昨シーズンは終盤の怒濤の追い上げで初のプレーオフ進出を果たした山口パッツファイブだが、今シーズンも序盤戦は思うように白星が伸びず、第8節を終えたところで5勝11敗という苦しい星勘定。第9節の相手は圧倒的なオフェンス力を誇る立川ダイスであり、GAME1は「出だしにターンオーバーから走られて、警戒していた3ポイントも打たせてはいけない選手に打たせてしまった。前半に向こうのバスケットをさせて、我々のバスケットができなくなった」と枝折康孝ヘッドコーチが振り返った通り、113失点、41点差という完敗だった。外国籍選手1人が欠場を強いられたとはいえ、厳しい結果であることには変わりない。
相手の戦略に対応できなかった点も敗因の一つ。ポイントガードの喜志永修斗は、相手に対策されたことを特に強く感じていた。

「僕にフルコートでプレッシャーを与え続けて自由にさせないというのはどのチームもやってきてる中で、ピックからのレイトスイッチとか、僕を中に行かせない、アシストもさせないというのが明確でした。出だしからそれに気づいてたのに、僕もチームもアジャストできなかったのが反省点。あれを打開できる力をつけていかないといけないと思います」
喜志永は、移籍後初めてスターター起用された第6節GAME2で13得点11アシストを挙げたのを皮切りに、この立川戦までの直近5試合中4試合で2ケタ得点。オフェンスの起点として調子を上げてきていたことで、厳しいマークを浴びた。富山グラウジーズでB1のコートにも立った経験を持つ喜志永が警戒されるのは当然のことでもあるが、喜志永自身もB1の経験があるからこそ、今のチームに何が必要かということを理解している。
「僕たちの課題としてチームアシストが少ないというのがあって、僕がスタートになる前は14アシストでターンオーバーが12個とか、個人で完結してしまうオフェンスが多くてシュート確率が上がらなかった。僕は上のリーグを経験して、どれだけキャッチ&シュートをシンプルに打てるか、決めなければいけないシュートをどこで作り出すかを学んできたので、僕がスタートになったからにはチームアシストを増やしたい、孤立したバスケットをしたくないと思って、できる限りボールを回そうということを周りにも伝えて、みんなが遂行してくれてアシストは増えてきたと思います。上のリーグではチームでバスケットをしないと勝てないし、それを一番わかってるのは僕と榎田(拓真)さんなので、僕としてはチームを変えようという気持ちで、ちょっとずつですけど浸透してきて、客観的な数値も良くなってるんじゃないかと思います」
成功率の高いシュートシチュエーションをいかに作るかという点に関しては、枝折HCも「3ポイントが30%以下、フリースローが50%以下というのが敗因の一つにありますけど、良いシューターはいますので、確率が上がるバスケットをどれだけできるか」と指摘。そして、「勝った試合は選手たちが我々のバスケットを遂行してくれて、ディフェンスを頑張って70点台に抑えながらオフェンスで80点取れている。八王子に勝利したように、ファイトできればどの相手とも勝負できる」と好調の東京八王子ビートレインズに土をつけた試合を引き合いに出し、選手たちの奮起も促そうとしている。

そんな枝折HCのバスケットスタイルを最も理解しているのが、山口県に生まれ育ち、豊浦高時代に枝折HCの指導を受けている喜志永だ。豊浦高は全国大会常連だが、県立高校。「学ぶ姿勢とチャレンジ精神を強く持って、新たなことに取り組むことを欲している人間」と自認している枝折HCは、長年勤務していた豊浦高からの転任を通達されたことで、プロの世界に飛び込むことを決断した。創設当初にも関わっていたクラブからのオファーで、先んじてアドバイザーに就任し、鮫島和人前HC(現・鹿児島レブナイズGM)と折に触れてバスケット談義に花を咲かせていたことも、枝折HCの背中を押した。











