある先輩たちがいた。広島では朝山 正悟選手とともに最年長の35歳となるが、そこは山田選手らしい方法でチームを引っ張っている。
「ベテランという感じのオーラは別に出してはいないですが、若手が練習中からすごい声を出して盛り上げてくれているので、それに負けないように僕らも声を出しています。走るメニューでも、僕らが先頭を切って走るようにして、一生懸命やってますよ。朝山と一緒にね」
今シーズン初となる長距離移動をして行われたアウェイでの茨城ロボッツとの第1戦(12月17日)は、83-82で辛くも接戦を制した。佐古ヘッドコーチは、「移動により、選手の動きが最初は良くなかった」と話しており、少なからず影響はあったようだ。接戦にもつれ込みながらも勝ちきったこの試合に対し、「良い勉強になった」とヘッドコーチはチームにとってプラスに捉えている。
山田選手は、「もうちょっと点差を開いて勝ってもおかしくはない展開でしたが、やっぱり勝負どころでのミスやリバウンドを獲られてからスコアされたりしたところがあった。相手の外国籍選手にやられすぎてしまった部分もある」と反省点が浮き彫りになる。ゾーンディフェンスでのローテーションで、マッチアップが外国籍選手になった時に簡単に失点を許してしまった。天を仰いだり、自らの頭を叩いたり、山田選手自身も納得がいかないことを態度で示していた。オフェンスでも同じように、「日本人選手にマッチアップされた時にボールが入るとダブルチームに来るので、そこでパスをしてしまい、本来であればそれでも決められれば良いんですけどね。まぁまぁ、バスケットはやっぱり難しいですよね」。翌日はしっかり修正し、93-81で快勝した。
佐古ヘッドコーチの印象について、「オンとオフの差がしっかりされていて、オフの時は本当に良い先輩であり、面倒を見てくれます。一方、スイッチをオンにしてコートに入れば、顔色が変わってバスケットのことに集中して指揮してくれるので、メリハリがはっきりしています。ガード目線で指示してくれるのもやりやすいですし、勉強になります」と返答。35歳になった今も日々勉強であり、バスケットの難しさを逆に楽しんでいるようだ。
B2だってもっと取り上げて欲しい
Bリーグとなったが、「B1は盛り上がっていてすごく良いと思いますが、B2とB3も一生懸命、B1に上がるためにがんばっているわけですから、B2ももうちょっと取り上げてくれても良いんじゃないかなと思いますけど…」とB1との格差を実感している。広島の場合、優勝した広島カープが最優先されるため、「ドラゴンフライズがあることは分かってもらえてますけど、いつどこで試合をしているかまでは浸透していない」。それでも徐々にファンは増えて来ており、プロ野球やJリーグが終わった今こそ、広島のスポーツは『ドラゴンフライズ』が盛り上げる番だ。年内最後のホームゲームは年の瀬の12月30日、31日に広島サンプラザホールで開催される。
クラブの努力も必要だが、BリーグとしてもB2をもっと取り上げていくべきではないかと、筆者自身も感じていた。集客面や経営状況などのハードルがあるにせよ、B1とB2には入替戦が用意されており、今シーズンのクライマックスを盛り上げる存在となる。昇格すれば、来シーズンの主役に躍り出るかもしれない。今からB2上位にいるクラブを注目させ、集客につながるための手助けも必要ではないか。昨シーズンのNBDL時代にはあったオールスターもB2にはない。オールジャパンへの出場機会も与えられなかった。
「オールジャパンに出て、B1と対戦して名前を売る方法があると思ってたんですけどね」と山田選手もその機会がないことを嘆いている。
しかし、それも下部リーグの試練であり、クラブや選手にとってはモチベーションにつなげていかねばならない。
「“何がなんでもB1に上がってやる”という思いはもちろんありますよ。もうB1に上がって名前を売っていくしかないです。でも、もう少しB2も取り上げて欲しいですね」
試合を重ねる毎にチームを強くし、クラブ運営を向上させていかなければ、いくら優勝してもB1へ続く道は途絶えてしまう険しい道のりである。選手たちにできる最善策は勝つこと。朝山選手とともに年長者が元気に広島を引っ張り、B1昇格に向けて引き上げていく。
文/写真・泉 誠一