明成高校から仙台大学を経て、仙台89ERSへ入団したルーキー、佐藤文哉。生まれも育ちも仙台市。そして、地元のプロバスケットボールチームでプロとしてのキャリアを歩み始めた。
地方の大学が関東のチームを倒す方が“おもしろい”という選択
明成高校時代は1年生からコートに立ち、3年時のウィンターカップでは準々決勝で福岡第一高校に敗れるも20得点をマーク。佐藤久夫監督の下で育ち、全国の舞台でも活躍したならば、関東大学一部リーグのチームからも声をかけられたのではないだろうか?
「高校2年になった時に仙台大学に行くと決めており、先生にもそのことは伝えていました。最初からそう言っていたせいか、特に先生からも関東の大学からの話などは聞かされることは無かったです」
さらに、仙台から離れない理由に迫ってみた。
「仙台大学に行けば、また久夫先生にお世話になれる、何かを学べるということが理由の一つ。関東の大学へ行ってバスケをすることも選択肢の一つだと思ったこともありましたが、僕の中では地方の大学が関東のチームを倒すという方がおもしろいかなと思って、そっちの道を選択しました」
“おもしろい”という動機で関東の強豪チームを倒す目標を持って過ごした大学4年間。なかなか初戦を突破できずにいたインカレ。4年生時、1回戦の相手は当時関東2部リーグとはいえ、入替戦で日本大学を破って1部リーグへの昇格を決めたばかりの白鴎大学。勢いあるチームを相手に58-56で接戦を制し、ラストチャンスで目標達成。佐藤自身は23得点を挙げ、勝利に貢献。続く明治大学戦もチームハイとなる17点を挙げたが45-64で敗れ、大学バスケに終止符が打たれた。
過去10年間のインカレを振り返ってみても、2回戦を勝ち上がってベスト8に残る関東以外のチームは、たった10チームであり1割程度。関東の大学チームの選手が皆、関東圏出身かと言えばそうではない。大学日本一を決めるインカレだからこそ、関東以外のチームも上位に名を連ねることが、ウィンターカップなどの高校バスケやNCAAトーナメントのような盛り上がりとなるはずだ。地元の大学で関東の強豪チームを倒すおもしろさがあることを高校生たちには知ってもらいたい。
そして、昨年末のウィンターカップを制した明成高校の後輩たちは、佐藤の心意気をぜひ見習っていただき、89ERSの一員として今後も仙台を盛り上げて欲しい。
「テレビで決勝戦を観て、優勝した後輩たちをすごく誇りに思いましたし、僕も負けられないという気持ちが芽生えました。今から、89ERSに後輩たちが来るのを待っています」