2008年8月、新潟全中(全国中学校バスケットボール大会)男子決勝。相手チームのエースがシュートを沈めると、すかさず新潟・本丸中学校のエースガードが入れ返す。中学生の試合とは思えないハイレベルさに、老舗専門誌の編集者が思わず「この決勝戦はお金が取れる試合ですよ」と口にした。ボクもそれに同意したのを覚えている。
あれから6年、本丸中のエースガードだった富樫勇樹のプレイが見られると聞いて、有明コロシアムに向かった。彼のプレイを見るのは、2年前の「NBA WITHOUT BORDERS ASIA 2012」以来だが、そのときはチラリと見た程度で、しっかりと見るのは6年前の全中以来ということになる。
bjリーグ2013-2014シーズンのファイナルは、富樫のいる秋田ノーザンハピネッツと、琉球ゴールデンキングスの対戦となった。オープニングショットは琉球のルーキー・岸本隆一の3ポイントシュート。しかしその直後、富樫が3ポイントシュートを入れ返した。その瞬間、あの決勝戦がフラッシュバックしてきた。そして「すぐに決め返すあたり、勇樹はあのときと変わらないな…」、ボクはそう思った。
しかし考えてみれば、変わっていないわけがない。6年という歳月を経て、彼ももう20歳。お酒だって飲める(彼が飲むかどうかは知らない)年齢だ。プレイヤーとしても、中学を卒業後、アメリカの高校に3年間通って、実力をつけてきている(と聞いている)。しかも舞台はbjリーグのファイナル。相手は人気、実力ともにリーグトップクラスの琉球。そんなbjリーグを代表するチーム、選手に対して堂々と渡り合えるのだから、やはり富樫の実力は本物だし、それだけ進化しているのだろう。「いやいや、あれくらいのこと、中学生のときからやってたよ」と思ってしまうのは、オジサン特有の感傷なのかもしれない。実際には1対1の駆け引きやドリブルワーク、シュートのバリエーションやそれを選択する判断力、体の使い方だって、当時とは雲泥の差があるはずだ。