昨シーズンまで在籍した仙台89ERSでは、藤田HCと共闘した。互いが互いを必要とした結果の移籍であろうことは想像に難くないが、当然ながら青木には藤田HCのバスケットスタイルを浸透させる役割を期待され、本人もそれは承知の上だ。
「ここに来たということはそういうことですし、それを少なからずまとめられる立場ではあると思います。それをどれだけ出せてるかというとまだまだ足りないですけど、僕自身もう一度セオさん(藤田HC)と一緒に戦うために来た中で、一番と言っていいほど体現しなきゃいけないという自覚はありますね」

前述したように、日本人選手が得点に絡むことは藤田HCの戦略の一つ。プロキャリアをスタートさせた川崎ブレイブサンダースや、その後の広島ドラゴンフライズではディフェンスとゲームコントロールに軸足を置くプレースタイルだった青木も、藤田HCの下でプレーした仙台時代は得点面での貢献度が高まった。青木自身、「川崎や広島にいたときは、どっちかというと他の4人が上手くプレーに絡めるか、あとはディフェンスを重視してましたけど、仙台では僕がアタックしなきゃいけなかった。それを求められて、新しい自分を発見させてもらったというのが、自分の新しいキャリアにつながってると思ってます」と自身の可能性が広がったことを強く実感し、もちろん今もその意識は変わっていない。
藤田HCは試合中の一挙手一投足も情熱を感じさせるものだが、選手たちにも高い熱量でプレーすることを求める。それが藤田HCのコーチングスタイルであり、プロとして不可欠なもの。青木もまた、大阪エヴェッサというクラブがもう一皮むけるためにも、その戦う姿勢が必要だと考えている。
「これはセオさんも言ってますけど、大阪という大都市の中にプロのバスケットのチームはエヴェッサしかない。“大阪にエヴェッサあり” という魅力をもっと知ってほしいですし、地域の生活の活力になるようにプレーしなきゃいけないのが僕らの使命。そういう面ではまだまだ足りてないし、認知度も集客力も課題はあると思うので、まずはそこが一番。できるだけ多くの人に伝わるようにやっていけたらと思います。そこに僕らがプロとしてやる意義がありますし、勝ち負けはもちろんあるんですけど、ハードワークで相手に負けちゃいけない。その姿勢だけはチームとして絶対にブレちゃいけないし、皆さんにも伝わると信じてます」

大阪はbjリーグ時代に3連覇の経験があるものの、Bリーグではチャンピオンシップ出場がまだ1度しかない。そして、クラブ同様に青木もCSに飢えているところだ。この日の勝利の時点で10勝13敗の西地区7位と、CS圏内には少し距離がある状況だが、苦境を乗り越えたことは好転のきっかけになる。
「僕自身も長らくCSから遠ざかっていて、語弊がないように言うと、川崎時代もベンチにいた時間が長かったので、出たようで出てない。CSのコートでしっかり貢献するというのが僕のキャリアの中で一つの目標で、そのために大阪に来ました。今回怪我人もいた中、人がいるいないにかかわらず自分たちのやるべきことを100%、120%出すんだという気持ちでやり続ければ今日のような結果になる。それはみんなの自信にもなったと思いますし、ここからオールスターブレイクまでどれだけ勝ち星を積めるかというところで、良いヒントになったんじゃないかと思います」
「今日はすごく良かったですけど、もっともっとできる選手。ヤスが今のチームの誰かより特化しているわけではなく、オフェンスでもディフェンスでももっとチームを引っ張っていってほしい。全員が一つひとつのやるべきことを集中してやれる中で、ヤスはもっと頑張れる選手だと思います」と藤田HCの要求は高く、期待値の高さを感じられる。青木のさらなる進化が、大阪のCS進出のカギを握っている。
文 吉川哲彦
写真 B.LEAGUE











