昨シーズンまでは平日に仕事をしながら大塚商会アルファーズに所属し、B3リーグを戦っていた兒玉貴通選手。バスケコートの中では一際小さい166cmながら、スピードでそのギャップを埋めて得点を挙げていくのが彼の武器である。今シーズンはB2のファイティングイーグルス名古屋へ移籍し、プロ選手として新たな道を歩みはじめた。
新天地では、限られたプレータイムの中でも少しずつ結果を残していったことが実を結び、3月10日の茨城ロボッツ戦以降は先発を任されている。前節、ふたたび茨城との対戦となった2戦目はシーズンハイとなる22点を挙げた。試合は敗れ、兒玉選手自身は5ファウルで途中退場となったが、それでも勝利をたぐり寄せようとコートを走り回り、闘争心をむき出しにして戦っていた。
B3からやってきた小兵はB2でも戦えることを証明し、中地区トップ争い真っ只中にいるFE名古屋の大きな戦力として頭角を現す。覚悟を決めてプロとなった以上は、チームとともにさらなる高いステージへと行くことがモチベーションである。しかし、クラブとしては昇格するために必要なB1ライセンスを取得できなかった。
── 中地区首位攻防戦となった茨城戦で2連敗したこの結果をどう受け止めていますか?
悔しい…。絶対に獲らなければいけない2戦だった分、ダメージは大きいです。相手がやりたいことを終始やらせてしまいました。僕たちのミスで、2連敗してしまったことは反省も多い試合でした。
── 個人としてはB3からB2へステップアップしてきたわけですが、レベルの差はありましたか?
体を絞って準備をしてきたので、その差はあまり感じてはいません。ただ、外国籍選手とのミスマッチを突かれることがあるので、そこはうまく対応しなければならないです。身長が小さい分、足元を狙っていかないとなかなか1on1では勝てません。逆に相手にとっては、僕みたいな小さい選手が足元に入っていくことは嫌がると思うので、小さくても有利な点を生かせるようにしたいです。
── シーズン終盤からスタメン起用され、チームから信頼を勝ち取った今の状況は?
前半戦から要所要所で使ってもらえていたことは本当にありがたいことです。移籍した当時は、試合に出ることをモチベーションとしてずっとがんばってきました。今、こうしてプレータイムをもらえるようになったことは素直にうれしいです。しかし、十分なプレータイムが与えられた中での仕事に関しては、まだまだ足りない部分が多いとすごく感じています。そこはもっと突き詰めていかなければならないです。
── 覚悟を持って移籍してプロ選手となり、さらに上を目指してチームもトップ争いをしていた中、B1ライセンスを取得できなかった一報を聞いたときの心境は?
ショックというか、行き場のない感情が正直言ってありました。大塚商会のときもB3優勝を目指してはいましたが、チーム自体が昇格を目指してはいなかったので、勝っても負けても残留することは変わりませんでした。そこから一歩踏み出して移籍し、B1昇格が大きなモチベーションとして新たに加わったことでの期待もありました。ですが結果として、大塚商会の時と同じような状況になってしまい、ライセンスのことを聞いたときは複雑な気持ちになりました。でも、試合になれば負けるのはイヤなので、これからの試合も絶対に勝ちに行く気持ちは変わりません。
── B1昇格のチャンスは来シーズン以降に持ち越されましたが、『B2制覇』というチーム目標が残っています。
茨城戦は自分たちのせいで負けてしまい、中地区首位を明け渡したことで1位通過も他力本願になってしまいました。それでも残り7試合を全勝すれば運も味方してくれると思っています。1試合1試合をがんばって、B2優勝の目標は変わらずに成し遂げたいです。
大東文化大学出身の25歳は、まだまだ素材でしかない。一足飛びに階段を上れることもあれば、踏み外すことだってある。その歩みさえ止めなければ、必ずチャンスはやってくるものだ。もう身長は伸びないかもしれないが、バスケットは経験がものを言うスポーツである。選手としては、これからが伸び盛りだ。
文・写真 泉 誠一