中地区1位のファイティングイーグルス名古屋vs2ゲーム差で追いかける2位茨城ロボッツによる中地区首位攻防戦は、プレーオフさながらの激しい試合であった。初戦は56-53、ディフェンシブな戦いをホームの茨城が制したことで1ゲーム差に迫る。2戦目はつくばカピオ開催での最多入場者数(1604名超満員)を記録。初戦とは打って変わってオフェンシブな展開の中、大声援に後押しされた茨城が106-86で快勝。ともに32勝21敗と勝率は並んでいるが、直接対決では5勝1敗と圧倒する茨城が中地区首位に立った。
フリースロー40本、インサイドを制した茨城が2連勝
この対戦が行われる前から3勝1敗と、茨城が勝ち越していた。さらに今節で2連敗を喫したあと、「完敗です」とFE名古屋の渡邊竜二ヘッドコーチは潔く負けを認めている。茨城との差はどこにあったのか?
「相性とは思いたくはないが、茨城の特長であるインサイドを抑える部分が苦労した。そこを我々が徹底して守り切れなかったことがこの結果につながったと思う」
ケガのためにロドニー・カーニー選手が不在であり、外国籍選手が一人足りなかった。しかし2戦目の前半まで、オフェンスではそのインサイドでイニシアチブを取っていたのはFE名古屋の方だった。3Pシュートを確率良く決められ、49-43と茨城にリードを許してはいたが、FE名古屋のペイント内得点は22点(茨城4点)、リバウンドも19本(茨城10本)と上回っていた。
渡邊ヘッドコーチが「自分たちの決めごとを徹底しきれなかったことが敗因」として挙げたように、後半はリバウンドも37本(FE名古屋34本)と逆転され、ディフェンスではインサイドを抑えきれずにフリースローを40本も与えてしまった。茨城の岩下桂太ヘッドコーチは、「一試合でフリースローを40本も打つこと自体が素晴らしい数字である。我々の強みが出たのかなと感じている」と最後はインサイドで上回った茨城が連勝を飾った。
極力タイムアウトを取らず、選手自身で解決するスタイルで11連勝
岡村憲司スーパーバイジングコーチ/監督はベンチで指揮を獲るかたわら、自らコートに立ってプレーで選手たちに伝えながらチームを率いている。「本当に流れが悪いときに出ようか、出まいかとお尻を浮かせながら構えている。自分に決定権があっていつでも出られることが逆に足かせになって出づらい部分がある」と言い、今シーズンは18試合に出場し平均7.5分。FE名古屋との2戦目も7分26秒出場したが、ユニフォームを着ることなくスーツでベンチに座っていることもしばしばある。コンディション的にきつくなるシーズン終盤のこの時期は、一人でも戦力が多いに越したことはない。しかし、「自分がベンチにいて指示を出した方がうまく回ることも多い」と監督業に軸足を置いていた。
3月11日にFE名古屋に敗れたあと、青森ワッツ戦の勝利から今節のFE名古屋戦まで11連勝を挙げて勢いに乗る。その要因について、岡村監督はタイムアウトのタイミングを挙げた。
「この11連勝中、第4クォーターの終盤までずっと負けているシーンがほぼない。それもあってタイムアウトを取らない試合が多く、今日も後半は3つとも残したまま終えている。勝っているからこそ取る回数が少なくて済んでいることもあるが、そもそも自分の考えとしてはタイムアウトで流れを変えることは難しいとも思っている。試合残り1秒や0.5秒といったギリギリまでタイムアウトを残しておきたい。それをこのチームでもずっと続けてきたことで、選手たちもそのタイミングが分かってきた。それによって、選手たち自身で解決しようとしてくれており、その点での成長が見られる。試合の後半にこれほどタイムアウトを取らないチームもないと思う。逆に言えば、相手にとっては余計にしんどい。タイムアウトを取らない習慣が、今ではロボッツのスタイルとしてうまくリズムをつかめてきたことがこの連勝につながっている」
これまでも選手たちの自主性や積極性を説いてきた岡村監督。タイムアウトを取らないそのスタイルが功を奏し、成長へとつなげていたのは偶然か、必然か。それでも11連勝中であり、簡単に負けないチームへと変化していることは大きな成果である。
明暗を分けたB1ライセンス
すでにB2プレーオフ進出を決めた東地区の秋田ノーザンハピネッツも、西地区のライジングゼファー福岡も来シーズンのB1ライセンスを手に入れており、あとはB1昇格に向かって勝つだけである。まだまだ混戦状態が続く中地区において、B1ライセンスが交付されたのは茨城のみだった。
「ライセンスを得たことは非常にうれしいです。スポンサーやファンの皆さん、会社の方々に対してすごく感謝しています。我々がこの恩を返せるのもコート上しかなく、それが相乗効果を生んで良い流れになっていると思います」と平尾充庸選手は話しており、チームにとっても追い風になっていた。
逆にFE名古屋は継続審議の結果、来シーズンもB2ライセンスしか得られず、勝ち進んでも昇格できない。だが、「B2制覇という目標がまだある。そこに向かって我々はプロとしての仕事に徹しなければならず、チーム内ではしっかり話し合って確認できている。それがこの試合に影響したことはない」と渡邊ヘッドコーチは釘を刺す。
FE名古屋はバスケットでは負けない強さを証明するためにも、プライドを懸けて臨むだけだ。2ゲーム差で追う3位の群馬クレインサンダーズもB1ライセンスを手にできなかったが次戦はFE名古屋、翌週には茨城といずれもアウェーに乗り込んでの直接対決が続き、中地区首位へ向けまだまだ射程圏内にいる。唯一、B1ライセンスを持つ首位の茨城だがスタートラインに立っただけであり、ここから先の試合こそが重要である。
「1試合1試合を全力で気を抜かずに戦い、まだまだ僕たちは成長できると思っています。これからも連勝を伸ばせるように、そして中地区優勝できるように頑張っていきたいです」眞庭城聖選手
「このまま勝って行ってもまだまだプレーオフでは勝てないと思っています。今後も『自分たちのバスケットとは何なのか』というところからしっかり突き詰めて、より強いロボッツっていうのを作っていきたいです」平尾充庸選手
残り7試合。混戦の中地区を抜け出すのはどのクラブか?クライマックスへ向け、ますます目が離せない!
【2018-19シーズン B1ライセンスが交付されたB2クラブ】
仙台89ERS、秋田ノーザンハピネッツ、山形ワイヴァンズ、茨城ロボッツ、広島ドラゴンフライズ、熊本ヴォルターズ、ライジングゼファー福岡
文・写真 泉 誠一