「歳取ったなというか、昔のようにはいかないなというのはめちゃくちゃ感じてるわけではないですけど、それは人間として当たり前のこと。その中で今まで経験してきたものをどう使うかということと、1日目が終わったときに自分の体の状態で『明日はこうなるだろうな』というのが、長年やってるんでだいたいわかります。今はこれだけ長く出られてるので状態は良いわけで、できる限り全試合出場したいという想いもある。バスケットの技術だけじゃなく、そういうところもやっぱり選手としての技術なんじゃないかと思うので、なるべくコートに立ち続けたいなと思ってます」

冒頭に書いた通り、天皇杯に出場できなかったSR渋谷は次の試合まで約3週間待たなければならないが、田中には8回目の出場となるオールスターの仕事がある。ファン投票が始まった頃、試合後の囲み取材の場で「ここにいらっしゃるメディアの皆さんの力は相当なものだと思うので、『やっぱり地元の選手がいたほうがいいんじゃない?』っていうニュアンスで書いていただければ(笑)」とPRしていたのは、開催地が自身の出身地である長崎だからだ。いつものように落ち着いた口調であっても、「長崎が好きなので」という言葉には実感がこもる。
「長崎なんて何回帰ってもいいですしね。帰れば帰るだけ元気になると思ってますし、地元の方にも会えるし、オールスターは今シーズン楽しみにしてたことでもある。現役でやってる間はもう地元で行われることはないでしょうし、どちらかというと肩の力を抜いて、存分に楽しみたいと思います」
このFE名古屋戦の2週間前、SR渋谷はアウェーで長崎ヴェルカと対戦している。田中も、オールスター前に一度 “帰郷” することができたというわけだ。長崎のホーム、ハピネスアリーナは昨シーズン全試合チケット完売という盛況ぶり。現在リーグ全体の首位を快走しているということもあり、田中は地元のバスケット熱の高まりを強く感じられたという。
「今、長崎は調子良いですし、以前に比べてどんどん熱が上がってるなと感じます。いつもは敵として対戦してますけど、そういうのを抜きに考えると、長崎が盛り上がってるのは個人的には純粋に喜びを感じますし、長崎が強いのも誇らしいという気持ちは正直ある。良いタイミングのオールスターなんじゃないかと思いますね」
もちろん、地元だからといって奇抜なことをするようなキャラクターではなく、オールスター常連の田中はこれまでと同じように試合に臨む。むしろ、どちらかというとオールスターであってもある程度しっかりと勝敗を競う一面を持っていたほうが良いという考えのようだ。
「リーグが誕生してからわりかし多く出させてもらってる身だと思うんですけど、年々エンターテイメント性が強くなってるという気もする中、僕としてはもっとガチンコの試合を見せることができればいいのかなと思います。パフォーマンスする方がいればそれは任せて、何事もそうですけど自分に向いたことをやるべきだし、向かないものはやらないほうがいいし(笑)」

いずれにせよ、長崎が生んだ男子バスケット界ナンバー1クラスのスター。おそらくは、多くのローカルメディアに囲まれることになるだろう。本人は「いや、それはわからないですけどね。ヴェルカの選手もいますし」と謙遜するが、オールスターが地元で開催されることの意味は誰よりも理解している。その深い郷土愛で、初の3日間開催となるオールスターに何かしらのインパクトをもたらしてもらいたいものだ。
「見に来てくれる子どもたちにとって、スター選手が一斉に集まって試合するのを見る機会ってないと思いますし、オールスターって試合だけじゃなくてその他のイベントで触れ合う機会がたくさんある。僕としては、そこでより多くの子どもたちに触れ合う機会が持てれば嬉しいですし、長崎からもっとプロの選手が出てきてくれるような、オールスターはその一つのきっかけになるくらいの力を持ってると思うので、そういうところを意識してやれればいいかなと思います」
文 吉川哲彦
写真 B.LEAGUE











